京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

幻住庵記 口語訳   2

2024-04-10 13:10:11 | 俳句
幻住庵記 口語訳 
 2 眺望
 四月初めという時期だけに春の名残りも遠くなく、つつじが咲き残り山藤が松にかかって、ほととぎすがしばしば立ち寄るほど、宿を貸すかしどり(かけす)の訪れまでもあるのを、キツツキがつつくのもかまわないとそぞろに興じて、魂は(杜甫の詩に詠われたように)呉と楚の国が洞庭湖を分けているように、琵琶湖の景観が開け、身は(黄山谷の詩に詠われたように)洞庭湖に瀟水と湘水が注いでいるように、琵琶湖に注いでいる瀬田川を見る所に立っている。山は西南にそばだち、人家はよい距離に隔たり、南方から青葉の香りを吹き送る風が吹きおろし、北からの風は湖をひたして涼しい。比叡山、比良山の高い峰より辛崎の松は霞をたちこめて、膳所城があり、瀬田の唐橋があり、釣りをしている舟があり、笠取山に通う木こりの声、ふもとの小田に早苗とる歌、蛍が飛び交う夕闇の空に、くいなの戸を叩くような鳴き声、美しい景色は、足らないものがあるということもない。
 中にも三上山は富士山のおもかげに似通っていて、江戸の古い住み処も思い出され、田上山に古人のゆかりを数える。ささほが岳、千丈が峰、袴腰という山がある。黒津の里は、名前の通りとても黒く木々が茂って、「網代守る」と詠んだ「万葉集」の姿そのままであるなあ。なお、すみずみまで見残さずに眺めようとして、後ろの峰にはい登り、松の横枝を利用して棚を作り、藁を丸く編んだ敷物を敷いて「猿の腰かけ」と名付ける。私は(黄山谷の詩に詠われた)あの海棠に巣を作り、主簿峰に庵を結んだ隠者、王翁や徐佺の仲間ではない。ただ居眠り癖のある山の人となって、高くそびえる山に足を投げ出し、人のいない静かな山に、シラミをひねって暇潰しをして座っているだけだよ。


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