日本の医療は医師のボランティア精神に頼ることで維持されてきました。
しかし医師を“労働者”として考えると、現状のエンドレス労働は労働基準法に明らかに違反しています。
人並み以上の体力がなければ、40歳以降病院勤務医を続けることは困難です。
私も身体を壊してドロップアウトした一人であり、開業することにより夜の勤務(眠れない当直)から解放されました。
しかし開業医となった現在も、診療レベルを維持するために日々医学知識のアップデートが欠かせません。
仕事の準備(医学関連の情報収集)に費やす時間は、毎日数時間。
これを労働時間に含むと判断すると、私は一生涯“過重労働”から逃れられないことになります。
産婦人科の現状を報告する記事を紹介します。
労働基準法を遵守すると、約7割の産婦人科施設でマンパワー不足となり運営不能となる、という当たり前すぎる内容です。
現場の医師から見ると「何を今更・・・」という感が無きにしも非ずですが、果たして厚労省がこれをどう解決していくのか、見物ではあります;
■ 労基法の遵守で約7割の施設が運営不能に 〜勤務シミュレーションに基づく試算
(2018年02月06日:メディカル・トリビューン)
日本産婦人科医会常務理事で日本医科大学教授の中井章人氏は、政府が進める働き方改革の一環として、医療機関における労働基準法(以下、労基法)を遵守することによって産婦人科勤務医の労働環境の改善が期待されると歓迎。その一方、現状のまま遵守すれば勤務医を抱える多くの施設で大幅な医師不足となり、68%の施設が運営できなくなる事態を招くとする勤務シミュレーションの結果を、日本産科婦人科学会が1月21日に東京都で開いた「拡大医療改革委員会」兼「産婦人科医療改革公開フォーラム」で指摘した。
◇ 施設の二極化が進行中
中井氏は冒頭、同医会が昨年(2017年)実施した施設情報調査における周産期医療の実態を紹介した。分娩取り扱い施設数および産科医師数の推移を見ると、いずれも一般病院と診療所で減少の一途をたどる一方、総合周産期母子医療センターおよび地域周産期母子医療センターでは増加していた。また、施設ごとの分娩数については一般病院で減少し、診療所ではわずかに減少。それに対し、両周産期センターでは増加傾向にあり、診療所と周産期センターの二極化が進んでいる。
◇ 宿直1.4回分、74時間が超過勤務
このような産科医療を取り巻く実態に関連し、これまで同学会および同医会は産婦人科勤務医の勤務条件の改善や医療再生などを提言してきた。
医師の宿日直勤務と労基法に関する厚生労働省労働基準局の通知(2005年)では、宿直は週1回(日直は月1回)を限度とし、病院の定時巡回などの軽度または短時間の業務に限るとしている。さらに、応急患者の診療または入院、患者の死亡、出産などといった昼間と同様の労働が常態化したものは許可していない。
しかし、同医会勤務医部会が行ったアンケート(2017年、暫定値)では、産婦人科医の平均宿直回数は1カ月の上限を上回る5.7回であることが分かった。
さらに1カ月の平均在院時間は295時間(休憩時間22時間含まず)と、労基法で定める176時間を上回り、宿直1.4回分、74時間が超過勤務となった。
◇ 遵守するなら16人必要
そこで中井氏は、労基法で定める宿日直の条件に基づき、分娩取り扱い施設で必要な勤務医数を試算した。
その結果、毎日1人で宿日直を担当する施設(1カ月当たりの宿直必要回数30~31回、日直必要回数8~10回)では、産科医8人の確保が求められた。総合周産期センターで毎日最低2人が宿日直を行う場合は16人が、非常勤医による宿日直と常勤医の自宅待機を行う一般病院では4人がそれぞれ必要であることが分かった。
ただし医師数には育児中の女性医師がを含まれており、教育・研修の時間や有給休暇、宿日直が1人体制の施設における緊急時の自宅待機者の呼び出しは除外されている。
