2010年、小学館発行。
表紙にあるタイトル+αを全部書くと・・・
患者だからわかる・患者の会がつくる「成人・小児ぜんそく」~素朴な疑問から治療法まで~
NPO法人日本アレルギー友の会著、総監修:宮本昭正、監修:坂本芳雄、勝沼俊雄
となります。にぎやかですね(笑)。
内容はタイトル通りで、患者の会がつくった喘息読本です。
小児科医の私の視点から見ると「患者さんと医師の橋渡し」の役割を担う良書。監修されている医師もアレルギー学会の重鎮~御意見番の先生方なので安心です。
喘息と診断された患者さんは、日々発作の不安に悩まされます。医師の指示通り薬を使っているのに症状がよくならないと更に不安が増します。そんなときに誰に相談したらよいか・・・そのような修羅場をくぐり抜けてきたベテラン喘息患者さん達(つまり「日本アレルギー友の会」)が受け止めてくれるととても心強いことでしょう。この会のような窓口があると助かる方がたくさんいると思います。
というわけで、悩める患者さんにはお勧めの1冊です。
友の会はその患者さんが住んでいる地域のアレルギー専門医を紹介もしてくれます。これは「日本アレルギー協会」という財団法人が作成した「患者相談協力専門医名簿」に基づいたものです(一応私の名前もあります)。
日本アレルギー協会関係では「アレルギー電話相談センター」というサービス(無料)もありますので、ご利用ください。
私の所にもドクターショッピングの果てに受診される患者さんがたまにいらっしゃいますが、その原因を考えるといろいろなパターンがあります;
1.医師の誤診
・・・ただし、時間経過と共に病気の本性が現れてくるので、最初に診た医師は気づかないこともあります。医師の世界では「後医は名医」というスラングがあります。
2.なんちゃってアレルギー科
・・・看板には「アレルギー科」と書いてありますが、アレルギーが専門ではない医師もいます。なぜこんなことが起こるかというと、日本のルールでは専門分野でなくても標榜するのは自由なのです。
専門医でもないのに「アレルギー科」を標榜して、旧態依然の治療をしている医師もゼロではありません。私が医師になった四半世紀前と現在を比較すると、喘息の治療も随分変わり進歩しましたので。
もちろん、専門分野ではないけど熱心に勉強して専門医以上に素晴らしい診療をしている医師もたくさんいらっしゃいますので、誤解無きよう。
ではどうやって見分けたらよいか・・・難しい・・・評判・口コミでしょうか。
3.患者さんが指示を守ってくれない
・・・処方された薬の吸入・内服をせず、環境整備にも熱心ではないタイプ。このような患者さんを近年「アドヒアランスが悪い」と呼ぶようになりました。
喘息という病気を理解して、家族が喫煙をやめ、室内犬を手放し、ステロイド吸入をしっかりやれば楽になるのに・・・と思っているといつの間にか来院しなくなります。おそらく「この医者もダメ」と決めつけて他の医者をまたショッピングしているのでしょう。
ここで、本の中から一部抜粋を(Q11:38ページ)。
Q:評判のよいお医者さんに行ったのですが、自分には合わないようです。こんな時はどうすればよいでしょうか。
A:・・・何人もの専門医を受診して「あそこもだめ、ここもだめ」という状態だとしたら、患者側の受診の仕方に問題はないでしょうか。・・・医師は言われたことを守らない患者さんに対して不信感を抱くこともあります。このような類のことで、医師に叱られたから相性が合わない、などということはないですか?
このような患者さんもいる一方で、医師の説明不足も棚に上げてはいけません。
私は発作止めの頓服では解決できない患者さんに予防薬として吸入ステロイドを処方していますが、この使い方にピンと来ない患者さんが多いですね。
発作止めは苦しくなったら内服・吸入すると楽になるのでわかりやすい。納得して使ってくれます。
でも吸入ステロイド使用してもすぐに効いた感じはありません。すると何となくサボりがち。
吸入ステロイドは調子の善し悪しにかかわらず毎日吸入するよう指示されますが、なぜ?
それは、喘息は発作が出ていないときも気管支に炎症がくすぶっているから。喘息患者さん自身、振り返ってみてください。ふだんから咳が出やすいでしょう?
