中村正直の「頑張れプロ野球」

ベテラン野球記者の本音ブログです。

石井ピンのやる気を見た

2008-02-18 19:23:50 | Weblog
 南郷、か。そう言えば、この間来たな。去年の10月中旬だったから、4カ月ほど前。クライマックスシリーズをにらんだ阪神の主力が「フェニックスリーグ」に出場するというので、飛んできたっけ。たった4カ月前のことでも、随分と昔のように感じられる。あのときは冷たい雨が降っていたが、今度は快晴。12球団キャンプ巡りの最後が、この南郷・西武。

 紅白戦の前にのぞいたブルペン。毎度毎度はじめにブルペンの話をかくのは、その都度言っているように、この場所こそが「プロの音」を一番感じられるからだ。中日からFAの人的補償で来た岡本がいた。中日と西武は、ユニホームの色彩がよく似ているので、あまり違和感はない。ただ、実に楽しげに見えた。移籍したてなのに、妙に和んでいる。42歳と若い渡辺新監督の明るいムードが、このあたりにも浸透しているのだろう。いいじゃないの。

 我々がブルペンに足を運ぶ前から、延々と投げ込んでいる男がいた。見覚えのある「ほんわかした」あの顔。間が抜けているのか、やる気がないのか、それとも…。いや、地顔なのだ、あの顔は。そう、コラムのタイトルにした石井ピンであります。えっ、ピンとこない?それは失敬。FAで入団したベテラン左腕・石井一久のことです。我々の間では「一」を「ピン」と呼ぶ慣習がありまして…。その左腕が、状況を設定し、1球1球丁寧に投げていた。

 直球にスライダー、カットボール、フォーク。投げていた球種はこれくらいだったと思うが、昔の「暴れん坊」のイメージはすっかり消え、技巧派の熟練の味がにじみ出ていた。内に外にボールの出し入れをしながら、想定の打者を抑えていく。受け手が「100球を越してからだいぶいい感じになってきたな」と声をかけると、あのやる気のない顔、いや、真剣な顔で「うん」とうなづく。結局150球で終わったのだが、横で見ていて楽しかった。

 石井一と言えば、阪神は去年苦い思い出がある。9月末のヤクルト戦。リーグ優勝を目前にした山場の8連戦の最初のカードがヤクルトで、あろうことかいきなり連敗。窮地に立たされた第3戦目、この石井一にトドメを刺されたのだった。今でも瞼に焼き付いている。「3番・野口」。岡田監督の大ばくちも実らず、老練な左腕に2安打完封負けを喫した。このシーズン限りでやめることになる古田前監督の怨念?の前に敗れ去り、虎は見事にキバを抜かれたのだった。

 その左腕が今年、ナベちゃん(渡辺監督)を助けようとしている。助けたってくれよ。頼むわ。我が同級生を男にしたってくれ。交流戦では別に見たくもないけど、同じリーグでは鬼神のように頑張ったって。

 7回戦の紅白戦を全部見て、宮崎に戻った。まだ契約を完了していないG・G佐藤は紅白戦にも出れず、一人室内でウエイトトレをしていたという。気の毒に…。これにて駆け足の12球団キャンプ巡りが終わった。さあ、次ぎは高知だ。虎のオープン戦を見てくる。