同氏は国が定める基準を満たすには交替制勤務もありうるとし、1日3交代・各2人体制の勤務表を組んでみたところ、人数が足りず1カ月当たり4日間外来診療に医師を割り当てることができないことが想定された。そのため1日3交代制を導入し、労基法内の勤務時間とすると、外来、手術担当、病棟担当も含めて16人(有給休暇は含まず)の産科医が必要であるとした。
◇ 全国規模で医師数が多い施設から移動しても改善せず
実際に交代勤務が可能な分娩取り扱い施設はわずか7%である(前出アンケート)。前述の産科医16人以上を確保できている施設は、総合周産期医療センター107施設中41施設(38%)にすぎず、16人未満の66施設は計432人を追加確保する必要があった。また地域周産期医療センターについては、700件以上の分娩を取り扱う71施設のうち、16人以上確保できている施設は9施設にとどまった。分娩700件未満の227施設中では16人以上が12施設で、16人未満であった215施設については分娩数を考慮し、8人での宿日直体制に縮小した試算でも、その人数に満たない施設数は163に上った。
今回の試算から、両周産期医療センターで交代勤務を導入するには、追加で1,545人の医師を確保する必要があることが示された。改善策として、非常勤医を含めると不足数は約1,300人と若干改善されたが、全国規模で医師数の多い施設から少ない施設へ移動したとしても総合周産期医療センターで約150人、地域周産期医療センターで約800人が不足。そのため、全体で68%の施設が運営できなくなると試算された。
中井氏は「労基法の遵守は、勤務医の労働環境の改善に役立つことが期待できる」とした。その一方で、今回の試算結果を踏まえ、多くの勤務医を抱える周産期母子医療センターでは大幅な医師不足に陥ること、医師数を急激に増やすのは人員的・経済的に困難であることなどの問題点を指摘。「日本産婦人科医会として、宿直業務の捉え方や時間外労働の上限などの課題解決に取り組むと同時に、経済的な側面からも検討を進めていきたい」との見解を示した。
しかし医師を“労働者”として考えると、現状のエンドレス労働は労働基準法に明らかに違反しています。
人並み以上の体力がなければ、40歳以降病院勤務医を続けることは困難です。
私も身体を壊してドロップアウトした一人であり、開業することにより夜の勤務(眠れない当直)から解放されました。
しかし開業医となった現在も、診療レベルを維持するために日々医学知識のアップデートが欠かせません。
仕事の準備(医学関連の情報収集)に費やす時間は、毎日数時間。
これを労働時間に含むと判断すると、私は一生涯“過重労働”から逃れられないことになります。
産婦人科の現状を報告する記事を紹介します。
労働基準法を遵守すると、約7割の産婦人科施設でマンパワー不足となり運営不能となる、という当たり前すぎる内容です。
現場の医師から見ると「何を今更・・・」という感が無きにしも非ずですが、果たして厚労省がこれをどう解決していくのか、見物ではあります;
■ 労基法の遵守で約7割の施設が運営不能に 〜勤務シミュレーションに基づく試算
(2018年02月06日:メディカル・トリビューン)
日本産婦人科医会常務理事で日本医科大学教授の中井章人氏は、政府が進める働き方改革の一環として、医療機関における労働基準法(以下、労基法)を遵守することによって産婦人科勤務医の労働環境の改善が期待されると歓迎。その一方、現状のまま遵守すれば勤務医を抱える多くの施設で大幅な医師不足となり、68%の施設が運営できなくなる事態を招くとする勤務シミュレーションの結果を、日本産科婦人科学会が1月21日に東京都で開いた「拡大医療改革委員会」兼「産婦人科医療改革公開フォーラム」で指摘した。
◇ 施設の二極化が進行中
