小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

新型コロナウイルスワクチンでわかってきたこと、まだわからないこと

2021年02月23日 07時56分20秒 | 予防接種
新型コロナワクチンの医療従事者への先行接種が始まったタイミングで、ワクチンの追加情報が矢継ぎ早に出てきました。

基本は2回接種で、有効率(発症阻止率)95%だが、1回接種でも90%有効
→ ワクチン不足で2回接種の間隔を開けても大丈夫かもしれない。
※ 英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社が開発したワクチンは、1回の接種でCOVID-19の予防効果が76%。

死亡率を98.9%下げる。
→ 実際に英国では80歳以上の死亡率が25%低下したと報告されている。

管理温度が「-15〜-25℃」でも2週間は使用可能。
→ 従来は-70℃での管理が必要だったが、上限2週間までは、一般医療機関の冷凍庫でも達成可能な温度でも可。

一方で、まだ不明な点は、

ワクチン効果持続期間
→ 変異株の出現も考慮すると、将来は季節性インフルエンザワクチンのように毎年接種することになるかもしれない。

感染力(人へうつすこと)への効果
→ 現在公表されている数字は「発症阻止効果」であり、「感染および他人への感染力」への効果はまだデータが出てこない。

変異株に対する有効性
イギリス変異株にはおそらく有効、南アフリカ、ブラジル変異株に対しては有効性低下が懸念されている。ただ、RNAウイルスは変異しやすい性質を有するので、今後も続々と変異株が登場することになるであろう。

小児に対する安全性(現在は16歳以上しかデータがない)

ADE(Antibody-Dependent Enhancement、抗体依存性免疫増強)の有無が不明
→ 現時点では問題ないというデータであるが、将来の変異株出現の際に問題になるかどうかは未知数。

等々。


ファイザー社製コロナワクチン、有効率は1回接種でも90%
  2回接種が基本の米ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンだが、1回の接種でもウイルスへの感染を大幅に低減できる可能性があることが、予備的な研究で示された。英イーストアングリア大学医学部のPaul Hunter氏らが、接種の進むイスラエルのデータを検討した結果、このワクチンでは1回目の接種から21日後の時点で約90%の有効率が得られたという。研究結果の詳細は、査読前の論文が公開されるプレプリントサーバーである「medRxiv」に2月3日掲載された。
 Hunter氏によると、ファイザー社製ワクチンは、より強く長い予防効果を得るために、1回目の接種から21日目以降に2回目を接種することになっている。しかし、英国では2回目の接種時期を1回目から12週後まで延長する決定が下された。この決定が意図するのは、より多くの人を早期にウイルスから保護し、重症患者や、入院および死亡者の総数を減らすということだが、1回の接種だけでは十分な免疫がつかないとして一部から批判も上がっていた。
・・・今回のHunter氏らの研究では、イスラエルの新型コロナワクチン接種に関する一次データを用いて、単回接種後、1日ごとの罹患率と接種後13〜24日目における有効性を推定した。
 その結果、COVID-19の罹患率は、8日目までに約2倍に増加した後、減少に転じ、21日目まで減少し続けた後、極めて低水準で推移する可能性のあることが明らかになった。8日目までの罹患率上昇の理由をHunter氏らは、「1回目の接種を終えた安心感で感染予防対策が甘くなったせいかもしれない」と推定している。一方、ワクチンの有効率は、接種後14日目までほぼゼロで、それ以降は徐々に上がり、21日目までに91%に達し、その後はその水準で横ばいになったという。
 こうした結果を受けてHunter氏らは、「今回の研究により、ワクチンは1回でも高い効果が得られるが、それを得るまでに最長21日かかる可能性のあることが分かった。2回目の接種をしない場合、1回目の接種後21日目以降、どのくらい免疫が持続するかは明らかになっていないが、英国で延長が決まった2回目の接種時期に相当するその後9週間のうちに大きく低下する可能性は低いと見ている」と話している。
 米ジョンズ・ホプキンス医療安全センターのAmesh Adalja氏は、「世界中で、新型コロナウイルスワクチンの2回接種が難航している中、単回接種のデータを得ることは極めて重要だ。従来の用量を守るのが理想だが、現状ではそれが最善とは言えない可能性がある」と述べている。なお、英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社が開発したワクチンは、1回の接種でCOVID-19の予防効果が76%とされている。


