私たちはテレビで一体何を見ているのか。なでしこジャパンの活躍に、ももいろクローバーZの活躍に、私たちは何を見ているのか。あれは個人の努力の前提として、チームの結束力があったからではないのか。雇用問題で取り上げられる「個人の努力」とは、こうした「チームの結束力」は前提とされていない。就職活動中は当然どこの組織にも属していないし、非正規雇用者も正社員から一段低い「チームの一員」と見なされる現実から考えて、結束力を前提としたものではない。なでしこのメンバーは、たとえベンチウォーマーの立場にあっても、一員としての自覚がビンビン伝わってくる。箱根駅伝を見ていても、個人のヒーロー以上に学校のたすきをつなぐ結束力に日本人が強く惹かれているのは明らかである。
そうした中で、雇用問題で語られる「個人の努力」論はそうした組織力とは真逆の、ライバル相手を蹴落とし、自分だけが勝ち残ろうとするような偏狭な努力論として響く。これの一体どこが日本経済の成長に利すると言うのだろうか。どう見ても職場の雰囲気を悪化させ、組織力を低下させ、解決どころか問題を悪化させるだけの悪魔的な呪文としか思えないキーワードだ。こんな議論をする人には、悪を倒すのに5人(今は3人だが)の力を結集させるスーパー戦隊ドラマでも見て勉強し直して欲しい。
それにしても、個人の努力論をとうとうと述べる人は、きっと雇用者側、経営者側の人間なんだろうなあ、と漠然と思っていたのだが、どうも自身も非正規労働者やそれに近い身分の人にも主張する人が多いようだ。そのことはいまだに理解できない。回りの人間も不幸になれば、自分の不幸は多少なりとも和らぐ、と言う発想なのだろうか。
あと、そもそも論として、労働者の給料が伸び悩めば当然消費者の購買力も低下する訳で、そこでいくら良いものを作っても売れないのだから、生産性向上の努力だけではどうにもならない、と言う基本的な議論もあるのだが、そのことを理解していない人もまた多いことも同様に謎である。
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