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子ども手当のITシステム費など約120億円を補正予算に計上

2009年12月03日 10時19分15秒 | 子ども手当・子育て
来年6月の子ども手当の支給開始に向けて、今年度の第2次補正予算にそのための費用:約120億円を計上することが明らかになった。税収が予想以上に落ち込み、財政運営が厳しさを増すなか、子ども手当についても所得制限を設けるべきとの意見が出ているが、厚生労働省は、大臣の方針を受けて「所得制限なし」で制度の詳細を設計中らしい。

子ども手当のシステム費計上=市町村の支給事務支援-2次補正に120億円・厚労省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091201-00000215-jij-pol

所得制限をなくすと、支給対象者数は、児童手当の受給者数(約927万人)を大きく上回ることになる(約1735万人増:厚生労働省見込数)。対象者数が3倍になるため、市町村は、事務効率化のためのITシステムを新たに導入しなければならなくなったり、既存の児童手当システムを改修しなければならなくなったりする。今回の約120億円の根拠や内訳はわからないが、そのための費用の一部に充てられることになると思われる。


所得制限を設けるか否かで、市町村の事務負担と必要となるITシステムは大きく変わる。簡単に整理すると、次のようになる(推測で書いている部分があるので、注意)。

◇所得制限あり
現在の児童手当には、所得制限がある。
支給対象者は、前年度の所得証明書などを添えて市町村に申請する。市町村は、子どもを実質的に養育しているのは誰か、所得等の要件を充たしているかなどを審査しなければならない。また、支給者は、決定後も、年に1度は「現況届」などの書類を提出しなければならないし、市町村は、支給を継続してよいかを審査しなければならない。双方にとって、負担は重い。
生活保護を受給するためや保険料などの負担を軽減するために、住民票上で世帯を分離し、1つの家に2つの家族が同居しているような状況になっていることは珍しくない。児童手当は、実際に合わせて支給しなければならないため、住民基本台帳などから取り込んだデータを使って機械的に審査することはできない。
子ども手当への切り替わり時に支給の要件が緩められると、対象者数の増加に比例して市町村の事務負担が重くなる。支給に要する費用が大きくなりすぎると、管大臣などが反対している。

必要とするITシステムは、児童手当システムとそれほど変わらない。住民基本台帳システムから世帯データを取り込み、税務情報システムから税データなどを取り込むインタフェースを持ち、それらにないデータ(実質的な養育者・生計維持者は誰か、世帯の構成はどうなっているかなど)を紐付けて管理できるようになっている。また、支給の申請~決定に至る様々なデータを管理し、手当の支給事務などに必要となる機能を実装することになる。児童手当システムを改修すれば対応できるだろう。

◇所得制限なし
厚生労働省が検討中の法案には、所得制限がない(らしい)。
凍結された子育て応援特別手当や定額給付金は、所得制限がなかった。
子育て応援特別手当と同様、所得制限を設けない、世帯主に支給するとすれば、非常にシンプルになる。市町村は、住民基本台帳から子どもがいる世帯を抽出して支給対象者とする。案内や申請書などを郵送して申請手続きを促し、受け付けた書類に不備がなければ、そのまま支給にまわせばよい(金融機関で口座振替)。世帯主に支給すべきでない「例外的なケース」への対応は必要になるが、子育て応援特別手当の準備期間中に検討を済ませている。件数は多くなるが、1件あたり事務負担は軽くなる。

必要とするITシステムも、非常にシンプルになる。住民基本台帳システムから世帯データを取り込み、支給対象者データとして管理する。支給の申請~決定に至る審査が不要になるため、管理するデータも手当の支給事務などに必要となる機能も少なくて済む。
現在の児童手当システムとは大きく変わるため、全面的に更改(新規導入)しなければならない。機能としては、子育て応援特別手当の支給事務システムに近くなるだろう(当時のドキュメント類は、まだ残っているだろうか?)。