中村正直の「頑張れプロ野球」

ベテラン野球記者の本音ブログです。

中田は中田でも…

2008-02-04 21:40:36 | Weblog
 思わず、息を飲んだ。壮観な光景に…。向こうから、川上憲伸、岩瀬、そして中田。その左横に外国人のクリスがいて、テスト生・ネルソン、一番こっち側が小笠原。ここは北谷、落合中日のブルペン。我がタイガース(別に俺のものじゃないけどね)にとって、憎たらしい面々がズラリと顔を揃えて投げ込んでいる。音が全く違う。本物の音だ。憲伸が気合を入れて投げ込めば、岩瀬が負けじと捕手めがけて突っ込んでいく。その様子を、遠目から落合監督が表情一つ変えずに見ている。もう一度息を飲み、カラカラののどに唾を押し込んだ。

 沖縄に入って、初めて青空を見た。お陽さんを拝めた。ただ、南国特有の暑さはない。肌寒くはない、という程度だ。それでもこれまでに比べれば断然いい。これが阪神のキャンプであれば、と思ったが、向かうべきところは最大のライバル・落合竜の北谷。阪神は休日のため、当初から北谷に決めていた。で、到着すると、冒頭の光景なのである。

 初日に見た阪神のブルペンと何が違うかといえば、主力投手の「目」だ。初日と4日目という差はあるが、それでも川上や岩瀬の放つ目の力には、圧倒されそうになった。さすがにリーグの1、2を争う投手たちだ。1球1球ブルペン捕手に向かって投げていく姿には、他の投手にないものがある。長年一線で投げてきた自信と誇りだろうか。醸し出す雰囲気は、そこら辺の投手とわけが違う。安藤や福原にマネをしろよ、と言ったところで、無理な話。もちろん、ここから強弱をつけて調整をしていくのだが、現時点では、彼らに何の不安もない。そして、一番目についた男が中田だ。

 この日のブルペンで最も投げ込んだ男が中田だった。阪神ファンなら誰もが知っている虎キラー。よく正田前打撃コーチが「あいつの真っ直ぐはわかっていても打てん」と嘆いていたが、その真っ直ぐはさらに迫力を増したように見えた。軌道が素晴らしい。後から入ってきた中里(これも落合監督の期待の星)も相当速かったが、トータル的には断然中田の方が上。「無駄な四球をなくしたい」と課題を挙げているそうだが、あれだけの球威があれば、四球の1つや2つ屁でもない。

 おそらく、今年は中田を中心に回すのではないか。川上にもしものことがあったとしても、竜投はビクともしないだろう。岡本が西武に移籍したとはいえ、まだまだ駒はたくさんいる。テスト生・ネルソン。でかいぞ、ヤツは。まだ25歳で伸びしろもある。勝負所で精神的な脆さを出しそうなタイプに映ったが、乗せたら大変なことになる。そんな潜在能力を感じた。“フォークの神様”杉下茂氏が伝家の宝刀を教えていたが、余計なことせんといてほしい。ああいう若いのはすぐに覚えるんだから。

 打者の方は見なかった。みなくてもそこそこはわかる。しかし、竜は今年もてごわいぞ。ブルペンを見て嫌になった。それでもまだ朝倉や山井、久本が入ってなかったんだから…。頭上の青空が、何だか恨めしく感じた。