制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

医療保険制度改革 来年の通常国会に向けて検討本格化

2009年12月05日 10時11分09秒 | 高齢者医療・介護
後期高齢者医療制度の「廃止」に向けた検討が始まっているが、それまでの間、現行制度を「延命」させるために(4年後を見越しつつ)様々な手直しが必要になる。関連する動きが連日のように報じられ、なかなか追いつけない。

まず、市町村国保に関する動きとして、都道府県が「広域化支援方針(仮称)」を定めて、全市町村による共同運営を推進できるように法改正する方針が明らかになった。後期高齢者医療制度を「廃止」して75歳で前期と後期を区分する問題を解消すると、被保険者の多くが市町村国保になだれ込み、財政負担をいかに軽減するかが大きな課題になるだろう。そのため、かねてから広域化の方針がセットで打ち出されているが、新たな制度の姿がみえないうちは、なかなか進まないだろうと考えていた。来年の通常国会に法案を提出するならば、広域化が先行して進みそうである。

県が国保広域化を支援 厚労省が法改正方針
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2009120401000155.html

もう一つの動きが、保険料の年間上限額の引き上げである。来年度から4万円引き上げて63万円とすることで、中間所得者層の保険料負担の増加を抑えられると報じられている。国民健康保険料(税)は、被保険者の数に応じて決まる「被保険者均等割」、世帯あたり一律の「世帯平等割」、前年度の所得に応じて決まる「所得割」の合計額となる(保有する資産に応じて決まる「資産割」がある市町村もあるし、「被保険者均等割」と「所得割」の2つの市町村もある。また、40歳以上から65歳未満の被保険者は、介護保険料が上乗せされる)。保険料には上限が設けられており、合計額がその額を超えた場合は、その上限額が保険料額となる。
保険料は、保険者が給付するために必要となる額から逆算して設定される。そのため、上限額を引き上げて高所得者層から保険料を多く集めるようにすれば、その分だけ保険料率を引き下げられる。

国保保険料上限額、来年度4万円引き上げ
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091204-567-OYT1T01104.html

被用者保険についても動きがあった。協会けんぽの財政悪化を受けて、後期高齢者医療制度への支援金負担を軽減し、その分を健保組合と共済組合が負担する方針で、4日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で話し合われたとのこと。支援金の付け替えは、2500億円で、方法としては、支援金の算出方法の見直し。加入者1人あたりの定額方式から、所得に応じた比例方式に変えることで、平均年収(標準報酬総額)の低い協会けんぽ(385万円)から、健保組合(554万円)、共済組合(681万円)へと支援金の負担が移るという。しかしながら、支援金負担の重みに耐え切れずに約7割の健保組合が赤字に転落しており、協会けんぽの「救済策」を受けいれ、肩代わりするとは思えない。来年の通常国会に健康保険法改正案を提出する方針とされているが、調整は相当に難航すると思われる。

健保組合など2500億円負担増=協会けんぽ救済へ-厚労省方針
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091204-00000202-jij-pol

民主党は、地域保険として一元的に運用することを目指している。「体力のない健保組合は解散して、協会けんぽに移ってほしい」ぐらいの覚悟で改革を推進してくるかもしれない。


都道府県が主導して市町村国保の広域化=共同運営化を進め、健保組合を解散して協会けんぽに加入するほうが得になる環境をつくり、規模の小さい健保組合から再編を進める。この先は明らかになっていないが、都道府県を単位とする、市町村国保と協会けんぽ(健保組合を統合、共済組合は国が主導して再編)の2つの医療保険者に整理し、二者間で財政調整するなど、「地域保険」に向けての共同運用化を進めるといったシナリオが既に描かれているのではないだろうか。