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DayDreamNote by星玉

創作ノート ショートストーリー 詩 幻想話 短歌 創作文など    

flake25.流夜

2018年12月20日 | 星玉帳-Star Flakes-
【流夜】


この星に辿り着いて以来


星を数え続けた。


気まぐれな夜の光がまるで失った時のように思え


なぞるように毎夜数え続けた。


失うことの意味も知らず夜の星だけ抱くことは


悲しみなのか幸福なのかと


問う代わりに。


過ぎゆく時の瞬きは幻であると分かったのは幾つめの星だろう。


また一つ夜が流れる。




flake25『流夜』




flake24.浮遊

2018年12月15日 | 星玉帳-Star Flakes-
【浮遊】


夜を迎える刻


いつかの鳥の「飛行跡」をたどる。


それは星の寝床に帰るという鳥に教わったものだ。


行ったこともない星の見たこともない寝床が無性に懐かしく


幾度もたどっているうちに道筋を覚えた。


そうしていつか浮かぶことができるのですよ


と鳥はその羽でわたしを包み教えてくれた。





flake24『浮遊』



flake23.夢枕

2018年12月07日 | 星玉帳-Star Flakes-
【夢枕】


こうして会うのはどのくらいぶりだろう。


好きだった珈琲を淹れる。


香りは気に入るだろうか味良く淹れることができただろうか。


そわそわとカップに熱い液体を注ぐ。


何か話そうとするのだが


嬉しさばかりで言葉がうまく出てこない。



そして不意に香り立つ場面は終わる。


あなたにここで会うたびに。




flake23『夢枕』





flake22.焚火

2018年12月06日 | 星玉帳-Star Flakes-
【焚火】


川のそば、旅支度のものたちが火を囲んでいた。


川を渡る船を待っているのだ。


船の時刻を尋ねたが誰も知らないと言う。


煙が昇るとそれが目印となり船がこちらへ向かうらしい。


一緒に待つことにした。


水の音と炎の音に混じり誰かが呟く。


戻れない旅のことと置いていく人のことを


ぽつりぽつりと。





flake22『焚火』



flake21.眠

2018年11月29日 | 星玉帳-Star Flakes-
【眠】


眠れぬ夜に付ける薬のことを伝え聞いた。


遙か星の丘


城跡に茂る草を煮詰め


それを瞼にすり込むとよいという。


眠れぬ夜が千を超す時、


視界に霧がかかってくる。


薬の効く瞼になっているので


その頃星の城跡を探す旅を始めればよい。


だが霧の視界は迷路の思考と似ている。


戻れぬこともある。注意を。





flake21『眠』


flake20.夢猫

2018年11月23日 | 星玉帳-Star Flakes-
【夢猫】


夢であれと願って以来


あちらこちらの境界など曖昧になりましてと


路地裏で出会った猫が言う。


猫の体は白黒の縞模様で闇の中光の中それぞれ半分だけが見えた。


半分の猫を抱き上げると


夢のようですいいえ夢です願ったかいがありましたと鳴く。


夢を見るのは簡単で路地裏の猫の招きに従えば良い。





flake20『夢猫』






flake19.銀の粒

2018年11月20日 | 星玉帳-Star Flakes-
【銀の粒】


銀色の丸薬を持たせてくれたのは星宿の主だった。


長い旅の途中には気の遠くなるようなことがままあり


そんな時この小さな粒を口に含むとよいと教えてくれた。


銀の粒はいつも胸ポケットの中だ。


時々口に入れる。


苦さが弾ける刹那


決まって脳裏に浮かぶのはあの星宿の灯りひとつの夜なのだった。





flake19『銀の粒』



flake18.歌唄い

2018年11月17日 | 星玉帳-Star Flakes-
【歌唄い】


川のほとり


歌唄いはひとりで暮らす。


聞かせる相手もなく気ままな歌を作っては歌う。


この頃


渡る鳥の姿を目で追っては思う。


この歌はどこかに届くものだろうか。


眠りにつく前に思う。


歌は誰かの子守歌になるものだろうか。


例えば


通りすがる鳥は今夜の歌に耳を傾けてくれるだろうか。







flake18『歌唄い』




flake17.傘

2018年11月09日 | 星玉帳-Star Flakes-
【傘】


辿り着いた星では激しい雨と痛烈な日差しの日が続いていた。


星に棲むアメネズミから傘は必要ですよと忠告され


使い古しでよければとひとつ譲ってもらった。


雨や日差しを完璧に遮ることは無理だが


開くと守られている安心感があった。



星を後にしてからも傘は毎日開く。



ただ安心するために開く。




flake17『傘』




flake16.彼

2018年11月07日 | 星玉帳-Star Flakes-
【彼】


霧の星で出会った彼は毎日のように墓のそばに座り本を開いていた。


が、ある深い霧の晩を境にその姿はぷっつりと消えた。


墓のそばには本が残されていた。


表紙は破れインクはかすれていたが微かに異国の文字が読み取れた。



霧の中

彼の墓と異国の文字と丸まるように本を読む彼の姿を抱き直す。


今も何度も。




flake16『彼』



flake15.羽

2018年11月01日 | 星玉帳-Star Flakes-
【羽】

宿の壁に鳥が描かれていた。


鳥ばかり描いていた絵師がいたことを思い出す。


手を伸ばして壁に触る。触れていると


羽が幾枚かこちら側に飛んでくるように思えた。


聞こえる鳴き声は眠り歌代わりになるだろう。


目を閉じて祈る。


まぶたの裏の空と羽が鳥への敬いと礼になるようにと。





flake15『羽』




flake14.紐

2018年10月30日 | 星玉帳-Star Flakes-
【紐】


氷の海を往く人と


流氷の船上で別れたのは何時だったか。


記憶をたぐり寄せ紐に結ぶ。


紐は氷樹の皮で編んだもので結ぶのは深い記憶だ。


それらは系列も規則も持たず古くも新しくもなり得た。


不規則なものたちを結ぶ度に紐は固く冷たくなるので


胸ポケットに入れて鼓動に当てるようにするのだ。




flake14『紐』




flake13.花灯

2018年10月25日 | 星玉帳-Star Flakes-
【花灯】


森を進む。


辺りはどんどん暗くなり


殆ど闇の中にいるようになってしまった。


時たま足元に小さな白い光が浮かぶのが頼りだった。


この星にしか咲かない灯り花だ。


花のそばにいた小さな動物が


どうぞ灯りにと花を幾つかくれた。


闇は深くなるばかりで


と鳴く彼は


もうずっとここに佇んでいるという。




flake13『花灯』


flake12.葉

2018年10月22日 | 星玉帳-Star Flakes-
【葉】


野原に立つ樹木のそばで暮らす羊を訪ねた。


羊から葉を渡される。


言葉を記すための葉らしい。


思いつくままに綴ると


それはすぐに野に放たれた。


葉は養分となりどこかで実が育ったり


毒になり何かを傷めたり


何にもならず漂ったりすぐに朽ちたり


それはおおかた風任せなのですよと羊は言う。


 


flake12『葉』




flake11.境界

2018年10月18日 | 星玉帳-Star Flakes-
【境界】


いつの間にか体が水に濡れていた。


河原を歩いていたはずなのに


瞬く間に全身が水に包まれてゆく。


どこへいくはずだったのか。


夢なのか現なのか


それを明らかにする必要があるのかと


濡れながら思う。


夢との境界はいつも曖昧で尊い。


どこかの星のどこかの川辺も


境界が見せた映し絵に違いない。




flake11『境界』