ドバイ駐在員ノート

一人の中年会社員が、アラブ首長国連邦ドバイで駐在事務所を立ち上げて行く過程で体験し、考えたことの記録。(写真はイメージ)

ドバイ発・アラブの挑戦

2008年12月05日 23時17分13秒 | 読む
なかなか良く書けているのにもったいない。出版された時期が悪かった、と思う。

この本を買ったのは、10月に一時帰国した時、「夢見るドバイ」と同じく丸の内オアゾの丸善だった。ずっとツンドクしていたが、11月末にこんなのが出たが読んだかと出張者が持ってきて、読まざるを得なくなった。

タイトルにドバイとあるので、もっぱらドバイについて書かれたものかと思うと、さにはあらず。ドバイについて書かれているのはほんの一部で、湾岸諸国を中心にイラクやイランにも及びかなり広い。おそらくはタイトルにドバイというキーワードを入れれば売れるとみた出版社の要望だろう。

著者の宮田律氏は中東の専門家のようだが、本当に関心のある国はドバイではなさそうだ。少なくとも最近ドバイを訪れてはいないだろう。バージュ・ドバイは今年中に完成予定としたり、ドバイ・メトロを地下鉄であると紹介したり、ドバイに来ていたら書かない事実誤認が散見される。

より深刻なのは、中東の未来予想図で、金融危機が始まるまでの原油高が続く前提で論じていることだ。この本が書かれた時点の原油価格は1バレル120ドルとされ、50ドル前後を推移している現在とは隔世の感がある。ドバイについて言えば、パーム・デイラの建設計画が見直され、エマールやナキールが整理解雇を発表するなど、一転して減速をみせている建設業の姿は影も形もない。それだけ大きな変化がこの数ケ月の間に起こっているということだ。

上記のような欠点はあるものの、金融危機以前の中東全般を理解するためには、データをコンパクトにまとめていて参考になる。改訂版が出てもいいと思う。

NTT出版、税別1600円。

最新の画像もっと見る