小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

ワクチン陰謀論で金を稼ぐ人たち

2021年08月08日 14時09分35秒 | 予防接種
以前、「ワクチン副反応被害者はメディアにとって美味しいネタ」という文章を書きました。
新型コロナワクチンでも例に漏れず、市民の不安を煽って接種率を低下させる動きが散見されます。

相手にするだけ時間の無駄とは思いつつ、
何も言わないとそれを暗黙に認めていると取られかねないので、
「正しい知識を持って正しく判断しましょう」
というスタンスで書いてみます。

ワクチン陰謀論を煽って金に換えたい人々の思惑〜冷静さを欠いたアンチワクチン活動が根深い訳

上先生は、メディアにもよく顔を出す有名人ですが、歯に衣着せぬ発言でちょっとハラハラすることもあります。
ここでは、日本人がワクチンに不信感を抱きやすい理由として、政府への信頼がないことを挙げています;

“なぜ、日本でワクチンの信頼度が低いのか。それは、国家の信頼度が低いからだ。詳細は省くが、われわれは、国家の信頼度とワクチンの信頼度が相関することを、『ランセット』2020年1月5日号に発表した。国家の信頼度が低い国の多くが第2次世界大戦で、国土が戦場あるいは占領されていたことは示唆に富む。北欧諸国の国家への信頼度は高いが、バルト三国の信頼度は低いことなど、このような視点から考えれば納得がいく。”

戦争に負けた国はおしなべて政府への信頼が薄いのですね。
“お国のため”に死んでいった多くの若者・・・そのトラウマが残っているのでしょう。

“『ランセット・デジタルヘルス』の論考で興味深いのは、アンチワクチン運動の関係者を、ワクチンへの不信感を高めようとする活動家、起業家(ビジネスマン)、陰謀論者、SNSのコミュニティーに分類していることだ。ナチュラリストなど、信念をもってワクチンに反対する人はごく一部で、活動家・ビジネスマン・陰謀論者などが「道具」として活用し、それがSNSなどを通じて拡大していく。
この構造は日本も同じだ。「ワクチン」「コロナ」「危険」「政治家」でグーグル検索すれば、1180万件がヒットする(2021年07月25日時点)。その中には「ワクチンは殺人兵器」と主張する福井県議をはじめ、さまざまな主張が紹介されている。
・・・
アンチワクチン活動が、知名度をあげ、カネになるのは政治家だけでない。医師の中にも、ワクチンに反対する人がいる。その人たちにはさまざまな営利企業が接触する。
ボストン在住の内科医で、現在、日本に帰国して集団接種に従事している大西睦子医師は、「知人の編集者から、ワクチンの危険性を紹介する本を書きませんか。いま出せば、必ず売れる」とオファーされたそうだ。大西医師は多数の著書があり、世間から信頼が厚い医師だ。彼女がコロナワクチンの危険性を訴えれば、影響力は大きい。大西医師は、この提案を断ったが、著名な医師の中には、ワクチンの危険性を強調する人もいる。”

ワクチン反対本を医師や有名人に書かせて一儲けしようとしている「出版社」が黒幕の1人ですね。
これに影響されてワクチンを受けずに命を落とした人たちから訴訟が起こるかもしれません。

その解決法を探った論文も紹介しています。

“では、どうすればいいのか。世界では、こんなことにまで実証研究が進んでいる。5月24日、『米国医師会雑誌(JAMA)』は「信頼とワクチン接種、アメリカにおける10月14日から3月29日の経験」という論文を掲載した。興味深いのは、この論文の著者が、アイルランドとイギリスの医師たちであることだ。世界中がアメリカのアンチワクチン運動に注目していることがわかる。
・・・
しかしながら、論文の結論は、至極真っ当なものだった。論文では、当局がワクチンを適切な手続きを経て承認し、接種を粛々と進めることで、ワクチンへの信頼が醸成されたと結論づけている。”

割と地味な結論です。

しばらく前に「HPVワクチンを批判する記事を書きまくった新聞記者」の話を聞きましたが、医師や学会が声明を出してもメディアは取りあげにくい、もっとインパクトのある方法、たとえば「記者会見」を開くなどをして堂々と正論を展開すべきではないか、とコメントしているのが印象的でした。
でも「ワクチンは有効です、安全です、皆さん接種しましょう」という会見、インパクトないなあ。
尾身会長の「自粛しましょう」一点張りの会見のようになってしまいそう。

