制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

国保組合の財政状況が明らかに 「剰余金」が約874億円

2009年12月10日 10時00分36秒 | 高齢者医療・介護
「被用者保険」に対する「国民健康保険=国保」というと「市町村国保」を思い浮かべるが、それらとは別に「国民健康保険組合=国保組合」がある。国保組合の存在はそれほど知られていないが、都道府県を単位とする、医師、歯科医師、薬剤師、建築土木や芸能などの職業別の医療保険で、市町村国保とは別である。設立には都道府県知事の認可が必要であり、全国で165の組合がある。

国民健康保険法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S33/S33HO192.html

市町村国保は、第二章 市町村(第5条~第12条)、国保組合は、第三章 国民健康保険組合(第13条~第35条)で別に定められている。国民健康保険の基本は市町村国保であり、第6条(適用除外)の10で国保組合の被保険者は市町村国保の被保険者としないと定められている。


このブログでも書いてきたが、市町村国保が財政的に逼迫しているのに対して、国保組合の財政状況は健全で、朝日新聞の報道によると、多額の「剰余金」を保有しているとのこと。
国保組合の自己負担の少なさ(入院時の自己負担が実質的に0円になる国保組合もある)や医療や健康に関連づけた様々なサービスの充実ぶりへの批判があったが、全国紙が調査して詳しく報じたり、厚生労働省に見解を求めたりすることは珍しい。医療保険者を地域を単位に統合していくにあたって、財政的にかなりの余裕がある国保組合の存在を知らせようという意図、手厚すぎるともいえる国庫補助(約3000億円)を仕分けていこうという意図が感じられる。

報道によると、多くの国保組合で法で定められた額を上回って毎年の剰余金(保険料収入などから給付した額などを除いた額=黒字分)が積み立てられており、法定分を上回る積立金は、727億円(151組合)。それとは別に任意の積立金もあり、総額147億円(31組合)にのぼるとのこと。市町村国保と比べて充実した医療サービスを提供していながら、それだけの剰余金が出ているのだから、国庫補助の水準が高すぎるのではないかという問題提起なのだろう。

昭和30年代に「国民皆保険」が達成されてからは国保組合は設立されていない。国民健康保険=国保といえば市町村国保だが、上記のような既得権益があるために、今日まで解散することなく存続してきたと思われる。後期高齢者医療制度を「廃止」するにあたり、受け皿となる市町村国保の財政を支援するために、来年度から都道府県を単位とする「広域化」の動きが本格化する。その動きに、同じく都道府県を単位とする国保組合が巻き込まれることになれば、「保険料が大幅にあがるにも関わらずサービスの水準は低下する(医師の給与水準ならば、保険料は年間上限額まで上がり、自己負担は3割になる)し、これまで積み上げてきた剰余金は没収される」ことになるのだから、大変である。これまでは市町村国保の影に隠れて人知れず存続してきたが、マスコミで何度も取り上げられるようになれば、巻き込まれないようにと動かざるを得なくなる。失うものが大きいだけに、どのように動いてくるか注視していきたい。

国保組合の「剰余金」800億円以上 国庫補助手厚く
http://www.asahi.com/politics/update/1209/TKY200912080459.html?ref=goo

建設業の11国保組合、入院医療費が実質無料
http://www.asahi.com/health/news/TKY200911290208.html