ドバイ駐在員ノート

一人の中年会社員が、アラブ首長国連邦ドバイで駐在事務所を立ち上げて行く過程で体験し、考えたことの記録。(写真はイメージ)

サダム・フセインの最期

2006年12月30日 23時16分11秒 | 時事
フセイン元大統領、遺体映像を公開 絞首刑直前の様子も(gooニュース) - goo ニュース
サダム・フセインの絞首刑が執行された。日本のメディアでは直前までの映像しかみられないが、BBCやCNNでは処刑の瞬間が繰り返し放映されているらしい。

日本で彼に同情する人は少ないに違いない。しかし、彼が何の罪で裁かれ処刑されたかについてきちんと理解している人もまた多くはないのではないか。湾岸戦争に勝利しサダムを捕獲したのは米国を中心とする多国籍軍だ。彼らがイラクに対して戦線布告したのは、大量破壊兵器を保持しているという理由だった。ところが、あるはずの大量破壊兵器はどこからも出てこないから、シーア派住民やクルド人虐殺などの人道上の罪を理由に裁くしかない。

私自身、レーガン大統領時代の米国が、イランで起こったイスラム革命が他のアラブ諸国に伝播するのを防ぐ目的で、イラン・イラク戦争の一時期サダム・フセインが率いるイラクを支援していたことを、つい最近まで知らなかった。イランで支配的なシーア派の住民が虐殺された話も、戦争が始まってから聞くようになった話だ。米国は当時見て見ぬふりをしていたのではないか。

ブッシュ父子との戦争に負けたフセインが処刑されるのは「政治的には」正しいことかもしれない。しかし、ブッシュ大統領の声明のように彼が法の下に公正に裁かれたと言えるかどうかは大いに疑問だ。フセインの弁護人が何人も殺害されたり、裁判官が途中で辞任したりした中での裁判は本当に公正でありえただろうか。

刑が執行されたこの時期が、アラブ社会で一番のお祭りである犠牲祭の直前であることも心配だ。ムスリムの間でスンニ派とシーア派という宗派対立をあおることにならなければよいと思う。

イラク、そしてアラブ社会全体が「アッ・サラーム・アラィクム(あなたがたの上に平安あれ)」という言葉どおりであってほしいと願う。


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