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嘘つきで凶暴な男は 居住地域を追い出されました。
男は荒野の岩に腰かけて自分勝手な怒りに震えていました。
男を慰めるようにそっと咲いていた花を千切っては踏みつけ、
生きる為に食べ物を探していた昆虫を力いっぱい足で踏みつけて、
空に向かって呪いの言葉を吐きました。
そこに少年がひとり通りかかりました。
男 「おい、ボウズ。食べ物か金を出せ。
それと女のいる場所を教えろ。
でなきゃお前を食っちまうぞ。」
少年 「おじさん、ボクは悪魔だよ。
人間界の契約者を探しに行くところなんだ。」
男 「お~。それはちょうど良かった。
オレが世界中を旅した時に出会った
バカな人間の住所と名前を全部教えてやるよ。
それを聞けばお前は、腐るほどの魂を手に入れられるぜ。
でもそれを話すには100年はかかる。
先にオレの寿命を100年延ばしてくれ。」
少年 「いいよ。ホラ。」
悪魔の子は、男に魔法をかけて寿命を100年延ばしました。
男 「本当に延びたんだな?ありがよ。」
男はそう言うと、少年を殺して食べてしまいました。
男は100年の寿命が約束されたので、町へ戻って悪さの限りを尽くしました。
銃で撃たれても、死刑になっても、男は死にませんでした。
男は感情と欲望のままに生き、人々を恐怖に陥れたので、
警察が何千人も集まって、男を捕まえて木に縛りつけ、野ざらしにしました。
太陽がさんさんと照りつける真夏も、冷たい雨が降る秋も、雪に埋もれる冬も、
男は警察に監視されながら、飲まず食わずのまま、野ざらしで生き続けました。
男 「あ~、なんてこった。腹が空き過ぎて、もう何も食いたいとも思わねぇ。
女たちはオレに石を投げつけるばかりで、もう話したいとも思わねぇ。
毎日毎日頑丈な縄で縛り直されて、どこへ行きたいとも思わねぇ。
あれから何年経ったんだろう。
このまま生き続けることに何か意味があるのか。」
そこへ、ひとりの少年が通りかかりました。
少年 「やぁ、おじさん、久し振りだね。100年の寿命を楽しんでる?
人間界の話を聞きに来たよ。」
男 「おー。お前生きてたのか。あー。悪魔だから死なないのか。
いいとも。
今じゃオレに話しかけてくれるのはお前だけだ。
色んな話を聞かせてやるよ。」
男は、自分がまだ小さな頃から出会った全ての人たちについて順番に話し出しました。
ひとりひとりとの間に、たくさんの思い出がありました。
そしてそれはバカな人間たちではなく、
男を思ってわざと厳しいことを言ったり、男を信じた為に裏切られた人々の話でした。
男は来る日も来る日も話し続けました。
太陽がさんさんと照りつける真夏も、冷たい雨が降る秋も、雪に埋もれる冬も、
男は警察に監視されながら、飲まず食わずのまま。
毎日入れ替わる監視役の警察は、男が誰もいない荒野に向かって
延々と話し続けるのを見て、頭がどうにかなってしまったのだと思っていました。
悪魔の子供の姿は、男にしか視えなかったのです。
男 「最初に好きになった女は優しい女だった。
なのにオレはどうしてあんな酷いことをしてしまったんだろう。」
男は初めて後悔しました。
男 「・・・いや、そうじゃない。
おふくろが悪いんだ。おやじが悪いんだ。
オレをこんなふうにしたのはあいつらだ!」
少年 「おじさん、ボクは魂を集めに行くから、続きはまた今度聞かせてもらうよ。」
少年は一度、男の前から去りました。
それから数年が経って、少年が男のところに戻って来ました。
男 「おう、ボウズ。遅かったな。
あの時の続きを聞かせてやるよ。」
男はまた話し出しました。
太陽がさんさんと照りつける真夏も、冷たい雨が降る秋も、雪に埋もれる冬も、
男は警察に監視されながら、飲まず食わずのまま。
男 「皆クソヤローだ!どいつもこいつもバカばっかりで、やってられなかったよ。
でもひとりだけイイヤツもいた・・・。優しい男だった・・・。
なのにオレはどうしてあんな酷いことをしてしまったんだろう。」
男は悔やみました。
男 「もしかすると、みんなイイヤツだったのかも知れない・・・。
オレの心が、ひん曲がっていただけなのかも知れない・・・。
今まで・・・・・・・そんなふうに考えたことはなかった・・・・・・。
もしそんなふうに考えて人生を送っていたら
こんなことにはならなかったのかも知れない・・・。」
少年 「おじさん、ボクは魂を集めに行くから、続きはまた今度聞かせてもらうよ。」
少年は再び、男の前から去りました。
それから数年が経って、少年が男のところに戻って来ました。
男 「おう、ボウズ。よく来たな。背も伸びて、随分成長したじゃねぇか。
今じゃお前はオレの家族のようなものだから、嬉しいよ。
そんなに魂を集めるのが大変なのか?
