どんぴ帳

チョモランマな内容

続・くみたてんちゅ(その19)

2010-05-25 02:34:13 | 組立人

 翌朝、ホテルのレストランで朝食を摂る。

 今日で帰るのは私と佐野、赤城のW社のメンバー三人だ。
「うぃーっす」
 佐野、そして赤城も眠そうな顔でレストランに現れる。
「おはよーございます」
 佐野の皿にはフレンチトーストと果物程度しか載っていない。
「昨日はあれから随分騒いだんですか?」
「ああ、あれから大騒ぎだったよ、特に佐藤君がね」
 赤城が代わりに答える。
「まさかあんな騒ぎになるとは思ってなかったよなぁ…、佐藤君が全裸になっちゃってさぁ」
「うははは、マジですか?」
「野球拳で盛り上がってさ、最後は全裸でソファに座ってたからな」
 佐野は昨夜の光景を思い出したのか、急に楽しそうに話し出す。
「女の子も脱がしたんですか?」
「いやぁ、女の子は服を着たまま下着だけ脱いでたなぁ」
「部屋に入って来たママが悲鳴を上げてたよね」
「そうそう、意外と純情なんだよな、あのママ」
 佐野と赤城は楽しそうに昨夜のことを話している。
「でも佐藤君がそんなに弾けるタイプだとは思いませんでしたよ」
 私の印象では、どちらかと言うとやや醒めた今時の20代かと思っていたからだ。
「いやいや、かなり楽しそうに遊んでたぞ。俺も野球拳で一回負けただけでいきなりパンツから脱いでやったけどな」
「うははは、そうですか」
 やはり時代は移り変わっても、現場で働く者同士のコミュニケーションは、そういうことが最も効果的らしい。

 朝食を終えて10時前に部屋をチェックアウトし、ロビーのカフェに集合する。
「今からどうしますか?」
 一時間ほど雑談をしたが、フライトまではまだ時間がある。
「土産物でも買いに行くかぁ?」
「そうですね」
 そう言いつつ、私は外を見て苦笑いをした。
「それにしても凄いですね、黄砂…」
 そろそろお昼も近いのに、空の色がどんよりと薄暗く、そして黄色い。


黄色い空
 この日、北京には大量の黄砂が飛来。
 冗談では無く、ガラス窓の向こう側が黄色に見える。
「それにしても凄いね、中国の黄砂は」
「日本に飛んでくる黄砂とは比較にならないよね」
「とにかく粒子がデカイよなぁ」
 地面に降り積もった黄砂は強風が旋風を巻くと、再び黄色い渦となって空へ舞い上がる。
「とりあえずスーツケースをフロントに預けますか?」
「ああ、キーちゃんの怪しい英語力で頼むよ、俺は勘定を済ませるからさ」
 佐野はカフェのキャッシャーに向かい、私は赤城と一緒にフロントに行き、女性中国人スタッフに話し掛ける。
「あい うぉんとぅーごー さいとしーいんぐ!」
 そして、
「バンバン!」
 とスーツケースを軽く叩く。
「アア…」
 すぐに女性中国人スタッフは私の意図を察し、クローク担当の男性スタッフを呼ぶ。
 別に本気で観光に行く訳ではないが、英語なんてきちんと出来なくても中学生(以下の…笑)英語で十分にコミュニケーションは可能だ。
 きっちりと、
「We want you to keep these suitcases. 」
 と言う必要などまったく無い。英語で会話をする場合に一々文法的に適合するかどうかなんて考えていたら、ギャグの一つも言えなくなってしまう。

 大体、日本人の日本語だってきちんと話す人間は案外少ないのだ。
「あ、お姉さん、ほら、あの、あれ、えーとぉ、この辺の名物のさぁ…」
「あ、○○蕎麦のことですか?」
「そうそう、そのナントカ蕎麦の店で、ほら、有名な…」
「テレビでよく紹介される『△△庵』のことでしょうか?」
「あ、それそれ、そこまでのさ…」
「はい、こちらの地図でご案内致しますね!」
 なんて会話をしているオジサンを、よく観光ホテルのフロントで見かけることがある。
 そのオジサンに、
「あなたは日本語をきちんと話せますか?」
 と質問すれば間違いなく、
「あ?当たり前だろう、俺は日本人だぞ!」
 と答えるに決まっている。日本人の使う英語なんて、テキトーで上等だ(笑)

「○×△□?」
 クロークの男性スタッフの英語も異常に怪しいが、何を言っているのかは理解できるので、
「つーおくろっく」
 と答えておく。預り証にサインをして、半券を受け取れば準備完了だ。
「キーちゃん、預かってもらった?」
「ええ、怪しい英語でバッチリです」
 佐野がカフェの支払いを終えて合流する。

 外に出ると寒風と黄砂が吹きつけ、早くもウンザリとする。
「うわぁ、口の中がシャリシャリするぅ…」
「なんか視界が黄色いぞ!」 
 通りを歩いている人も非常に少ない。


ホテル駐車場のアウディ
 黒のピカピカなアウディも、一晩で黄砂パウダーにまみれています。


まるで放置車両
 三日も黄砂が降り積もれば、見事な『野ざらし車両』の出来上がり。 
「こりゃ洗車屋が繁盛する訳だよな…」
 どこの国の人間であろうと、この状態の車を『洗車機』に入れる勇気は無いはずだ。

「とりあえず昼飯か?」
「ええ、もうフードコートでイイですよ」
「じゃ、フードコートね!」

 我々はまたしてもフードコートに向かった。




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2 コメント

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旅人 (カミヤミ)
2010-05-27 10:03:27
黄砂に吹かれて祝ちゃんは、歌ってたんだもん。明日は、裁判二度目です。裁判も二度目なら、少しは上手に相手の嫌がるメッセージ伝えたい。セカンドラブラブラブジュース。ワコとマコのラブジュース。飲み過ぎたのは、あたなの精よ!…疲れてるので、ドラえもんに明日は頼みます。
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抜人 (どんぴ)
2010-05-28 03:57:23
 今日は『訴訟戦隊ベンゴマン』の『証拠フラッシュ』とか『反証ビーム』が炸裂する日なんですね(笑)

 私もそろそろ『サンテ40』が必要な年齢ですので、飲み過ぎたらスタートグリッドでエンジンが始動しないお年頃です。
 そんな時は『カミえもん』に頼めば、
「バイバイ○グラぁ~!」
 なんて言って、効能が二倍の怪しい青色の錠剤を出してくれるのでしょーか?
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