備忘録

舞台の感想を書いています。(ネタばれ有り)Twitterはdacho115。

『PHANTOM 語られざりし物語』

2011-06-26 15:14:27 | 国内ストプレ
オープニングで、ALWの"POTO"のサビ部分をスローにしたようなフレーズが流れる。ただ、フルートの様な音色のため、かなり不協和音。そして、口元だけが見えるフルフェイスタイプの仮面を付けてファントム登場。一番の注目点は口ヒゲ有り。

"産み落とし者"
エリック出産後、マドレーヌがベッドで寝ている処から物語は始まる。この時点で、シャルルとは死に別れ、神父がマドレーヌ親子に節介を焼く。しかし、ある時、エリックが大事にしていた犬を村人に殺された事で逆上するエリック。その、エリックの二面性から悪魔払いをするものの、神父はこの2人に寄らなくなる。そして、母親にも別れを告げ、家を出るまでが一部。
"産み落とされし者"
母と別れを告げ、家を出たエリックにジプシー達が現れ、その一味に捉えられ、見世物として扱われる、エリック。最初はその容姿を売り物にしていたが天使の歌声を利用した腹話術で人気を呼ぶ。また、最後には仮面を取るのだが、その瞬間に客席に強い照明を当てるのだが、ジプシーの音楽とあいまって効果的。目眩ましの処方としてはありきたりだが。そして、調教主に襲われそうになり、逃げるまでが二部。
"死に逝く者"
スペインから逃げてきて、ローマの石切場にいたエリック。そこで、建築家のジョヴァンニと出会う。エリックの建築家としての才能を知り、内弟子として育てる。そんななか、ジョヴァンニの娘・ルチアーナが帰ってくる。そして、エリックに惹かれるが、会うと冷たい態度を取ってしまう。また、そのことでストレスが貯まるエリック。ある日、エリックの仮面の下の素顔のことを聞いたルチアーナは、仮面を取るように命じる。屋上庭園で作業していたエリックはジョヴァンニからも言われ(この関係を終わらせるために)仮面を取るが、そのショックから誤って屋上から落ちてしまうルチアーナ。そして、ジョヴァンニの元から去るまでが三部。

そして、パリ・オペラ座。
オープニングと同じ格好のエリック。何も希望を見いだせないエリックの元にある女性が現れる。エリックが呼びかけるその名は


『クリスティーヌ』


to be continued(の映像字幕)


山本@エリック。
少年時代(7歳)から演じているのに違和感なし。声質的に井上芳雄氏に似ているが、それが作った声なのかが謎。
青木@マドレーヌ。
冒頭から声を作らず、地に近い声で演じる。なので、女形として観るには違和感があったが、ヒステリー持ちな役としてはあんなモノか。
関戸@マリー。
コチラは女形として観るには、申し分なし。マドレーヌでも観たいが、静かな役、出番の少なさ故か?
曽世@ジョバンニ。
今回の一番の収穫。かなり他役で観てみたい。G2作品で既に観ているのだが、記憶になし。

松下@ルチアーナ。
若干、クセのあるルチアーナを好演。女形として観るにはかなり無理があるのに、"エリックに惹かれているルチアーナ"と見えてしまう演技が怖ろしい。ただ、ツンデレのツン要素が強すぎる。エリックの才能を認め、話をしようとする"デレ"要素が弱い。父親の前でのみ正直になれるのに、その父親にも疎まれる(と思い込む)微妙な心情など、元々、分かりやすい役なのかも。


初Studio Life。女形に関しては、"花組芝居"の加納氏、篠井氏、植本氏辺りの水準を期待していたため、ちょっと残念。ただ、本編では全く気づかなかったのに、カテコで登場した及川氏の村娘役が怖ろしくハマっていたので、及川@マドレーヌを観たい衝動に。

それでも、作品の持つ世界観がこの劇団には合っている気がする。なので、萩尾作品、ドラキュラ系なんかは一度観たい。

音楽に『英国王のスピーチ』のサントラから引用していたような。スタッフに音楽が居ないので、基本、既成作品だとは思うが冒頭の曲が気になる。また、途中で聞き覚えがある曲があったのでそちらも。多分、"阿佐スパ"かケラ作品で聞いたか?

