今回は、「青磁染付 葡萄文 中皿」の紹介です。

表面

側面
かなりの歪みが見られます。
(*実際の青磁の色としては、この色が一番近いかと思います。)

裏面

高台内の銘の拡大
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代後期
サ イズ : 口径;19.4cm 高さ;4.5×3.8cm 底径;9.3cm
なお、この「青磁染付 葡萄文 中皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介していますので、次に、その時の紹介文を再度掲載し、この「青磁染付 葡萄文 中皿」の紹介とさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー151 古伊万里様式青磁染付葡萄文中皿 (平成22年9月1日登載)

地中海沿岸は葡萄の栽培に適していたため、約2,000年前には盛んに生産されたらしい。
ギリシア・ローマの時代には、ワインを飲むことが習慣となり、また、葡萄は彫刻やモザイクに頻繁に登場してくる。
葡萄は沢山の実と房を付けることから、豊穣と多産の象徴となったようである。
なお、葡萄を表現した文様は、東に進むに従い次第に唐草文様を形成していく。葡萄唐草文様の出現である。
古伊万里にも、この葡萄唐草文様が描かれたものは多い。豊穣と多産を表す葡萄文様が人々から愛されたからであろう。
この中皿に描かれた葡萄文様は、比較的に写実的に描かれているが、連続して環状に三つ描かれており、やはり、葡萄唐草文の変形といえようか?
この中皿は、歪みもひどく、一見すると初期伊万里に間違うほどである。
「歪みの酷い物=古い物」と勘違いをしがちであるが、「歪みの酷い物=雑な作りの物=下手な物=それほど古くはない物」との見方が成り立つことを教えてくれる中皿ではある。
江戸時代後期 口径:19.4cm 高台径:9.3cm
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*古伊万里バカ日誌83 古伊万里との対話(葡萄文の皿)(平成22年9月1日登載)(平成22年8月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
ブドウ (古伊万里様式青磁染付葡萄文中皿)

側面(かなりの歪みが見られます) 高台内の銘の拡大
・・・・・プロローグ・・・・・
殺人的な炎暑が延々と続いているが、それでも季節は着実に移りつつある。スーパー等の店頭には、秋を象徴する各種の果物が並ぶようになり、葡萄も種類豊富に登場してきた。
そうしたなか、主人はそれ等果物が描かれた古伊万里と対話をしたくなったようである。そうはいっても、主人のところは貧庫ゆえ、果物が描かれた古伊万里など、無事探し当てられるかどうか、甚だ疑問である。
ところが、さすがは貧庫に習熟した主人である。「古伊万里に葡萄を描いたものは多いはず・・・・・」との予測を立て、見事、押入れの中から「葡萄」を描いた皿を引っ張り出してきた。
主人: 最近、スーパー等に随分と「葡萄」が並べられるようになってきた。実りの秋になってきたね。
この辺は昔から「梨」と「栗」の栽培が盛んだが、近年では「葡萄」の栽培にも力が入れられてきているようで、店頭に多くが並ぶようになってきた。
ブドウ: この辺ではどんな種類の「葡萄」が栽培されているんですか。
主人: 「巨峰」が多いかな・・・・・。農家の方も付加価値の高いものを多く栽培するようになるからなんだろうね。従来見られたような種類の「葡萄」はほとんど見かけないね。それに、最近では、「巨峰」よりも更に高級な「葡萄」の栽培に力が入ってきているように感じるね。人は益々と贅沢になり、農家はそれに応じて、更に付加価値の高いものを作るようになるからだろうね。
ブドウ: ところで、先月登場した「鎬(しのぎ)」(*このブログでは、2021年2月21日付けの「骨董市と古美術品交換会」の記事の中に登場)さんのように、私を購入するにあたっての何か「いわれ」みたいなものはあるんですか?
主人: 残念ながら、特にないな~(笑)。
まっ、特に「いわれ」というほどではないが、お前のことも、先月登場した「鎬(しのぎ)」を買った店と同じ店で買ったということぐらいかな・・・・・。
その店にはそれまであまり足を運んではいなかったんだが、先月登場した「鎬(しのぎ)」を買った際、「この店には、たまに、良い古伊万里が出てくるのかもしれないな~!」と思ったので、その後は足繁く通うようになったんだ。その甲斐あってか、それから1か月程してお前が新しく展示されているのを発見し、さっそく購入に至った次第さ。でもね~、その後、その店には気の利いた古伊万里が出現せず、だんだんと足も遠のいてしまった。
田舎の骨董屋だってね、なんでも取扱う店ばっかりではないんだよね。その店の主人の好みというか得意分野というか、そういうものがあって、おのずとその店の特徴みたいなのが出てくるんだ。結局、その店の主人は、古伊万里が好みではないというか、得意ではないというか、古伊万里方面にはあまり力を入れなかったんだね。
それで、現在では全く行ってないね。その店の前を、たまに、車で通ることがあるんだけど・・・・・。今でもその店は営業はしているんだけれどね。
ブドウ: そうそう、ご主人は私のどんなところが気に入って買われたんですか?
主人: そうね。まずは歪んでいるところかな(笑)。それに、 生掛けらしく、一般の人から見たら、みすぼらしく汚らしいところかな(爆)。
ブドウ: そんなところを気に入って買われたんですか・・・・・。何か悲しいです(涙)。
主人: まっ、そう言うな。骨董好きなんてそんなもんさ。一般の人とはちょっと違ったところがあるんだ。変わっているといえば変わっているかな。
でもね~、「歪んでいたり、汚らしいところが芸術さ! それを一般の人は発見できないのさ! そういうものを発見し、愛せる特殊な能力を我々は持っているのさ!」というような奇妙な特権意識みたいなものを持っているね、骨董好きの人間は。
そうはいっても、「歪んでいたり、汚らしいところ」に惚れ込んでしまったために、どうも、「お前の年代判定を誤ったかな?」と思っているんだ(>_<)
ブドウ: それはどういうことですか?
主人: うん。どうしても、歪みがひどかったり、カキット焼き上がっていないトロントしてしっとりとした地肌を見ると古格を感じてしまうんだよね。肉眼では。それで、まぁ、江戸中期は十分にあるだろうと思って買ったんだ。お値段もそれなりのものだったしね。最近、古伊万里はずいぶんと安くなっているようだけど、当時はけっこう高かったんだ。
でもね~、裏の「銘」を見ているとね~、どうなのかな~? と思うようになってきたんだよ。江戸後期になってしまうのかな~とね(>_<)
ブドウ: それには何か根拠があるんですか。
主人: そうなんだ。裏の「銘」は、なんとなく「乾」の「銘」に見えてくるんだよ。はっきりと「乾」ではないんだが、「乾」の流れのように見えてくるんだよね。勿論、「乾」は中国清朝の乾隆帝の時代からとったものだ。この「乾」の銘はよほど人々に愛されたとみえ、古伊万里には多く登場してくるんだ。理論的に考えれば、乾隆帝の時代は1736年~1796年だから、1736年から古伊万里の「銘」に登場することが可能だけれど、実際には1790年代頃からしか登場してこないようだね。その頃からず~っと幕末まで盛んに使われている。
ブドウ: そうしますと、「乾」銘は1790年代~1860年代の間に登場するんですね。
主人: そうなんだ。その間でいくら早くみても、どうしても江戸後期ということになるわけだ。
ブドウ: そうなんですか・・・・・。
主人: 正直、ちょっとがっかりしたな。なかなか時代判定というものは難しいものだよ(>_<)
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