多段コーリニアの特徴と使用法

多段コーリニア（1/2λエレメント6段以上）は、利得が大きくなる分、使いにくい面を持っている。

下記に8段及びハムフェアで展示した21段コーリニアの山岳移動時の現実的な地上高5mでのMMANAで解析したリアルグランド垂直面パターンを示す。

まず8段は、1.7°と5°度付近に幅1-2°の強い放射がみられる。

ハムフェアで展示した21段コーリニアは、1.6°付近のみに幅1°程度の強い放射がみられるだけだ。

まさにカミソリのようだ。

これは、理想的な地形での解析なので現実はもう少し歪だろう。

しかし、このパターンが頭に入ってないと多段コーリニアの使い方を誤ることになる。

富士山山頂で21段コーリニアを垂直に立てるとどうなる？

強い放射は、ひたすら地平線を目指すので電波の『見通し距離の実験』には使えるかもしれないな。

私が山岳移動で使った最大段数は、16段。これは21段と大きく変わらない性能。

では、この切れをどうやって生かす？それが下図だ。

私が常用する場所の標高は700mだ。ここからの電波的な見通し距離は約110Km。

これは関東UHFでQRPで交信出来た地域とぴたりと一致している。

通常の運用では

アンテナの設置時にある程度距離の地域を目標にして、Sが一番強くなる角度・方向にアンテナを傾けている。

図で50Km先のA市とすると距離50Km高さ0.7Kmなので角度は、1°弱。

打上げ角の1.6°または1.7°を足すと少なくとも2,3°地上側へ傾ける必要がある。

しかし一方で飛びにくくなる地域も発生する。

近距離の信号は、更に傾ける必要がある。が、近いので信号も強く問題ない。

アンテナが手元にあれば傾き方向を変えながら運用することもある。

Q＆A

以上の特性を考慮した上での使用をお勧めする。

Q：これだけパターンが狭いと使い難いのでは？

A：移動ではグラスファイバーポールに張り付けて使っているけど、そよ風が吹くとポールが揺れて大きなQSBだね。

Q:コーリニアは、どうしてSが弱いのですか？

A：上で説明したようにパターンが極端に狭いので交信している地域方向に倒さないとSは強くならないんだよ。

地上では、山とは逆になるので山岳・ビル反射方向へ上向けることが多かったよ。

でも通常は山岳移動でもイチイチ傾けないし、固定では仰角ローテーターが無い限り傾けられないから全般的にSが弱くなるね。

Q：Sの弱い使い難いコーリニアでコンテストに参加してますよね。どうして八木を使わないのですか？

A：コンテストは、出来るだけ多くの局と交信しなきゃならないよね？だからこそコーリニアなんだ。

無指向性で一網打尽。山岳移動局の論理だけどね。

Q：コーリニアは、無指向なのでコンテストでは無駄な方向に電波を飛ばしてませんか？

A:良い指摘だね。全国大会ならば山頂移動でも問題ないが、関東圏の大会でコーリニアでの山頂移動は確かに効率悪いね。

Q：じゃあどこへ移動してるんですか？

A:無駄な電波は、山に反射させて有効利用しているのさ！！つまり飛ばしたい方向の反対側は山岳地帯が良いね。

山で乱反射して思わぬ所へ飛ぶし＋3dBとは言わないがかなり効果があるね。

Q：使い難さをメリットに変えているんですね。

A：移動地の特徴を考えて、コーリニアの設置方法や使い方を考えるんだ。

C:そうでしたか特徴を生かした移動地選びやメリット・デメリットを考えながら使っているんですね。

C:まあ、使い込んでくると特徴を生かした運用方法が見えてくるので暫く使ってみてね。