ホントはワクチン反対派とのガチンコ勝負が一番いいんだけど、科学データを信じない人たちとは建設的な議論にならないんですよね。

もう一つ記事を紹介します。

新型コロナ「反ワクチン本」は「言論の自由」なのか

イワケン先生は、ダイヤモンドプリンセス号に乗り込んで、その実情をネットで公開し、一躍“時の人”になりましたので皆さんご存知かと思われます。
一部“お騒がせな人物”という評価もありますが、発言していることは至極まっとうだと感じています。
気になった箇所を抜粋します;

“世の中にはかなり確信犯的に「ワクチンは怖い」「ワクチンは危ない」「ワクチンは効かない」とワクチンの有害性を主張し、接種しないほうがよいとアピールする人たちがいます。ありもしない情報をでっち上げたり、過度に危険をあおったりします。これがいわゆる「反ワクチン」派の人たちです。海外ではアンチバクサー(anti-vaxer、あるいはanti-vaxxer)と呼んでいます。
 アンチバクサーの歴史は長く、最古のワクチンである天然痘ワクチンの頃までさかのぼります。そして、現在も世界中にアンチバクサーがいて、たくさんの反ワクチン活動に従事しています。アンチバクサーは時間的にも空間的にも普遍的なのです。こうしたアンチバクサーたちは陰謀論を広めて、寄付を募り、多くの資金を得ています。”

う〜ん、やはりここでも「金儲けになるからワクチン反対活動をしている」と指摘していますね。

“主要なソーシャルメディアも反ワクチン活動には対策をとっています。ツイッター社はCOVID-19のワクチンに対する間違った情報や露骨な陰謀論を述べたツイート、COVID-19は存在しないといったフェイクな内容のツイートなどは削除すると公表しています。
 フェイスブックも反ワクチンについては投稿を削除するというルールを作っています。”

なるほど、そういえばトランプ元大統領もTwitterのアドレスを停止されました。

“こうした反ワクチン運動は、一部の確信犯的なデマゴーグが組織的に行っています。河野太郎行政改革担当相が自身のウェブサイトで述べたところによると、「TwitterとFacebookにあるワクチン関連のそういった誤った情報の65%はわずか12の個人と団体が引き起こしている」のです。”

やはり暗躍している組織があるようです。
しかし、日本では“半ワクチン”書籍は自由に販売されています。

“そんななか、書籍については、反ワクチンに対する規制がなく、放ったらかしになっているように見えます。科学的なデタラメを「フィクションである」と表明せずに平気で出版しますし、間違いを指摘しても知らん顔の出版社は少なくありません。
 そうした出版社の多くは確信犯的に「売れれば内容はどうだっていい」という態度を取り続けています。出版社が書籍の内容について厳しい自主規制を行うのは、いわゆる差別的表現やわいせつな表現に対する表現規制です。が、科学的事実に反するコンテンツに対する規制については、ほとんどの出版社は知らん顔、なのです。
 ツイッターやフェイスブックが課せられているような「事実に対する社会的責任」を、巨大企業GAFAの一員、アマゾン社は持つべきだとぼくは思います。”

出版社にとって「儲けること=社会的正義」というのが現実のようです。
私は以前(もう10年くらい前)、レクチャーの準備として「反ワクチン本」をいくつか読みましたが、そのあまりの偏見(自分が経験したことしか信じない、マイナス感のあるデータをひたすら誇張)ぶりに呆れて数冊で読むのを止めました。
当時から、内海聡氏と船瀬俊介氏は有名で筋金入りで、とにかく世の中の医療に関して“まず反対ありき”です。
ま、そういう人たちは“言論の自由”を盾に黙ることはありませんけどね。

イワケン先生は、解決策として「有害図書指定」を提案しています。

“そこで、提案したいのが、「一方的な禁止」処分に変わる、「有害図書」のような指定です。
・・・
 反ワクチンなコンテンツは、明らかに人の健康や生命を脅かします。どうせ指定するなら、こっちを先にするのが妥当な判断というものでしょう。
 だから、国や自治体はこういう反ワクチンな本を指定して、一般の人達が読む時に注意するよう、働きかけたらよいとぼくは思います。”

う〜ん、実現は難しいかなあ。




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