オレの話は何かの役に立ってるのか?
体が自由に動けたら、少しは手伝ってやれるのになぁ。」
少年 「おじさん、100年の寿命はもう要らないと言ってくれれば、
新しい人生が待ってるよ。」
男 「そうだなぁ・・・。もう疲れたよ・・・。
新しい人生で家族と笑ったり、友達と楽しく酒を飲んだり、
誰かの役に立って、
死ぬ時に1人くらい、悲しんでくれるような人生を送りたいなぁ・・・。」
少年 「おじさんのお父さんとお母さんはまだ生きているよ。
おじさんを心配して、毎日泣いていたよ。」
男 「そうか、そうか・・・。」
男は声をあげて泣きました。
少年は、それを見て、男の魂を肉体から抜きました。
そして男は死んでしまいました。
少年と男の魂は、年老いた男の両親のところへ行って、
一日中男の心配ばかりしている姿を見ました。
男はその時初めて、" 親の愛を見る力 " を持ちました。
少年 「おじさん、ボクと神様のところへ行こう。」
男 「あぁ・・・・・・。どんな裁きでも受けてみせるよ。」
その時、悪魔の子供は天使に変わり、
男には、天から光り輝く梯子が降りてきました。
嘘つきで凶暴な男は 居住地域を追い出されました。
男は荒野の岩に腰かけて自分勝手な怒りに震えていました。
男を慰めるようにそっと咲いていた花を千切っては踏みつけ、
生きる為に食べ物を探していた昆虫を力いっぱい足で踏みつけて、
空に向かって呪いの言葉を吐きました。
そこに少年がひとり通りかかりました。
男 「おい、ボウズ。食べ物か金を出せ。
それと女のいる場所を教えろ。
でなきゃお前を食っちまうぞ。」
少年 「おじさん、ボクは悪魔だよ。
人間界の契約者を探しに行くところなんだ。」
男 「お~。それはちょうど良かった。
オレが世界中を旅した時に出会った
バカな人間の住所と名前を全部教えてやるよ。
それを聞けばお前は、腐るほどの魂を手に入れられるぜ。
でもそれを話すには100年はかかる。
先にオレの寿命を100年延ばしてくれ。」
少年 「いいよ。ホラ。」
悪魔の子は、男に魔法をかけて寿命を100年延ばしました。
男 「本当に延びたんだな?ありがよ。」
男はそう言うと、少年を殺して食べてしまいました。
男は100年の寿命が約束されたので、町へ戻って悪さの限りを尽くしました。
銃で撃たれても、死刑になっても、男は死にませんでした。
男は感情と欲望のままに生き、人々を恐怖に陥れたので、
警察が何千人も集まって、男を捕まえて木に縛りつけ、野ざらしにしました。
太陽がさんさんと照りつける真夏も、冷たい雨が降る秋も、雪に埋もれる冬も、
男は警察に監視されながら、飲まず食わずのまま、野ざらしで生き続けました。
男 「あ~、なんてこった。腹が空き過ぎて、もう何も食いたいとも思わねぇ。
女たちはオレに石を投げつけるばかりで、もう話したいとも思わねぇ。
毎日毎日頑丈な縄で縛り直されて、どこへ行きたいとも思わねぇ。
あれから何年経ったんだろう。
このまま生き続けることに何か意味があるのか。」
そこへ、ひとりの少年が通りかかりました。
少年 「やぁ、おじさん、久し振りだね。100年の寿命を楽しんでる?
