ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

会議の乱立 政策の混乱などにつながらないか

2021年11月10日 13時10分00秒 | 国際・政治

 今日(2021年11月10日)、第2次岸田文雄内閣が発足します。10月4日から今日までは第1次岸田文雄内閣でしたので、岸田文雄氏は第100代および第101代の内閣総理大臣であるということになります。

 さて、10月31日の衆議院議員総選挙において自由民主党が安定多数で勝利ということになり、内閣は強固な基盤を手に入れたと言えそうですが、早速、問題が出ているようです。時事通信社が、今日の7時5分付で「岸田首相の看板政策で会議乱立 役割曖昧、混乱の恐れも」として報じています(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021110901120&g=pol)。

 政策推進に係る会議の乱立という問題は、第二次以降の安倍晋三内閣においても見受けられました。似たような名称の会議(審議会など)がいくつか設置され、しかも審議事項の範囲などが曖昧で、何処の会議も同じような方針を打ち出すか、会議によって異なる方針が打ち出されて混乱を招くかのいずれかが起こるという懸念があるのですが、現在の内閣でも同じような話が出てきそうです。

 既に、経済財政諮問会議、デジタル社会推進会議、規制改革推進会議および行政改革推進会議の継続が決まっています。その上で、新しい資本主義実現会議が新設されており、デジタル田園都市国家構想実現会議、デジタル臨時行政調査会、全世代型社会保障構築会議および公的価格評価検討委員会が11月9日に新設されました。

 新しい資本主義実現会議は、岸田文雄内閣総理大臣が公約で掲げた「新しい資本主義」、「成長と分配の好循環」をキーワードとするようです。しかし、その内容は経済財政諮問会議の審議内容とも関係します。経済財政諮問会議が毎年発表している通称「骨太の方針」は、次年度予算編成などにも関わる重要な政策方針を示す文書ですが、そこでも経済成長のための様々な方策が示されています。そうなると、新しい資本主義実現会議と経済財政諮問会議との関係が問題になります(上記時事通信社記事でも指摘されています)。「新しい資本主義」の内容によっては、これまでの「骨太の方針」の方向性を転換するものとなりうるだけに、また両会議に上下関係がないとされるだけに、役割分担などが課題となるでしょう。

 これまでにも政府はSociety 5.0として行政のデジタル化や5Gの推進などを掲げてきましたが、岸田文雄内閣はその方向性をさらに強化するようで、デジタル田園都市国家構想実現会議およびデジタル臨時行政調査会が発足した訳です。しかし、デジタル社会推進会議を含め、これらの関係はどのようなものかがよくわかりません。上記時事通信社記事によれば、「デジタル田園都市国家構想実現会議はデジタル技術による地方活性化が目的」であり、「デジタル臨調はデジタル、規制、行政の3改革を一体的に進める」ということです。何となく区別されているように見えますが、「地方活性化」と規制改革や行政改革は深い関係にありますから、完全に切り離すことはできません。デジタル社会推進会議の下部組織としてデジタル田園都市国家構想実現会議およびデジタル臨時行政調査会を設置するというのであれば、或る程度の役割分担もできますし、会議の位置づけも明確になるのですが、どうやら3つの会議に上下関係はないということなので、審議事項などの重複は避けられないでしょう。また、メンバーの重複も生じるでしょう(勿論、多少とも構成員を変えるはずですが)。

 もっとも、3つの会議を並存させることで、A会議で了承されたことがB会議でも了承され、C会議でも了承された、ということになり、政策方針・方策の妥当性の論拠を強いものにするという意味合いはあるでしょう。しかし、それは無駄遣いということにつながるでしょう(各会議のメンバーが完全に無報酬ということであれば話は別ですが)。

 ここまで挙げた各会議は、国家行政組織法第8条に定められる審議会等であるため、答申に法的拘束力はありません。しかし、実際には後の立法過程に強い影響を与えます。実際に、国会に提出される内閣提出法律案を読んでいると、国会、とくに各議院の各委員会における「審査」での質疑応答よりも、審議会等が出す答申や報告書のほうが、法律の趣旨を理解するのに役立つということも少なくありません。これは立法府軽視の傾向を示す一端でもあり、立法府の存在意義そのものが問われる事態でもあります。

 私は、デジタル関係の会議が設置されること自体に反対しません。しかし、既にデジタル社会推進会議が置かれている以上、これと対等の関係に立つような別の会議を新たに立ち上げる必要はなかったと考えます。むしろ、デジタル社会推進会議を親会議として、分野毎に子会議あるいはワーキンググループを設けるほうがよい形であろうと思われるのです。


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