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東野圭吾『怪笑小説』『毒笑小説』どぉですか~??!!

2006-10-19 17:54:18 | 本・コミック・かってに配役
怪笑小説
東野 圭吾
集英社
毒笑小説
東野 圭吾
集英社
う~ん,どぉでしょう~?!。
確かに,ブラックユーモアというか,毒の効いた話,ひねりのきいた話,風刺の効いた話が詰め込まれた短編集で,決してクオリティが低いわけではないのだけれど,タイトルに「笑」ってつけているせいで,かなり損をしている気がする。
「毒笑」の巻末に東野氏と京極夏彦氏の対談が載っていて,笑わせる小説の魅力と怖さ(苦労する割にミステリーに比べて低く見られているし,ハズしたときのダメージは計り知れないなど)が語られてますけど,その中で本人も認めているように,収録作品のいくつかは,最初から笑う所がない。「自分ではすごい笑いのつもりで書いたんですよ。ところが書き上げて読んでみたら切ない話になってしまった」ってヲイ。
「ユーモア小説」という呼び名が嫌いだとも語っておられますが,確かに,よいジャンル名をつけないと非常に居心地の悪い小説群ということになってしまいますねぇ…。強いて名付けるなら「モッキング(嘲り)小説」ってところか?自虐というか他虐というか,「登場人物に悪意を持って書いている」という,おバカへのツッコミ精神はすごく共感できます。


ちなみに僕の笑いのツボはどちらかというとオチそのものより
オチが読めた瞬間に「ププッ」とくるタイプなので,
> 「(おかしいな,10というボタンがあったと思ったが)
>  彼はあまり深く考えることをせず,1,0と押した」(ホームアローンじいさん)

> 「万一,この披露宴の最中に,××××××××××ったら
>  どうすればいいのでしょうか?」(花婿人形)※一部ネタバレにつき伏せ字


というわけで,各収録作品への辛口(になっちゃった)感想~~!!

■怪笑小説■
鬱積電車…そのオチのために“鬱積”を21pも読ませたんかい!
  ショートショートでやってくれ。
  僕は登場人物がストレスをためる話を読んで笑うって,あまりできないんです。
  ドリフ(特に仲本&長さんのコンビ)のコントでやってもらったら面白く見られるかな?

おっかけバアさん…強烈ッ!!破滅へ真っ逆さまに転落していくドキュメント
  みたいで僕にとって楽しい話ではないのですが,
  主人公のシゲ子ばあさんのパワーに圧倒されてぐいぐい引き込まれてしまいました。
  杉平健太郎って変な名前のスターだなと思ったら「杉良太郎+松平健」か。
  まさか21世紀に入ってマツケン大ブレークするとは著者も予想できまい。

一徹おやじ…おやじ,バカ!!
  笑わせるって,難しく考えなくても
  こういう単純にアホなキャラのアホな言動でいいんですよ。
  オチもスコーン!と決まって,みんな幸せ,ザマーミロと溜飲を下げました。

逆転同窓会…なんかいい話で終わったような気がするんですが
  著者は同窓生だからとタダで無理(急)な依頼をいくつも持ち込まれ
  嫌な思いを何度もしたそうで,この作品は勘違い人間の思考ぶりを
  晒すささやかな復讐だったのでしょうか。  

超たぬき理論…オチ(真相)は最初のシーンですぐわかるのですが,
  あらゆるUFOの証拠物件や証言をすべてタヌキで説明していく
  主人公・一平の秀才バカぶり,素晴らしい!喝采を挙げましたよ。
  
無人島大相撲中継…たしかに,確かにオチているんですが…。
  これもドリフに演じてもらわなければ。
  それか「めちゃイケ」ファミリーか?抗議でコーナー終了

しかばね台分譲住宅…そういうオチできたか!
  もうどうにも収拾がつきようがない凄まじい展開にもっていって
  そう落とすか。これはやられました。って,もはや日本じゃねーよw。

あるジーサンに線香を…まるっきりお笑いの要素のかけらもないじゃん!
  『アルジャーノンに花束を』のジーサン版。
  『世にも奇妙な物語』で実写化か?

動物家族…これもまぁ,露骨にひどい仕打ちを受ける少年の話。
  星新一というか『奇妙な物語』というか,ブラックファンタジー?
  こういう話はこういう路線だけで別にまとめればいいのに。

■毒笑小説■
誘拐天国…巻末対談で言われていた通り,長編でも映画でもいけそうな
  スケールの大きい話ですな。笑うというよりワクワクして読みました。

エンジェル…これまたスケールが大きい!
  一言で言えばクリオネをグレムリンにしたような話ですが,
  核の問題からゴミ問題・石油資源など環境問題をトータルにカバーして
  地球の歴史にまで思いを馳せられる,理系,それも生物は学士なので
  この話の完成度の高さはすごくよく分かる。圧倒されました。

手作りマダム…これもバカキャラの暴走話。
  しかし本人以外の奥さんやその家族は皆迷惑していて
  笑えるっちゃ笑えるけど読んでて息苦しい。
  それが,あれ?あれれ?お前ら一体どうしたの?て思ったらそういうオチか!
  マンガみたいなラストが目に浮かびましたよ。

マニュアル警察…まさに風刺!いい意味で笑えません。

ホームアローンじいさん…タイトルだけで,もう,勝ち!
  笑えないわけないじゃん。最高w。

花婿人形…こいつらもバカ!
  「一徹おやじ」の息子・飛勇馬の逆パターンで自立できなかった息子の悲劇。

女流作家…ブラックユーモア?ミステリーっぽいよね。

殺意取扱説明書…確かに滑稽な話だけど,もの悲しさが6割。
  そんでもってこのオチは…めでたしめでたし,なのか?

つぐない…「切ない話になってしまった」本当にそうだよ。
  なんか,手塚先生に『ブラック・ジャック』のエピソードとして
  料理してもらいたい話だなぁ。

栄光の証言…なんか,ある意味他人事じゃなくて身につまされるっす。
  やっぱ人間,注目されたいとか話を聞いて欲しいとかあるもんね。
  で,自分の勇み足に気付いたときのショックといったら…。

本格推理関連グッズ鑑定ショー…面白い。やるねぇ明智君。

誘拐電話網…ブラックではあるけど,ユーモアというには
  笑える形にこなれてない。憎むべき犯罪が憎らしいままなんですよね…。


 よく言えば一冊の中にバラエティに富んだ多様な作風の話が
盛りだくさんの短編集といえますけど,本気で笑わせたいなら
天丼・パターン化・いい意味のマンネリという要素は必要だと思います。
「安きに流れたくない」「いい意味で読者を裏切りたい」という
一流作家ならではのプライドが邪魔してるのかなぁ…。

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10年あまりも前の作品なんで,とやかく言うのもなんですが,
その後の「東野圭吾(笑)作品」を追っていきたいという気持ちは
かなり強いです(w)。

あの頃ぼくらはアホでした
東野圭吾(エッセー)
集英社
黒笑小説
東野 圭吾
集英社(2005/04)
「偉そうな顔をしていても、作家だって俗物根性丸出し!」「俗物作家東野がヤケクソで描く、文壇事情など13の黒い笑い」って,このアオリ最高w!これは絶対読まねば。
コメント
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