Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 鶴文 銚子

2021年06月17日 12時34分15秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 鶴文 銚子」の紹介です。

 

正面(仮定)

 

 

正面の反対面

 

 

蓋を外したところ

 

 

底面と蓋の裏面

 

 

生 産 地 : 肥前・三川内(平戸)

製作年代: 江戸時代末期~明治

サ イ ズ : 高さ;15.ocm  横径;15.4cm

 

 

 波間には鶴が元気よく飛翔しています。

 日の出の太陽をバックに、波間に鶴が飛翔している図は、よく正月飾り用の掛け軸などに描かれる題材ですね。

 この銚子も、そのような掛け軸のように、日の出の太陽がバックに描かれていることを心象風景として思い浮かべて眺めますと、正月のような目出度い日に使用するにはぴったりの器でかもしれません(^_^)

 ところで、この「染付 鶴文 銚子」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところです。参考までに、その時の紹介文を次に再度掲載いたしますので、興味のあるかたはお読みいただければ幸いです。

 なお、次の文中には、これが三川内(平戸)で作られているのにもかかわらず、「古伊万里」という文言が登場してきますが、私は、肥前地域一帯で作られた磁器を総称して「古伊万里」としていますので、そのような文言が登場してくるわけです。その点をお含みいただいてお読みください。

 また、「柿右衛門様式」とか「古九谷様式」という文言も登場してきます。私は、最近、様式区分をしなくなりましたので、最近では、「様式」という文言は使わなくなりました。次の文章は、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中の文章をそのまま再度掲載していますことから「柿右衛門様式」とか「古九谷様式」という文言が登場してきてしまうものです。「様式」の文言は無視してお読みいただければ幸いです。

 

 

   ================================

            <古伊万里への誘い>

 

*古伊万里バカ日誌75 古伊万里との対話(鶴文の銚子) (平成22年1月1日登載)(平成21年12月筆) 

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  ツ ル (古伊万里様式染付波鶴文銚子)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、本日が元旦であることから、正月らしいものと対話をしたくなったようで、押入れ内を捜していたが、なんとか正月らしいものを見つけ出したらしく、さっそく引っ張り出してきて対話をはじめた。

 


 

主人: 新年おめでとう。今日は元旦なので、少しは正月らしいものをと思ってお前に出てもらった。

ツル: おめでとうございます。また、わざわざこのような晴れがましい日に出していただきありがとうございます。

主人: う~ん。感謝されるほどのことではないんだよね。
 本当のことを言うと、コレクションの残りも少なくなってきて、もっと立派な正月らしい「古伊万里」が見い出せなかったからなんだよ。お前は、ちょっと時代も若く、「古伊万里」に属するかどうかのスレスレだから、登場させることにちゅうちょしたんだけれども、背に腹は代えられず、登場してもらうことにしたんだ。まっ、一応、江戸時代にかすっていれば「古伊万里」と言えるかな~と思ってね(汗)。

ツル: 江戸時代後期とか幕末に作られたものは「古伊万里」とは言わないんですか。

主人: そうね。私がコレクションをし始めた頃は言わなかったな。江戸中期の頃までの伊万里を「古伊万里」と言っていたね。それに、現在は柿右衛門様式と言われているものは、当時は「柿右衛門」ということで、「古伊万里」とは別なものとされていたし、今は古九谷様式と言われているものも、当然、当時は古い九谷焼とされていたので、勿論「古伊万里」とは別のものとされていたわけだから、結局、当時、「古伊万里」と言われていたものはかなり限定されていて、型物とかそれに準ずるような優品だけを「古伊万里」と言っていたかな。
 そうなると、「古伊万里」が好きでも、なかなか本物の「古伊万里」を買えなくなるじゃないの、市場にほとんどないんだから。それで、ついつい、「古伊万里」好きとしては、本物の「古伊万里」には属さなくとも江戸後期や幕末に作られた伊万里に目が行き、それらを収集するようになってきたわけさ。それで、だんだんと、江戸時代に作られたものならばすべて「古伊万里」と言われるようになったんだ。
 ただね、当時は、江戸後期や幕末に作られたものは十把一絡げで「幕末物」と言われていて、骨董の仲間入りをしていなかったから、そんなものを集めている者は、骨董収集家からは軽蔑され、バカにされていたね。

ツル: そういう時代もあったんですか。

主人: そうだ。「古伊万里」にだって、その人権を確立するまでには、長い抑圧と苦難の道のりがあったんだよ(笑)。

ツル: そうでしたか。先輩方にとっては、歴史的に見ると、つらい時期があったんですね。

主人: 最近では「古伊万里」の評価も高まり、学問的にも「古伊万里学」というような分野も提唱されつつあるね。
 ところで、お前には鶴が描かれているよね。日本人にとっては鶴は大変に馴染み深い鳥で、「鶴の恩返し」などという昔話にもよく登場してくる。また、「鶴は千年、亀は万年」などと言われて、亀とともに長寿の象徴とされ、お目出度い象徴とされている。もっとも、鶴は他の動物よりは寿命が長いようだけど、実際には、動物園での飼育の例では50~80年程度なそうだね。野生の場合は30年程度らしいけど、、、。
 そういうことで、お前には沢山の鶴が描かれているのでお目出度いし、形もちょっと変わった銚子で珍しくもあるので、正月の屠蘇用にしようかなと思って買ったわけだ。
 それに、もう亡くなってしまったが、私の母の名前が「ツル」だった。その母の兄も、やはりもう既に亡くなっているが、その名前が「亀男」だった。私の祖父母は、長男の名前を「亀男」と、長女」の名前を「ツル」と付けたわけだね。我が子の長寿を願うせつない親心を示した漫画みたいな話だが、実話だよ。その母の「ツル」とお前がオーバラップし、何か私の心を打つものがあったので、お前はちょっと若く、本物の「古伊万里」には属しないかもしれないとは思いつつ買うことにしたんだ。

ツル: そうでしたか。それはそれはありがとうございました。
 私の名前の「ツル」は、ご主人のお母様の名前からとったものでしたか。それは光栄なことです。私も、鶴にあやかり、いつまでも長生きしたく思います。

 

  ==================================