ファイザー製ワクチン、-25~-15度で保管可能 FDAに申請
2021年2月20日、AFPBB)より抜粋
【2月20日 AFP】独製薬ベンチャーのビオンテック(BioNTech)と米製薬大手ファイザー(Pfizer)は19日、共同開発した新型コロナウイルスワクチンが当初考えられていたよりも高い温度に耐えられることが試験で示されたと明らかにした。手間のかかる超低温での流通が簡素化できる可能性があるという。
 両社は米食品医薬品局(FDA)に対し、最長で2週間、マイナス25~マイナス15度での保管を認めるよう申請した。これは医薬品用の冷凍庫や冷蔵庫で一般的な温度だ。
 両社のワクチンは、現行のガイドラインでは使用の5日前までマイナス80~マイナス60度で保管しなければならず、輸送と保管に特別な超低温容器とドライアイスが必要だ。
 ファイザーのアルバート・ブーラ(Albert Bourla)最高経営責任者(CEO)は声明で、「新たな保管方法が承認されれば、薬局やワクチン接種施設はワクチン供給の管理がより柔軟にできるようになるだろう」と述べた。


ワクチン2回接種者「死亡は非接種より98.9%減少」イスラエル
2021年2月21日、NHK)より抜粋
 世界でも速いペースでワクチン接種が進むイスラエルの保健省は20日、ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスのワクチンを2回接種して2週間経過した場合、感染したあと死亡した人の数は、接種しなかった場合に比べて98.9%減少したと発表しました。
 イスラエルでは、これまでに国民の4割を超える421万人が1回目の接種を受け、このうち260万人以上はすでに2回目の接種も終えるなど、世界でも速いペースでワクチンの接種が進んでいます。
・・・接種しなかった人と2回接種した人を比べると、感染後に熱や呼吸器系の症状などが出た人の数は、2回目の接種から1週間後で96.9%、2週間後で98%、接種しなかった人に比べて少なかったということです。
 また、感染したあとに死亡した人の数は、2回目の接種から1週間後で94.5%、2週間後で98.9%、接種しなかった人に比べて少なかったということです。


コロナワクチン治験、子どもが参加 米で対象拡大 モデルナとファイザー、子どもに対する臨床試験を開始
 製薬会社や保健当局は新型コロナウイルスワクチン計画にこれまでほとんど含めていなかった重要な層に注目している。子どもたちだ。
 英国で接種が始まったワクチンを共同開発した米製薬大手ファイザーとドイツのビオンテックは9月、米国のコロンワクチン臨床試験の対象に初めて子どもを含めた。米バイオテクノロジー企業モデルナは10日、12~17歳の子ども向けに臨床試験を開始したことを明らかにした。同社のワクチンは大人への接種で有効性が示されている。英アストラゼネカも、米国で子どもの臨床試験を計画している。
 米国ではそれまで臨床試験の対象に子どもが含まれておらず、公衆衛生専門家は懸念を強めていた。専門家はワクチンが子どもに対しても安全なのか、あるいは投与量を調節する必要があるのかが分からないと指摘する。子どもは新型コロナで重症化したり死亡したりする可能性が大人より低いものの、ワクチンを接種すればウイルスの感染拡大を防止し、集団免疫が達成できると研究者は述べている。


■ コロナ「変異株」にワクチンは効くのか?
不明な点多いが、有効性示す報告も
 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンについて、現在までに得られている知見について国立感染症研究所は『新型コロナワクチンについて 第1版』として報告書にまとめ、2月16日に公表した。日本国内において、英国、南アフリカ、ブラジルで検出されたものと同じ型のSARS-CoV-2の変異株への感染例が報告されており、ワクチンの変異株への有効性に対して懸念が指摘されている。