そして、チラシにはキャストで河内氏の名前が入っていたが、公演では藤原氏っぽい。というか、冒頭のファントム役者が誰なのか気になる。多分、藤原氏だとは思うが。
そして、『ファントムに口ヒゲはアリなのか?』が一番のツッコミ処。

一幕にひたすら希望がなく、このまま暗鬱とした話が続くのかと思ったら、二幕のジョバンニ登場で、不器用な疑似父子路線に。そのホノボノとした過程や、肺病を患うジョバンニの、死によって別れが訪れるのかと思いきや、エリックの立ち去りで、終わる関係。そして、最後のクリスティーヌの登場の仕方がかなり鳥肌な演出だった。

来年の秋にサブタイトル『クリスティーヌのキス』で続編を上演予定。エリックが誕生日に欲しがった2つキスにかけてのタイトル?
クリスティーヌも男性が演じるため、"え~"という感覚になるだろうが観たい。そして、そちらのファントムも口ヒゲ有りなのか?


以下、美術・映像について。


※新演出版『レミゼ』の演出についてもネタバレあるので、注意。


開幕前の紗幕に、五番ボックスをメインにしたオペラ座の客席とALWの"Red Deth(マスカレード時のファントム衣装)"風ドクロ、切り裂かれた赤い幕が中央に配置。
と、今回の本編と全く関係無い構図。

場面転換時に、ボッシュヴィルの風景(エリックの故郷)をスライドで投影。この手法はこの後も続き、二部ではジプシーが住む幌馬車、三部ではローマの街並みに。

特に、三部に幾つか登場するローマの街並みは、それまでに登場する絵と対照的で、二幕のエリックの希望に満ちた生活(そして、最後にくる悲劇との対比)を表現?
絵自体が油絵風のぼやけた輪郭で描かれていたため、どのシーンでもかなり雰囲気は出ている。この辺が日本の舞台における映像演出との違いか?(小劇場か大劇場かの違いもあるが、LEDで遠くの客席までハッキリ見せるのではない)

そのスライドを投影する板が透けているのか、時々、その裏手を使っても芝居有り。


三幕では、エリックが暮らす地下室から屋上庭園への場面転換が印象的。下から上と背景が上がっていく。そのタイミングで、スタッフが椅子・机を片付けるため、それが見えてしまい、若干邪魔。
この辺は新演出『レミゼ』のバリケードから下水道に移るシーンに似ている。下から上と逆だが。
そして、ルチアーナの落下シーンでも、スライドで上から下に表現。『エリザベート』のシシィが木から落ちる演出に似ていたが、あれよりもスピーディー。

新演出『レミゼ』で港町から馬車暴走シーンに移る際のスピーディーさなど、この手の演出には効果的な背景。

演出家がバービカンでの新演出『レミゼ』を観て、印象に残ったのが、下水道のシーンと言っていたので、上から下と下から上の2パターンで採用したか?


ただ、残念ながら新演出『レミゼ』でジャベールの自殺に用いられた上から下でなく、手前から奥に落ちていく(バックにセーヌ川の濁流の映像)手法は無し。これは後編のシャンデリア落下に期待したい。(原作にその描写があるかは不明だが)

『レミゼ』も観ている人でこの公演の感想を書いているブログを幾つか読んだが、ジャベールの自殺をこの上から下への映像による表現になるのでは?想像している人が結構いるので、その辺は訂正したい。


イメージ画として、パンフの表紙がオペラ座。ただし、エリックが描いた様になっており、彼の手形も付いているのだが、その絵がかなり良い。本編では勿論使われなかったが、これも後編には使用されると思うので、こちらも期待。

秋にイギリスで行われる『オペラ座の怪人』25周年コンサートの美術もこの方なので、オリジナルでのシャンデリア落下の表現方法が大変気になる。

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8 コメント

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ファントム (SH)
2011-06-30 03:48:01
え、POTO25th記念コンサートの美術は日本の方なのですか?このコンサート、もうとっくに詳細が分かっていてもよい筈なのに、まだ何も出てません。ちなみに、POTOの国内ツアー版のオーディションはもう始まっているようです。

とにかく、詳しい報告をありがとうございました。この原作が大好きなので、なかなか良い舞台になったみたいでうれしいです。2部も楽しみですね。

口ひげは、、、まあありでしょうか?でも顔が崩れているのを気にしている人が何故口髭を?

