小児アレルギー科医の視線

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敵を知る〜新型コロナウイルスを見つめ直す〜

2022年03月19日 08時05分23秒 | 新型コロナ
新型コロナウイルスが登場して2年が経ちました。
その間、この新しいウイルスに世界中が翻弄され続けています。

今までにわかった特徴として、

・感染力が強い
・変異を続ける
・症状に特徴がある(嗅覚・味覚障害、ブレインフォグ等)
・高齢者が重症化しやすい

などが判明しています。

私は、人類の発達、文明社会構築の源泉となった、
“コミュニケーションを介しての感染”
が排除できないでいる最大の理由だと感じています。

「コミュニケーションをやめろ」
と指示することは、
「人間活動をやめろ」
と同じことですから、なかなか守れませんよね。

最近は、医療逼迫や毎日の陽性者数、ワクチン接種率などの
“数字”で判断する傾向がありますが、

これまでに解明されたこと、今も専門家を悩ませる謎

という記事を参考に、ここで今一度、
ウイルスそのものを見つめてみたいと思います。

■ 新型コロナウイルスは人畜共通感染症である。
・・・野生動物がすむ範囲にまで人間が活動範囲を広げれば、新たな病原体が動物から人間に飛び移り、致命的な人獣共通感染症が発生する可能性が高くなる。・・・野生動物に由来する新規感染症は、1940年から2004年の間に著しく増加してきたという。

■ コロナウイルスによるパンデミックは3回目
・・・専門家の多くがずっと懸念してきた対象はインフルエンザウイルスであり、コロナウイルスがこれほどの惨事を引き起こすとは、必ずしも予想していなかった。
 潮目が変わったのが、2002年から2004年にかけて発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイク(集団感染)だった。これにより29カ国で8000人以上が感染し、774人が死亡した。その後、2012年に発生した中東呼吸器症候群(MERS)のアウトブレイクでは、37カ国で2000人以上が感染した。このウイルスによる死者は、これまでに900人近くに達している。

■ 新型コロナウイルスの特徴〜変異(成長?)し続けるウイルス〜
・・・新型コロナウイルスはそれまでのコロナウイルスよりも感染スピードが速い。・・・新型コロナウイルスは封じ込めるのが難しい。無症状患者が多いため、人は自分でもそうと知らないうちにウイルスを広めてしまうからだ。
 そのうえ、新型コロナウイルスは予想以上にすばやく遺伝子の変異を獲得し、進化を遂げた。・・・アルファ株(2020年9月に英国で検出された最初の「懸念される変異株(VOC)」)の出現だ。アルファ株では、従来の新型コロナウイルス株からの遺伝子変異が少なくとも23カ所あり、人間の細胞と結合するスパイクタンパク質のアミノ酸が8カ所も置き換わっており、科学者たちをひどく驚かせた。・・・これだけの変異を備えたアルファ株は、従来株よりも50%感染を広げやすくなった。
 次の変異株であるベータは、そのおよそ1カ月後に南アフリカで最初に確認され、同じくVOCとされた。この株のスパイクタンパク質には8カ所の変異があり、そのうちのいくつかは、ウイルスが体の免疫防御を逃れるのに役立つものだった。
 2021年1月に現れたガンマ株では、特徴となった21カ所の変異のうち、10カ所がスパイクタンパク質で起きていた。その一部は、ガンマ株の感染を広げやすくし、すでに新型コロナウイルス感染症にかかった人に再び感染することができた。
・・・
 次にやってきたのが、特に危険で感染力の高いデルタ株だ。これはまずインドで確認された後、2021年5月にVOCに指定された。2021年末には、ほぼすべての国でデルタ株が支配的となった。その独特の変異の組み合わせ(計13カ所、うちスパイクに7カ所)のおかげで、デルタ株はオリジナルの株に比べて感染力が2倍で、感染期間は長くなり、感染者の体内で1000倍もの量のウイルスを産生するようになった。
・・・
 ところがその後、デルタ株の2倍から4倍の感染力を持つオミクロン株が、世界の多くの地域でまたたく間に取って代わった。2021年11月に初めて確認されたオミクロンは、異常なほど多くの変異を持ち(計50カ所、うち少なくとも30カ所がスパイクタンパク質)、その一部のおかげで、これまでに登場したどの変異株よりもすぐれた抗体回避能力を備えている。

