小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「食物アレルギーとアナフィラキシー」(海老澤元宏先生:ネット配信セミナー)

2018年02月16日 07時00分59秒 | 食物アレルギー
 近年多くなってきたネット配信セミナー。
 昨夜(2018.2.15)は食物アレルギーではご意見番の海老澤先生の講演がありました。

 一時期アレルギー系学会を席巻した「急速経口免疫療法」は影を潜め、現在は「より安全に、より少量から症状が出ない程度でゆっくり進める経口負荷試験」が主流になりつつあります。
 まあ、現場でずっと続けてきたスタンスにまた戻った、というのが私の印象です。

 海老沢先生の講演は何回も聞いているので、あまり目新しいことはありませんでしたが、知識を整理・確認するにはとても役立つ内容でした。

 ただ、栄養指導では「管理栄養士」、アナフィラキシーでは「マンパワーを集める」など、1人院長の開業医では無理なことが平気で出てくるのは相変わらず。
 重症以外の患者さんを多数診療している「開業医が出来る食物アレルギー診療ガイドライン」を作って欲しいものです。


***********<備忘録>************

・「食物アレルギー診療ガイドライン2016」の主旨は「“食べさせない”のではなく“食べさせる”にはどうしたらよいか?」である。

・食物アレルギーのリスク因子;
1.家族歴
2.秋冬生まれ(短い日光照射)
3.皮膚バリア機能の低下
4.環境中の食物アレルゲン
5.離乳食開始を遅らせること

・湿疹乳児に対する介入(PETIT研究);湿疹を治療してなくすことを前提条件とした場合、加熱卵を早期(生後6ヶ月)から少量開始し与えた方が卵アレルギーを予防できることが示された。
 生卵+より低年齢(生後6ヶ月未満)では、逆に感作を誘発するリスクがあるので注意すべし。

・今のところ早期接種開始で食物アレルギー発症予防の可能性のデータがあるのはピーナッツと卵だけである。

・食物経口負荷試験は、以前は「多数回&短い時間間隔」で行われてきたが、最近は「より少数回&60分間隔」が主流になりつつある。

・食物経口負荷試験の目的は、オールオアナッシング(食物アレルギーの克服)ではなく、微量摂取できるかどうかに焦点を当て、栄養食事指導をしてQOLを上げるべきである。

・経口免疫療法は副作用必発であり、一般診療として推奨できるレベルではなく、倫理委員会を通して研究レベルで行うべきである。

・「アナフィラキシーガイドライン」(日本アレルギー学会、2014)では重症度分類をグレード1-3に分類したが、5段階分類も存在する。


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