2009年度から大東文化大学大学院法務研究科(法科大学院)の講義を担当しています。年度によって曜日と時限が変わるので申し訳なく思っていますが、2013年度は金曜日の1限に担当する予定です。
そのため、私も法科大学院問題や司法試験問題については関心を持たざるをえません。今世紀に入ってから進められた司法改革について、多分に現段階での印象に基づく短評を添えるなら、裁判員制度は成功と言える(課題を抱えることは否定できません)のに対し、司法試験改革および法科大学院制度については失敗と言えるでしょうか。そもそも、両者が正反対の方向とも言えるものですので、どちらかが成功すればもう一つのほうは失敗することが必然であったと考えるべきでしょう。
さて、その司法試験ですが、法科大学院との関係で設定された司法試験合格者3000人計画の撤廃に向けて動き出したようです。今日の朝日新聞朝刊1面14版に「司法試験3000人枠 撤廃へ 政府会議、近く提言」という記事が掲載されています。
司法試験の合格者を年間3000人程度とするというのは、2002年に政府が計画したことで、閣議決定もなされています。しかし、法科大学院修了者を対象とする司法試験の合格者数は低下する傾向を示しており、2000人程度で落ち着いています。
そもそも、司法試験の合格者を受験者の7割から8割程度とするという目標自体が無理な話であったとも考えられます。旧司法試験が廃止されて予備試験が導入されましたが、その予備試験を法科大学院の学生が受験して合格するという現象も出ており、法科大学院および新司法試験の存在意義が問われかねない事態となっています。
試験自体だけが問題ではありません。時々、我々の業界用語を使うならば出口の問題、つまり就職先などが大きな壁になっています。合格者が増えたところで、裁判官も検察官も増えている訳ではなく、ほとんどは弁護士の増加となっています。上記朝日新聞記事にも指摘されていますが、民事訴訟が多くなっている訳でもありません(訴訟が多くなるというのは、社会にとって歓迎すべきことではありませんが)。日本弁護士連合会は、かなり前から新制度に疑念を示し、合格者数を年1500人程度にまで減らすべきだとも提言していました。
企業や地方公共団体なども出口として考えられていたのですが、実際にはうまくいっていません。これについても記したいことはありますが、控えておきます。
いずれにせよ、今後、政府の法曹養成制度検討会議が提言をまとめます。それを受けて政府が何らかの策を打ち出すことでしょう。