ドバイ駐在員ノート

一人の中年会社員が、アラブ首長国連邦ドバイで駐在事務所を立ち上げて行く過程で体験し、考えたことの記録。(写真はイメージ)

ヨルダンの旅~アイン・ムーサ

2008年07月12日 22時00分56秒 | 旅する
ヨルダンには、二つのアイン・ムーサがある。アインとはアラビア語で泉、ムーサは旧約聖書に登場するモーゼを意味し、アイン・ムーサとはすなわちモーゼの泉ということ。ヘブライ人を率いてエジプトを脱出したモーゼが、杖で石を打ったところ水が湧き出たという故事に由来する。

最初のアイン・ムーサは、モーゼが亡くなった場所とされるネボ山の中腹にある。アンマン駐在員の好意で半日社用車と一緒に借りたヨルダン人の運転手は、アンマン市内以外は不案内で、アイン・ムーサの場所を知らなかった。アンマンからネボ山に向かう途中にあったアイン・ムーサという標識に従い、谷あいの曲がりくねった道を降りて行く。だが、行けども行けどもどこがそれなのかわからない。諦めて元来た道を引き返す途中すれちがったトラックの運転手に教えてもらい、ようやく壁いっぱいに落書きされた廃屋(上の写真)がそうであることがわかった。この廃屋の中を進み坂を下りると、湧き水が流れる場所があった(下の写真)。先に来ていた子供連れのアラブ人の男二人に聞き、ここがアイン・ムーサであることを確認する。すると、運転手は湧き水の前にひざまづきお祈りを始めた。

あたりには、ペットボトルや空き缶が散乱している。廃屋の落書といい(日本語でなくて安心したが)、モーゼが奇跡を行った場所なら、もう少し敬意を払って保存してほしいものだ。






もうひとつのアイン・ムーサは、ペトラの玄関口ワディ・ムーサにある。ペトラから空港へ向かう途中、タクシーで寄った。大きさの異なる三つのドームを持った建物の中に、ブロックを積んだ床の中から割れた岩が突き出ていて、その下方の水溜りをゆっくりと水が流れている。建物の外では土産物が売られていて、こちらもなんだかうさんくさい。







どちらが本当のモーゼの泉だったのか、それともそのいずれでもないのか。何しろイエス・キリストが生まれるずっと前、旧約聖書の時代のこと。立証しようとすること自体空しいに違いない。また、紅海を真っ二つに割ってその中を歩いて渡ったなどという、モーゼが行ったとされる他の奇跡同様、科学的にあり得ない作り話として切り捨てる向きもあろう。間違いないのは、ここヨルダンが旧約聖書の舞台だったということくらいかもしれない。

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