人間界の話を聞きに来たよ。」
男 「おー。お前生きてたのか。あー。悪魔だから死なないのか。
いいとも。
今じゃオレに話しかけてくれるのはお前だけだ。
色んな話を聞かせてやるよ。」
男は、自分がまだ小さな頃から出会った全ての人たちについて順番に話し出しました。
ひとりひとりとの間に、たくさんの思い出がありました。
そしてそれはバカな人間たちではなく、
男を思ってわざと厳しいことを言ったり、男を信じた為に裏切られた人々の話でした。
男は来る日も来る日も話し続けました。
太陽がさんさんと照りつける真夏も、冷たい雨が降る秋も、雪に埋もれる冬も、
男は警察に監視されながら、飲まず食わずのまま。
毎日入れ替わる監視役の警察は、男が誰もいない荒野に向かって
延々と話し続けるのを見て、頭がどうにかなってしまったのだと思っていました。
悪魔の子供の姿は、男にしか視えなかったのです。
男 「最初に好きになった女は優しい女だった。
なのにオレはどうしてあんな酷いことをしてしまったんだろう。」
男は初めて後悔しました。
男 「・・・いや、そうじゃない。
おふくろが悪いんだ。おやじが悪いんだ。
オレをこんなふうにしたのはあいつらだ!」
少年 「おじさん、ボクは魂を集めに行くから、続きはまた今度聞かせてもらうよ。」
少年は一度、男の前から去りました。
それから数年が経って、少年が男のところに戻って来ました。
男 「おう、ボウズ。遅かったな。
あの時の続きを聞かせてやるよ。」
男はまた話し出しました。
太陽がさんさんと照りつける真夏も、冷たい雨が降る秋も、雪に埋もれる冬も、
男は警察に監視されながら、飲まず食わずのまま。
男 「皆クソヤローだ!どいつもこいつもバカばっかりで、やってられなかったよ。
でもひとりだけイイヤツもいた・・・。優しい男だった・・・。
なのにオレはどうしてあんな酷いことをしてしまったんだろう。」
男は悔やみました。
男 「もしかすると、みんなイイヤツだったのかも知れない・・・。
オレの心が、ひん曲がっていただけなのかも知れない・・・。
今まで・・・・・・・そんなふうに考えたことはなかった・・・・・・。
もしそんなふうに考えて人生を送っていたら
こんなことにはならなかったのかも知れない・・・。」
少年 「おじさん、ボクは魂を集めに行くから、続きはまた今度聞かせてもらうよ。」
少年は再び、男の前から去りました。
それから数年が経って、少年が男のところに戻って来ました。
男 「おう、ボウズ。よく来たな。背も伸びて、随分成長したじゃねぇか。
今じゃお前はオレの家族のようなものだから、嬉しいよ。
そんなに魂を集めるのが大変なのか?
オレの話は何かの役に立ってるのか?
体が自由に動けたら、少しは手伝ってやれるのになぁ。」
少年 「おじさん、100年の寿命はもう要らないと言ってくれれば、
新しい人生が待ってるよ。」
男 「そうだなぁ・・・。もう疲れたよ・・・。
新しい人生で家族と笑ったり、友達と楽しく酒を飲んだり、
誰かの役に立って、
死ぬ時に1人くらい、悲しんでくれるような人生を送りたいなぁ・・・。」
少年 「おじさんのお父さんとお母さんはまだ生きているよ。
おじさんを心配して、毎日泣いていたよ。」
男 「そうか、そうか・・・。」
男は声をあげて泣きました。
少年は、それを見て、男の魂を肉体から抜きました。
そして男は死んでしまいました。
少年と男の魂は、年老いた男の両親のところへ行って、
一日中男の心配ばかりしている姿を見ました。
男はその時初めて、" 親の愛を見る力 " を持ちました。
少年 「おじさん、ボクと神様のところへ行こう。」
男 「あぁ・・・・・・。どんな裁きでも受けてみせるよ。」
その時、悪魔の子供は天使に変わり、
男には、天から光り輝く梯子が降りてきました。