ところで、ツンデレって何でしたっけ?
返信する
SH様 (dacho)
2011-06-30 04:37:08
この作品、オフオフシアターながら、美術にMATT KINLEY、照明にNICK SIMMONSを英国からよんでます。
前者はO2の25周年レミコンの美術、後者は『LND』の照明と紹介され、パンフの対談で、25周年『POTO』コンサートの美術も担当するとありました。
とりあえず、
http://www.westendtheatre.com/13660/news/phantom-of-the-opera-25th-anniversary-celebrations-to-be-staged-at-the-royal-albert-hall/
で、場所とファントム役者が決まっているコンサートですが、行けそうもないので、映像化に期待してます。

口ヒゲのあるファントムというビジュアルがあまりに想定外だったので、つい。でも、なかなかそのビジュアルが良かったので、続編もその設定が残っていると嬉しいです。

ツンデレ。人前ではツンツン(怒る)、2人だけではデレデレ(甘えん坊)という恋愛形態ですかね。

なのですが、あまりにルチアーナが癇癪持ちで、エリックがルチアーナの恋心に気づかない(?)設定でした。
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Unknown (yukitsuri)
2011-07-04 22:20:46
この間教えていただいた男芝居&ヒゲファントムとはこれのことですか(^^) レポ、楽しく拝見しました。

白い仮面の下に黒いヒゲ… ネタ? いやいや効果的なんでしょう。

物語はどこかで見たような。原作から取っているんですね? 続編は、オペラ座の 「切り穴」 駆使の神出鬼没ありか。舞台でどう表現するか楽しみですね。
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yukitsuri 様 (dacho)
2011-07-06 12:36:07
調べたら、他役のダブルキャスト役者で
登板日でない方が怪人役をやってるとか。

本役がヒゲ有りな役なため、そのため?

原作はスーザン・ケイですが、
ファントムの時点でガストンルルーの二次創作ですかね。
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Unknown (yukitsuri)
2011-07-07 00:22:15
あ、そういえばイェストンのファントムですね(^_^;A
ALWの怪人だったら可愛げがありすぎるわな。
リリカルなケイの2次創作もけっこう好きでした♪
ヒゲの本役とダブルというのは、ムッシュー**と?
おやまなクリスティーヌが想像できませんが(笑) 
レポよろしくお願いします (自分で見れば??)
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yukitsuri様 (dacho)
2011-07-07 23:49:22
ケイの原作を読んだことがあるのですか!

自分はイェストンのファントム(大沢ファントム?)も観たことないし、
今回の原作、スーザンケイのファントムも読んだことがないので。


って、本家のガストンルルーも蛇足のファントム『マンハッタンの怪人』も読んだことはないのですが…。


多分、今夏は南半球まで、蛇足のファントムを観に行きそうなので、復習がてらフォーサイスを読もうかと計画中。

果たして、それまでに読み終わるのやら(笑)
返信する
こんにちは! (さとたま)
2015-09-28 15:50:54
すみません、超バタバタしてて、ちゃんと読み込むの遅くなってしまいました。

何しろチラシだけだとまったく想像できなかったのですが、師匠のおかげでだいぶどんなものか理解できた気がします。

>作品の持つ世界観がこの劇団には合っている気がする
これを読んで、あ、なるほど!耽美系というか、独特の世界観の劇団さんなのだなあと。何しろ男が女を演じるというのは、一瞬「え・・・」とドンビキしてしまう部分があるのですが、よく考えたら宝塚だって女性が男ですし、世界観がぴったりならばそこまで違和感はないものなのかもしれないですね。おっしゃるとおり、ドラキュラとかジキル&ハイドなど見てみたいです。

それに、舞台美術がすごそうですね!チケットもそんなに高くないし、検討してみようかなあ・・・
返信する
さとたま様 (dacho)
2015-09-29 03:19:23
あ、単に、どういう話かを、紹介したかっただけで。
前編に関していえば、クリスティーヌ、居ないし。

でも、女性→男性は問題なくとも、
女性→男性というのは大きな壁が有りますよね。
歌舞伎みたいに前提が有れば別ですが、
やはり、この劇団でも役者によっては違和感も。

また、前後編の2部構成なので、
チケット代は二倍と考えてほうが(笑)
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