大工風の道

仮設住宅ってわけでもないけれど、
ま、しばらくここで様子みようっと。

閉館

2009年08月08日 | 見聞録
松阪の、とある「スーパー銭湯」の閉館に思う



午後から松阪市郊外の福祉施設の夏祭りのお手伝いということで、午前中の汗をとりあえず流しておこうと、昨年と同じようにこの銭湯に立ち寄った。

「あれ?」


8月31日で閉館…。

受付のおねえさんに「今後どこかの企業が引き継ぐとかも無いのですか?」と訊いても、「とくに聞いてません」とのことで、残念ながらホントに閉まってしまうみたいだ。

この銭湯に限らず、ある程度規模の大きな施設は、建物の老朽化が原因で維持していけないから廃業…というパターンが実に多い。
これらの施設はほとんどの場合、鉄筋コンクリート造、あるいは鉄骨造。
諸事情でこういう設計になってしまうのだろうが、どうにかならないもんか。
税法上の耐用年数ではなくて、実際何が長持ちするかという話になると、実は木造であったりもすると思う。
ちょいと話がそれたけど。

昔は町の片隅、いたるところに銭湯があった。
多くは木造で必要最小限の大きさで、夏、汗を流し、冬、温まるのには充分だった。
ほとんどの家に風呂が設置された今、各地で廃業の嵐が吹き、その数は激減した。
津市の「栄湯」、鈴鹿市の「松の湯」のことが記憶に新しい。
だけど、その後押しともなったもう1つの理由が、郊外のスーパー銭湯の開業。
町の小さな銭湯が300円~400円なのに対し、石鹸、シャンプー、など常備し、飲食施設を併設し大駐車場完備で500円強のスーパー銭湯は、確実に客を奪ったに違いない。

そして今、そのスーパー銭湯でさえ、経営難で廃業を迫られる。
背景には、天然温泉完備のさらに大きな入浴施設が近くにできたこともあるが、決定的なのは施設の維持管理ではないかと思う。

とかく、人は、大きな新しいものに飛びつこうとする習性があるようだ。
日本人は、循環型より、使い捨てを好むのだという話も聞いたことがある。
不景気だとか人はいうけれど、各地でどんどん新しい巨大施設が出来ていく現状。
(もちろん風呂に限らず)
この建物がまた耐用年数を過ぎるまでに、投資分を回収できなかった場合、廃業する羽目になる…。
それは、資本主義でものごとを考える場合だけど、もし別の視点で考えるとこうなる。

解体された「新建材の残骸」という、どうしようもないゴミが増える…。

そして、小さな地域で成り立っていた「暮らしのバランス」が、最終的に崩れてしまい、取り戻せなくなる。
短絡的な資本主義の考えが、町を廃墟にしてしまうことだってあるのだ。



風呂からあがり、軽バンに乗り込んだ。
窓全開にして・・・。

多くの業界のひとは、出張となるとビジネスホテルなんぞを利用するのだろうけれど、私らみたいな、「3K」と言われる者は、もっぱら空き家をあてがってもらったり、製材所の休憩所に泊まらせてもらったりする。
車の中で寝ることだってよくある話。
そんな人間が、仕事先の町で汗を流すのに、立派な施設はいらない。路地の裏にひっそりと佇む小さな銭湯で充分なんだ。

やりきれない思いで、福祉施設へ向かった。
とても大きな、ピカピカの「立派」な施設へ。