真理子は洋子の誘いを断りきれず、思い切ってICUの外に出てみることにした。
洋子を訪ねてみると、驚いたことにおうちが新築の大きな一軒屋になっていた。
以前に住んでいたちっぽけな古いアパートとは大違いだ。
そしてなんと 洋子のだんなが新しい人になっていた。新しいだんなは大学で音楽(ドラム)を教えているそうで、洋子の念願(憧れの黒人のリズム感といっっしょになる)がかなったことになった。洋子のアメリカンドリームである。
最初のだんなのJESUSには結局ひどく浮気をされてしまい、それが離婚につながったそうだ。
その夜、久々に手作りの日本食をごちそうになりながら、
「ねぇ、真理子、あんたもよくがんばったね。頭のいい人だとはいつも思っていたけど 正直日本人でここで弁護士になるなんて到底無理なんじゃないかと思ってたんだよ。」
「ほんとうね。何度やめようかと思ったことか。でもマイクがずーっとはげましてくれてたから一緒にロースクールも卒業できたんだと思う。小さな子供をかかえての勉強だったしね。司法試験だっていっっしょに勉強して彼は1度目で私は2度目で受かったの。マイクが、マイクが…。」
そこまで言ってもうことばにならなかった。
「ところで、亜樹のこと覚えてる?真理子とはけんかわかれみたいになっちゃったからもちろん知らないだろうけど、あれから彼女、どうなったと思う?」