その炎症を小さく小さくしておくと、悪化因子(風邪、疲れ、ストレス)におそわれてもひどい発作にならずに済むのです。それが吸入ステロイドの役割であり、効果です。ふだんの咳や痰も気にならなくなりますよ。
4.精神的要素が関与
・・・子どもでは少ないのですが、小学生以上では心理的・精神的要因により喘息症状が悪化する患者さんがいます。
症状がよくならないと訴えるので、仕方なく薬の数と量が増えてきます。それでも訴えは減ることなく、一言で云えば「手応えがない」患者さん。カルテを見返してみると、訴えているほど診察所見は悪くありません。
ピンと来ると、私は漢方薬を処方します。
漢方薬は複数の生薬を混ぜ合わせたものですが、症状を和らげる生薬の他に、必ずと言っていいほど気持ちを和らげる生薬も入っています。そのタイプの漢方薬をこのタイプの患者さんに使用すると、効きます。
今から約20年前、駆け出しの小児科医であった私は重症の喘息発作の男の子の主治医になりました。呼吸困難が強く、顔色が悪く、酸素吸入が必要でした。点滴・吸入など集中治療により数日の経過で改善に向かい、退院となりました。その後の外来通院の際、お母さんから「読んでみてください」と1冊のノートを渡されました。
それは「闘病日記」でした。
入院中は、苦しくて眠れない晩を過ごす患者自身のつらさ、それを側で見守るしかない家族の切ない気持ちが切々と綴られていました。退院後も「またいつあの発作が起こるのか」という不安に押しつぶされそうな日々。
その不安の深さを垣間見てショックを受けました。
医師から見ると、重症ではあったけど治療は成功して一段落という認識でしたが、患者家族の不安を受け止められていたかいうと、とても十分とは云えないと反省させられました。
重症の患者さんを診療するたび、この家族を思い出します。
※ 最後にひとつ注意点を。
「日本アレルギー友の会」は上述のように信頼できる組織ですが、似たような名前に「(全国)アトピー友の会」という団体がありますが、こちらは要注意。高額の温泉療法を扱うアトピービジネス系なのでお勧めできません。
表紙にあるタイトル+αを全部書くと・・・
患者だからわかる・患者の会がつくる「成人・小児ぜんそく」~素朴な疑問から治療法まで~
NPO法人日本アレルギー友の会著、総監修:宮本昭正、監修:坂本芳雄、勝沼俊雄
となります。にぎやかですね(笑)。
内容はタイトル通りで、患者の会がつくった喘息読本です。
小児科医の私の視点から見ると「患者さんと医師の橋渡し」の役割を担う良書。監修されている医師もアレルギー学会の重鎮~御意見番の先生方なので安心です。
喘息と診断された患者さんは、日々発作の不安に悩まされます。医師の指示通り薬を使っているのに症状がよくならないと更に不安が増します。そんなときに誰に相談したらよいか・・・そのような修羅場をくぐり抜けてきたベテラン喘息患者さん達(つまり「日本アレルギー友の会」)が受け止めてくれるととても心強いことでしょう。この会のような窓口があると助かる方がたくさんいると思います。
というわけで、悩める患者さんにはお勧めの1冊です。
友の会はその患者さんが住んでいる地域のアレルギー専門医を紹介もしてくれます。これは「日本アレルギー協会」という財団法人が作成した「患者相談協力専門医名簿」に基づいたものです(一応私の名前もあります)。
日本アレルギー協会関係では「アレルギー電話相談センター」というサービス(無料)もありますので、ご利用ください。
私の所にもドクターショッピングの果てに受診される患者さんがたまにいらっしゃいますが、その原因を考えるといろいろなパターンがあります;
1.医師の誤診
・・・ただし、時間経過と共に病気の本性が現れてくるので、最初に診た医師は気づかないこともあります。医師の世界では「後医は名医」というスラングがあります。
2.なんちゃってアレルギー科
・・・看板には「アレルギー科」と書いてありますが、アレルギーが専門ではない医師もいます。なぜこんなことが起こるかというと、日本のルールでは専門分野でなくても標榜するのは自由なのです。