■ 免疫不全者の体内で生き続けて変異する新型コロナウイルス
・・・突然変異の数が飛躍的に増えた理由としてとくに有力なものに、新型コロナウイルスは、免疫系がそこなわれた人々の体内で長期間進化できたという説がある。
 過去1年の間に、科学者たちは、新型コロナウイルスへの感染が数カ月から1年近くにわたって続いた、がん患者およびHIVの患者を確認している。こうした患者は免疫系が抑制されているため、ウイルスは長期間そこにとどまり、複製と変異を繰り返せた。
 グプタ氏は、101日間感染が続いたがん患者のサンプルから、そうした変異のひとつ(アルファ株にも見られるもの)を同定し、2021年2月に学術誌「ネイチャー」に発表した。6カ月間感染していた、南アフリカのHIV進行期の患者からは、ウイルスが体の免疫防御を逃れるのを助ける多数の変異が見つかり、2022年になって「Cell Host & Microbe」に報告された。

■ “呼吸器感染症”でくくれない新型コロナウイルスの多彩な症状
・・・新型コロナウイルスは体のさまざまな部分に感染できることが証明されており、科学者たちがさらに頭をひねる不可解な謎を生み出している。
 パンデミックの初期、医療関係者たちが気づいたのは、このウイルスが単に肺炎のような症状を引き起こすだけではないということだった。一部の入院患者には、心臓障害、血栓、神経学的合併症、腎臓や肝臓の障害などが見られた。最初の数カ月間で蓄積された研究は、ひとつの理由を示唆していた。
 新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する部位のACE2受容体と呼ばれるタンパク質が、いくつもの臓器や組織に存在するため、呼吸器以外にも感染していたのだ。また、血管の細胞や腎臓の細胞にもウイルスやその一部が、さらには脳の細胞にも少量のウイルスが見られたとの報告もあった。
・・・おそらくはウイルスが引き金となって、体の免疫系がサイトカインストームと呼ばれる過度に活発な状態となり、それがさまざまな臓器や組織に炎症と損傷を引き起こすものと思われる。異常な免疫反応が感染後も収まらずに、慢性疲労、動悸、霧がかかったように頭がぼんやりとする「ブレインフォグ」などの症状が長く続く場合もある。
・・・スーザン・レバイン氏はニューヨークの感染症専門医で、コロナ後遺症と重なるところもある慢性疲労症候群の治療と診断を専門としていた。レバイン氏は現在、毎週200人を診察しているが、その数はパンデミック前には60人だった。それまでの慢性疲労症候群とは異なり、コロナ後遺症は「猛烈な勢いで襲いかかる」と氏は述べている。「まるで体の中で竜巻が起きているようなものです。週に60時間働いていた人が、感染から1週間で1日中ベッドにいるようになるのですから」。

■ 人畜共通感染症は“終わらない”
・・・科学者たちは今、新型コロナウイルスが人間以外の動物に広がった後、再び人に移ってパンデミックを拡大させる可能性を懸念している。
・・・2020年8月に学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された研究により、一部の霊長類、シカ、クジラ、イルカを含む哺乳類が、新型コロナウイルス感染症に対して特に弱いことがわかった。ヒトと似たACE2受容体をもつ動物たちだった。
・・・新型コロナウイルスを拡散するリスクが最も高い動物は、家畜やペットなど、人と一緒に生活する動物であることが明らかになった。
 これまでのところ、新型コロナウイルスはペットのネコ、イヌ、フェレットに感染し、ミンクの農場を荒らし、動物園のトラ、ハイエナなどの動物にも広がっている。そのうえ新型コロナウイルスは、人間から飼育下にあるミンクに感染し、その後再びミンクから人間に感染することに成功している。
 またカナダでは、おそらくはオジロジカから人間に新型コロナウイルスが感染した可能性がある。

私がこの記事を読んで初めて知ったことは、
「ヒトから動物に感染して変異を経た後にまたヒトに戻ってくる可能性」
です。
ウイルス変異とワクチン開発競争は永遠に続きそうで、
めまいを覚えました。

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