中井氏は冒頭、同医会が昨年(2017年)実施した施設情報調査における周産期医療の実態を紹介した。分娩取り扱い施設数および産科医師数の推移を見ると、いずれも一般病院と診療所で減少の一途をたどる一方、総合周産期母子医療センターおよび地域周産期母子医療センターでは増加していた。また、施設ごとの分娩数については一般病院で減少し、診療所ではわずかに減少。それに対し、両周産期センターでは増加傾向にあり、診療所と周産期センターの二極化が進んでいる。
◇ 宿直1.4回分、74時間が超過勤務
このような産科医療を取り巻く実態に関連し、これまで同学会および同医会は産婦人科勤務医の勤務条件の改善や医療再生などを提言してきた。
医師の宿日直勤務と労基法に関する厚生労働省労働基準局の通知(2005年)では、宿直は週1回(日直は月1回)を限度とし、病院の定時巡回などの軽度または短時間の業務に限るとしている。さらに、応急患者の診療または入院、患者の死亡、出産などといった昼間と同様の労働が常態化したものは許可していない。
しかし、同医会勤務医部会が行ったアンケート(2017年、暫定値)では、産婦人科医の平均宿直回数は1カ月の上限を上回る5.7回であることが分かった。
さらに1カ月の平均在院時間は295時間(休憩時間22時間含まず)と、労基法で定める176時間を上回り、宿直1.4回分、74時間が超過勤務となった。
◇ 遵守するなら16人必要
そこで中井氏は、労基法で定める宿日直の条件に基づき、分娩取り扱い施設で必要な勤務医数を試算した。
その結果、毎日1人で宿日直を担当する施設(1カ月当たりの宿直必要回数30~31回、日直必要回数8~10回)では、産科医8人の確保が求められた。総合周産期センターで毎日最低2人が宿日直を行う場合は16人が、非常勤医による宿日直と常勤医の自宅待機を行う一般病院では4人がそれぞれ必要であることが分かった。
ただし医師数には育児中の女性医師がを含まれており、教育・研修の時間や有給休暇、宿日直が1人体制の施設における緊急時の自宅待機者の呼び出しは除外されている。
同氏は国が定める基準を満たすには交替制勤務もありうるとし、1日3交代・各2人体制の勤務表を組んでみたところ、人数が足りず1カ月当たり4日間外来診療に医師を割り当てることができないことが想定された。そのため1日3交代制を導入し、労基法内の勤務時間とすると、外来、手術担当、病棟担当も含めて16人(有給休暇は含まず)の産科医が必要であるとした。
◇ 全国規模で医師数が多い施設から移動しても改善せず
実際に交代勤務が可能な分娩取り扱い施設はわずか7%である(前出アンケート)。前述の産科医16人以上を確保できている施設は、総合周産期医療センター107施設中41施設(38%)にすぎず、16人未満の66施設は計432人を追加確保する必要があった。また地域周産期医療センターについては、700件以上の分娩を取り扱う71施設のうち、16人以上確保できている施設は9施設にとどまった。分娩700件未満の227施設中では16人以上が12施設で、16人未満であった215施設については分娩数を考慮し、8人での宿日直体制に縮小した試算でも、その人数に満たない施設数は163に上った。
今回の試算から、両周産期医療センターで交代勤務を導入するには、追加で1,545人の医師を確保する必要があることが示された。改善策として、非常勤医を含めると不足数は約1,300人と若干改善されたが、全国規模で医師数の多い施設から少ない施設へ移動したとしても総合周産期医療センターで約150人、地域周産期医療センターで約800人が不足。そのため、全体で68%の施設が運営できなくなると試算された。
中井氏は「労基法の遵守は、勤務医の労働環境の改善に役立つことが期待できる」とした。その一方で、今回の試算結果を踏まえ、多くの勤務医を抱える周産期母子医療センターでは大幅な医師不足に陥ること、医師数を急激に増やすのは人員的・経済的に困難であることなどの問題点を指摘。「日本産婦人科医会として、宿直業務の捉え方や時間外労働の上限などの課題解決に取り組むと同時に、経済的な側面からも検討を進めていきたい」との見解を示した。