森中定治ブログ「次世代に贈る社会」

人間のこと,社会のこと,未来のこと,いろいろと考えたことを書きます

4枚カード問題

2021-09-24 13:49:11 | 人類の未来

2021年7月20日に前のブログを書いたから、それからはや2ヶ月が過ぎました。前回は、私は人間の持つ利他性について今年4月の市民シンポジウム以来ずっと考えてきて、8月26日の生物学基礎論研究会で、それを発表するつもりで研究会に要旨も送っていたので、その関連でブログを作成しました。


私が『プルトニウム消滅!』という本を書いていることもあり、「プルトニムをこの世から完全に消してしまう技術があるのか」という問いが元になって、銀座の交詢社で講演をすることになりました。プルトニウムはミサイルで他国に打ち込めば核兵器の使用となって世界の大ごとになりますが、世界の大ごとにしないで同じくらい恐ろしい使い方があります。1ミクロン以下の粉末にして空に撒くのです。空気中を漂い、1度撒かれたらもはや集めようがありません。その空気中を漂う微粒子1粒が呼吸で鼻から肺に入ったら・・。白血病や奇形児を生み出す劣化ウランの19万倍の力を持っていて、その地は2万年死の地になります。銀座や新宿の空で撒かれたらと思うととても恐ろしいです。他国と殺し合いなどしておれません。これはダーティーボム(汚い爆弾)と呼ばれ、以前からよく知られています。オバマ大統領なども講演で警告を発しています。日本ではなぜか話題にならず、私には大変不思議です。このようなプルトニムの怖さや具体的にどのように消滅させるのかを話そうと思いました。8月21日午後、講演1時間半、その後2時間質疑応答で午後丸半日の企画です。1時間半の講演は長すぎるので、人間の利他性についての話を半分加えたいとお願いしたら、OKになりました。私は、8月26日の生物学基礎論研究会のリハーサルを兼ねることができて、とてもよかったです。


前後しますが、歌では8月7日にポピュレールシャンソンコンクール・セミファイナルが神戸であって、神戸へ行って歌いました。残念ながら落ちました。8月24日には日本シャンソン・カンツォーネ振興協会(JCC)のコンクール東京大会があり、そこでは勝ちました。9月28日が国際声楽コンクール東京の歌曲部門です。これは埼玉予選を勝ち上がってのセミファイナルなのですが、ここで勝つと全国大会で日本歌曲を加えて3曲歌わねばなりません。負ければ無論それで終わりですが、勝った場合でも今歌っている「ああ愛する人の」というイタリア歌曲、日本歌曲の「落葉松」の他、自信を持って歌えるもう1曲がないので今年はそこで止めるつもりでした。ところが久しぶりにレッスンをいただいた新座の岩崎先生が「勝ったらなぜ止めるんだ!もう1曲くらいなんだっていい。いい経験だからぜひ参加したら」というので、気分が変わりました。あなたにぴったりだと言って、トスティの「暁は光から」を薦めてくださいました。
https://www.youtube.com/watch?v=va5Je7rmiFI
確かに私にあっている歌で伸び伸びと気持ちよく歌えそうですが、この頃かなりシャンソンにシフトしているので、初めての歌ではなく歌い慣れた他の歌を探します。それから9月30日が、JCCのシャンソン・カンツォーネコンクール全国大会です。これは是非、がんばりたいです。
こんなことをしていたら、あっという間に2ヶ月が過ぎてしまいました。


人間の持つ真の利他性について、少し記述があるので最近『最後通牒ゲームの謎』という本を読みました。ゲーム理論や、4枚カード問題は以前から知っていましたが、とても新鮮に興味深く読むことができました。
今朝の毎日新聞に菅首相の「まず自助」という言葉についてオピニオンとして3人の主張が出ています。竹中平蔵氏は「公助のためには、自助できる人が税金を納めていなければならない」と書いています。私のような年金暮らしの老人でも税金は納めています。自分自身が自助の立場にいることを改めて認識しました。宮本太郎氏は「コロナ下のこの1年間で日本は、自助は難しく、共助も瓦解しつつあり、公助も成り立っていない、言わば『無助社会』に近づいたのではないか」と書いています。北村年子氏は「助けが必要な人の口を塞ぐ最悪のメッセージだった」と書いています。そしてDaiGo氏の動画にも触れています。宮本氏に近い立場だと思います。公助とは何なのか?竹中氏と、宮本氏・北村氏でその認識が真逆であると感じました。
どうしてこのようになるのでしょうか。


先に述べた『最後通牒ゲームの謎』に、興味深いひとつの「4枚カード問題」があるのでご紹介いたします。ドイツのコンスタンツ大学での実験です。
(ルール)
 ある企業で企業年金をもらうには、10年以上の勤続がその資格である。
(カード)
カード1 年金をもらっている
カード2 年金をもらっていない
カード3 勤続10年以上
カード4 勤続10年未満
(質問)
企業年金の有無と退職者の勤続年数が記されたカードがあります。あなたはどの2枚を選べばそれがわかると思いますか?
(答)
あなたが企業の損得を重視する経営者であればカード1とカード4、あなたが働く人の利益を重視する労働組合の委員長であればカード2とカード3です。これって、どちらも間違っていないのです。立場によって真逆になるんですね。どちらも自分こそが正しい、相手が間違っていると確信しています。でもどちらもルールは単なる建前と化しています。仲間と敵、双方がルールそっちのけで闘うのです。
毎日新聞の竹中氏と宮本氏・北村氏の主張・・、私の中でこの4枚のカードと重なりました。


およそ600万年前に人類が初めて樹上から地上に降り立ちました。地上には肉食動物がいるので、暴力によって喰い殺され孤立していては到底生きていけません。自分だって同じことをしたでしょう。魚や鳥や自分より弱い動物がいれば殺して食べたでしょう。それがそもそも人間というか、生物の始まりです。その関係の中で、うまく機能するグループを作った人が、その後生き残りました。グループとは言葉を変えれば仲間のことです。そのうちにそのグループ同士が争い、暴力で相手の食糧などを奪うようになりました。そしてその後はより強いグループが残っていったのでしょう。仲間内には利他(善)、それがそのまま仲間外(敵)には利己(悪)になります。これは利他と利己が仲間か仲間外かで単に裏表になっているだけです。仲間の生命を守ることと敵の生命を奪うことが同じになります。もはや相手は同じ人間ではありません。これは真の利他ではありません。仲間はとても大事です。仲間がいなければ、肉食動物から人間は逃れることができず消滅していたでしょう。しかしその仲間それ自体が、仲間外を生み出します。先程の4枚カードと同じです。立場つまり仲間か仲間外かで確信が真逆になります。『最後通牒ゲームの謎』では「脱人間化」という恐ろしい言葉が出てきます。仲間外の人に対して「脱人間化」が生じている可能性が指摘されています。仲間外についてはもはや人間と見ていないということです。でもそんなことを口に出せば大ごとになりますから、もちろん口には出しません。入管で亡くなったセイロンのウィシュマさん、先般のアフガニスタンで10人もの民間人が亡くなったドローン攻撃・・、脱人間化が起こっているのではないかとの予感がします。
早く人間の持つ真の利他性についての論文を、世に出したいと思います。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする