制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

子ども手当の財源確保に向けて調整続く

2009年12月07日 09時49分24秒 | 子ども手当・子育て
政府税制調査会は、子ども手当の財源として「扶養控除」を廃止することで合意した。
扶養控除は、15歳以下の子供と23~69歳の扶養家族がいる人の課税対象額から一定額を差し引く仕組みで、所得税(38万円)と住民税(33万円)がある。所得税分は2011年1月から、住民税分は2012年1月から廃止の方向で調整中とされている。子ども手当の対象とならない23~69歳の扶養家族がいる世帯(障害者控除の対象者などを含む)は増税になるため、何らかの救済策が必要とされているほか、16~22歳を対象とする「特定扶養控除(63万円)」についても一部縮減を求める声が出ている。

扶養控除の廃止、成年部分は議論を継続 政府税調
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2009120404520.html

扶養控除、来年度廃止へ 政府税調、障害者向けに新控除
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/business/K2009120304870.html

これらは、「税と社会保障の一体的な改革」や「控除から手当」といった、民主党の考え方に基づくもの。子ども手当を拡充するならば、扶養控除を廃止・縮減する、高校授業料の実質無償化(間接的な手当の支給)を実現するならば、特定扶養控除を縮減する、と同じ構図である。「控除から手当」は、「控除」には、経済的に苦しい世帯ほど支援を必要としているにも関わらず、所得が一定額を下回ると恩恵を得られくなる問題がある。その問題を解決するため、直接支給できる「手当」に切り替えていこうというもの。控除と手当のバランスをとるため、特定扶養控除を縮減しつつ、一定以上の所得がある場合には、高校授業料の負担を求めるべき(手当の縮減)との声も出てきている(財務省)。逆に、控除がなくなるにも関わらず、手当に相当するものがない人たちには何らかの支援策を設けないとバランスがとれなくなる。例えば、23~69歳の扶養家族には、働きたくても働けない人たちが含まれる。そのため、控除の対象と目的を明確にして「成年障害者等扶養控除(仮称)」を創設する方向で検討が進められている。

高校無償化の家庭、扶養控除縮小を…文科相
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091204-567-OYT1T01120.html

所得制限、改めて否定=高校無償化で-川端文科相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091204X699.html


財源の確保ができなければ、子ども手当を実現することはできない。法案も提出できない。
長妻大臣は「子ども手当の全額国庫負担(2兆3345億円)」を訴えてきたが、扶養控除の廃止(所得税分で約8000億円、住民税分で約6000億円)だけでは足りない。そのため、地方自治体や企業などにも負担を求める案(現行の児童手当の地方負担分は5680億円、事業主負担分は1790億円。なお、国の負担は2690億円)も現実的な選択肢の一つとして浮かんできた。これまでは、その分を子育てを支援するために使うべきといった主張・議論がなされてきただけに、長妻大臣と原口大臣(総務)の話し合いは平行線。簡単に調整はなかなかつきそうにない(ここに挙げた額を全部足し合わせると2兆4千億円余りになることを考えれば、どうすべきかは明確だが)。

子ども手当財源 厚労相と総務相がさや当て、物別れ
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2009120403920.html

税と社会保障の一体的な改革が進むと、社会保障のあり方も大きく変わる。数年後には「社会保障論」の教科書も大きく変わっているだろう。研究者はこの変化に追いつけるだろうか。