英国変異株で二次感染率や死亡リスクの増加の可能性も
 SARS-CoV-2の変異株とは、遺伝情報の一部が変異したSARS-CoV-2であり、現時点までに英国、南アフリカ、ブラジルで検出された複数のタイプが確認されている。従来のSARS-CoV-2よりも感染力が強いとされ、ワクチンの有効性への懸念も指摘されている。
 現在までに報告されている変異株は、英国で昨年(2020年)12月上旬に急速なCOVID-19患者の増加を認めたことを契機に見つかった「VOC-202012/01」、南アフリカで同月上旬に急速なCOVID-19患者の増加が起きた際に検出された「501Y.V2」、日本で今年1月2日にブラジルから到着した渡航者から検出された「501Y.V3」。これらの変異株の感染者が世界各地から報告され、幾つかの国では変異株がかなりの割合を占めつつあり、世界的な流行が懸念されている。
 国立感染症研究所が2月12日に発表した『感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の新規変異株について(第6報)』によると、「VOC-202012/01、501Y.V2、501Y.V3のいずれも感染性・伝播のしやすさに影響があるとされるN501Y遺伝子を有し、特にVOC-202012/01は二次感染率や死亡リスクの増加の可能性が疫学データから示唆されている」と指摘。中でも501Y.V2については、「過去の感染によって得られた免疫や承認されているワクチンによって得られた免疫を回避する可能性が指摘されており、暫定結果ではあるが数社のワクチンでは有効性の低下を認めている」としている。

3種のSARS-CoV-2ワクチンの有効性に差
 報告書では、現在世界で承認または開発中の3種類のSARS-CoV-2ワクチンの特徴や有効性、SARS-CoV-2変異株などに対する有効性などを取り上げている。米・ファイザー/ビオンテック、米・モデルナ/米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が開発を進めているのはmRNAワクチン、英・アストラゼネカ/オックスフォード大学が開発を手掛けるのはウイルスベクターと呼ばれるワクチンで、タイプが異なる。
・・・
 日本では、ファイザーのコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(商品名コミナティ)が今年2月14日に特例承認となり、同月17日に医療従事者への接種が開始された。また、アストラゼネカから2月5日にワクチン(ワクチン名AZD1222)の承認申請が行われ、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で承認審査が行われている(モデルナ/NIAIDのワクチン名はmRNA-1273)。
 3種のワクチンはいずれも2回接種が原則で、2回接種した際の臨床試験における有効性(予防効果)は、ファイザーのワクチンで95.0%、アストラゼネカのAZD1222で70.4%、モデルナのmRNA-1273では94.1%であり、多少の差が見られる。

AZのワクチンは英国変異株に有効も、南ア変異株には効果なし
 今回公開された報告書では、世界的に流行が懸念されているSARS-CoV-2変異株に対するワクチンの有効性についても触れている。
 まず、英国変異株VOC-202012/01に対するワクチンの有効性への影響は「不明な点も多い」としつつ、アストラゼネカ/オックスフォード大が共同開発しているワクチンの第Ⅲ相臨床試験(実薬群4,236人、対照群4,270人)では、暫定的な野生株への予防効果は84.1%、変異株への予防効果は74.6%と、変異株への有効性が認められた。変異株による発症が実薬群で7人、プラセボ群では27人認められているが、「発症患者数が少なく、追跡期間は非常に短い」といった課題や、VOC-202012/01にE484K変異が加わった新たな変異株も報告されているという。
 一方、南アフリカの変異株501Y.V2に関しては、アストラゼネカ/オックスフォードがワクチンの有効性を検証するためウィットウォーターズランド大学が実施した臨床試験で、同変異株に対し有効性が示されなかったと発表された。間接的なエビデンスとして、501Y.V2と同じ変異をスパイク蛋白のレセプター結合部位に持つシュードタイプウイルスが、変異を持たないシュードタイプウイルスと比較して、ファイザー/ビオンテック、モデルナ/NIAIDのmRNAワクチンで誘導される中和抗体により、若干中和されにくいことを示唆する報告がある。さらに、501Y.V2に関する最大の懸念点である抗原性の変化に最も影響を与えているのは、スパイク蛋白のE484K変異であるとされている。
 製薬各社は501Y.V2のスパイク蛋白をもとにしたブースターワクチンの開発を開始または検討しているという。
 ブラジル由来の変異株501Y.V3については、感染性の増強が懸念される英国変異株VOC-202012/01や南アフリカ変異株501Y.V2と同様に、N501Y変異を認める他、抗原性の変化が懸念される501Y.V2と同様にE484K変異を認めるという。ただし現時点では、501Y.V3に対するワクチンの有効性に関する直接的なデータはないという。

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