京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
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教科書によく出るシリーズ 大江山 十訓抄

2021-04-08 07:48:16 | 俳句
教科書によく出るシリーズ 大江山 十訓抄
【本文】1
① 和泉式部、保昌が妻にて丹後に下りけるほどに、②京に歌合ありけるに、
③ 小式部内侍、歌よみにとられてよみけるを、④定頼の中納言、たはぶれに小
式部内侍に、⑤「丹後へつかはしける人は参りたりや。⑥いかに心もとなく思すらむ」と言ひて、局の前を過ぎられけるを、⑦御簾よりなからばかり出でて、わづかに直衣の袖をひかへて、
⑧大江山いくのの道の遠ければまだふみもみず天橋立
とよみかけけり。⑨思はずにあさましくて、「こはいかに。⑩かかるやうやはある」とばかり言ひて、返歌にも及ばず、袖をひきはなちて逃げられにけり。⑪小式部、これより歌よみの世おぼえ出で来にけり。
(口語訳)1
① 和泉式部が、保昌の妻として丹後に行った時に、②京で歌合があったが、
③(和泉式部の娘の)小式部内侍が、歌を詠む選手に採用されて(和歌を)詠んだのを、④定頼の中納言が、冗談で小式部内侍に、⑤「丹後(のお母さんのところに)へ(代作の和歌をもらいに)おやりになった人は参上しましたか。⑥どんなに不安にお思いになられるのだろう。」と言って、小式部内侍の部屋の前を通り過ぎられたのを、⑦小式部内侍は御簾より体半分ぐらい出て、少し定頼の直衣の袖をつかんで、
⑧(母がいる丹後にいく途中にある)大江山に行く生野までの道は遠いのでまだ(母がいる所の近くの)天橋立の地を踏んでみていないし、母の手紙を見てもいない
と詠みかけた。
⑨思いがけないことで、定頼は意外に思って、「これはどうしたことだ。⑩このような様子があるだろうか、いやありえない。」とだけ言って、返事の和歌もできず、袖を引っ張り放って、お逃げになった。
⑪小式部は、これより歌人の世界で名声が出てきてしまった。
【語句説明】
① ・和泉式部・・平安時代中期の有名な女流歌人。恋多き女性であった。後で出てくる「小式部内侍」の母。
・保昌・・藤原保昌 武士。和泉式部が再婚していた。丹後の国司として、赴任している。
・下り(四段動詞 下る)・・都から地方へ行く
・「ける」(過去助動詞 けり) 
・ほど・・時
② ・歌合・・和歌を使ったゲーム。 2チームに分かれ、同じ題で作った和歌の優劣を競う。
③ れ(受身助動詞「る」) 
※助動詞「る」「らる」は、現代語の「れる」「られる」と同じ用法
  受身・尊敬・自発・可能  未然形接続
④・定頼の中納言・・藤原定頼 歌人 小式部内侍をなめている。小式部内侍が自分で和歌を作れるはずがない。母に代作してもらっているのだろうと言いがかりをつける。
・たはぶれ・・冗談
⑤・つかはし(四段動詞 つかはす)・・おやりになる
・参り(参る) 謙譲語 参上する
⑥・いかに・・どんなに
・心もとなく(形容詞 心もとなし)・・不安に思う
・思す(おぼす)尊敬語 お思いになる
・らむ(現在推量助動詞 らむ)
・局(よみ つぼね)・・小式部内侍のいる部屋
・られ(尊敬助動詞 らる)
⑦・御簾 (よみ みす) 部屋のしきりのカーテンの一種
・なから・・体半分
・ばかり・・ぐらい
・直衣(よみ のうし)・・男性貴族の正装
・ひかへ(下二段動詞 ひかふ)・・つかむ
※この時代の女性は、部屋の中にこもって、男に顔や姿をみせないのが普通。部屋の中から飛び出して来たというのは、小式部の怒りの激しさを表している。
⑧小式部内侍の和歌
・掛詞 1語で2つの意味を持つ語
「いく」 1 行く 2 生野の「生」
「ふみ」 1 踏み 2 文
・縁語 関係の深い言葉
「ふみ」と「橋」
※ こういう技巧を使えることが、歌人の実力だと思われていた。
・大江山・・・丹後へ行く途中にある山
・生野・・これも丹後の地名
・天橋立・・丹後宮津 和泉式部がいる近く
※ちなみにこの歌、百人一首にもとられ、小式部のおもて歌になっている。
⑨・思はずに(思はずなり) 思いがけないことに
・あさましく (形容詞 あさまし) 意外に思う あきれる
・こ・・これ
・いかに・・どうしたことだ
⑩・かかるやう・・このような様子
(具体的)小式部内侍が即座にすばらしい和歌を詠んだこと。
・やは(係り助詞 反語)  ~か、いや・・・
  結びは「ある」 ラ変動詞「あり」連体形
・返歌・・返事の和歌 和歌をもらうと、必ず返歌をするのがマナーだった。定頼はこれができなかったのである。
・及ばず・・できず
・逃げられ 「られ」は尊敬助動詞
・歌詠み・・歌人
・おもえ・・評判 名声
・出で来 (いでき カ変動詞 いでく) 出てくる
・にけり・・「に」(完了助動詞「ぬ」連用形 「けり」過去助動詞)

【本文】2
⑫これはうちまかせての理運のことなれども、かの卿の心には、これほどの歌、ただいま詠み出だすべしとは知られざりけるにや。
(口語訳)2
⑫これは一般的に当然のことであるけれども、あの公卿(定頼)の心には、これほどの和歌が、すぐに詠み出せるとはご存じではなかったのであろうか。
【語句説明】
⑫・うちまかせて・・一般的に 
・理運・・当然
・なれ(断定助動詞「なり」已然形 名詞接続)
・かの卿・・あの公卿=定頼
・ただいま・・すぐに 即座に
・べし(可能助動詞)
・れ(尊敬助動詞「る」)
・ざり (打消助動詞「ず」連用)
・ける(過去助動詞)
・にや 「に」・・断定助動詞「なり」連用形
    「や」・・係り助詞 疑問

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