専門医でもないのに「アレルギー科」を標榜して、旧態依然の治療をしている医師もゼロではありません。私が医師になった四半世紀前と現在を比較すると、喘息の治療も随分変わり進歩しましたので。
もちろん、専門分野ではないけど熱心に勉強して専門医以上に素晴らしい診療をしている医師もたくさんいらっしゃいますので、誤解無きよう。
ではどうやって見分けたらよいか・・・難しい・・・評判・口コミでしょうか。
3.患者さんが指示を守ってくれない
・・・処方された薬の吸入・内服をせず、環境整備にも熱心ではないタイプ。このような患者さんを近年「アドヒアランスが悪い」と呼ぶようになりました。
喘息という病気を理解して、家族が喫煙をやめ、室内犬を手放し、ステロイド吸入をしっかりやれば楽になるのに・・・と思っているといつの間にか来院しなくなります。おそらく「この医者もダメ」と決めつけて他の医者をまたショッピングしているのでしょう。
ここで、本の中から一部抜粋を(Q11:38ページ)。
Q:評判のよいお医者さんに行ったのですが、自分には合わないようです。こんな時はどうすればよいでしょうか。
A:・・・何人もの専門医を受診して「あそこもだめ、ここもだめ」という状態だとしたら、患者側の受診の仕方に問題はないでしょうか。・・・医師は言われたことを守らない患者さんに対して不信感を抱くこともあります。このような類のことで、医師に叱られたから相性が合わない、などということはないですか?
このような患者さんもいる一方で、医師の説明不足も棚に上げてはいけません。
私は発作止めの頓服では解決できない患者さんに予防薬として吸入ステロイドを処方していますが、この使い方にピンと来ない患者さんが多いですね。
発作止めは苦しくなったら内服・吸入すると楽になるのでわかりやすい。納得して使ってくれます。
でも吸入ステロイド使用してもすぐに効いた感じはありません。すると何となくサボりがち。
吸入ステロイドは調子の善し悪しにかかわらず毎日吸入するよう指示されますが、なぜ?
それは、喘息は発作が出ていないときも気管支に炎症がくすぶっているから。喘息患者さん自身、振り返ってみてください。ふだんから咳が出やすいでしょう?
その炎症を小さく小さくしておくと、悪化因子(風邪、疲れ、ストレス)におそわれてもひどい発作にならずに済むのです。それが吸入ステロイドの役割であり、効果です。ふだんの咳や痰も気にならなくなりますよ。
4.精神的要素が関与
・・・子どもでは少ないのですが、小学生以上では心理的・精神的要因により喘息症状が悪化する患者さんがいます。
症状がよくならないと訴えるので、仕方なく薬の数と量が増えてきます。それでも訴えは減ることなく、一言で云えば「手応えがない」患者さん。カルテを見返してみると、訴えているほど診察所見は悪くありません。
ピンと来ると、私は漢方薬を処方します。
漢方薬は複数の生薬を混ぜ合わせたものですが、症状を和らげる生薬の他に、必ずと言っていいほど気持ちを和らげる生薬も入っています。そのタイプの漢方薬をこのタイプの患者さんに使用すると、効きます。
今から約20年前、駆け出しの小児科医であった私は重症の喘息発作の男の子の主治医になりました。呼吸困難が強く、顔色が悪く、酸素吸入が必要でした。点滴・吸入など集中治療により数日の経過で改善に向かい、退院となりました。その後の外来通院の際、お母さんから「読んでみてください」と1冊のノートを渡されました。
それは「闘病日記」でした。
入院中は、苦しくて眠れない晩を過ごす患者自身のつらさ、それを側で見守るしかない家族の切ない気持ちが切々と綴られていました。退院後も「またいつあの発作が起こるのか」という不安に押しつぶされそうな日々。
その不安の深さを垣間見てショックを受けました。
医師から見ると、重症ではあったけど治療は成功して一段落という認識でしたが、患者家族の不安を受け止められていたかいうと、とても十分とは云えないと反省させられました。
重症の患者さんを診療するたび、この家族を思い出します。
※ 最後にひとつ注意点を。
「日本アレルギー友の会」は上述のように信頼できる組織ですが、似たような名前に「(全国)アトピー友の会」という団体がありますが、こちらは要注意。高額の温泉療法を扱うアトピービジネス系なのでお勧めできません。