アレルギー疾患では「局所ステロイド薬」を多用します。
これは、全身投与(内服・注射・点滴)では全身の副作用が問題になるため、
局所に作用して全身に影響を及ぼさないように開発されてきました。
例えば、
気管支喘息 → 吸入ステロイド薬
アトピー性皮膚炎 → ステロイド軟膏・外用薬
アレルギー性鼻炎 → ステロイド点鼻薬
アレルギー性結膜炎 → ステロイド点眼薬
この中で、注意すべき副作用として、
アトピー性皮膚炎:皮膚菲薄化
アレルギー性鼻炎:鼻出血
アレルギー性結膜炎:眼圧上昇(~緑内障)
気管支喘息:成長抑制(小児の場合)
などが有名であり、
アレルギー専門医はこれらに留意して量・期間を考慮します。
この中で患者さんにも有名なのは、
アトピー性皮膚炎に対するステロイド軟膏の副作用ですね。
しかし、マスコミの影響で誤解も多いのが気になります。
ステロイド軟膏の副作用は、
皮膚が薄くもろくなり、毛細血管が広がるため赤みを帯びることです。
患者さんたちが副作用と思い込んでいる、
色素脱失(色が抜ける)や色素沈着(黒ずんでくる)は、
治療不足によるものなのです。
アレルギー性鼻炎では鼻出血が問題になりますが、
これも粘膜が薄くなり、毛細血管が広がるために出血しやすくなるメカニズムです。
それ以外の副作用は、長期的にはどうなんだろう?
という疑問が昔から心の片隅にありました。
それに答えてくれる記事(日本医事新報社)が目に留まりましたので、
ポイントを抜粋します。
・生物学的利用率(BA, bioavailability)の低いステロイド点鼻薬は,安全性が高い。
・従来からあるベタメタゾン点鼻液(リンデロン点鼻薬)やデキサメタゾン点鼻液(オルガドロン点鼻薬)は,薬剤の点鼻滴下後に咽頭へと落下します。したがって,これらの薬剤を使用の際には注意が必要です。 小林らが嗅覚障害に対して長期のステロイド点鼻療法を行った際,1~2カ月で血清副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH),コルチゾール値の低下が出現したと報告しています。
・従前のステロイド点鼻液は現在ほとんど使用されなくなり,生物学的利用率が1%未満という全身的な副作用の発現率の低いステロイド点鼻薬が主たる薬剤となっています。薬剤のほとんどは体内に吸収されないため,安全性は高いと考えることができます。長期的な安全性の検討も報告されており,小児の成長にも影響を及ぼさなかったと報告されています。以上からも,生物学的利用率の低いステロイド点鼻薬は長期的な使用に際しても,安全性が高い薬剤と考えることができます。
・実際に臨床で多く経験する副作用は,鼻粘膜の刺激感,乾燥,鼻出血などが挙げられます。これらの副作用を回避するには,生活指導による症状改善や根治治療である免疫療法を導入することにより薬剤使用量を減量させることが不可欠です。
私の知らない新たな副作用はなさそうです。
長期的にも近年開発された点眼薬であれば、
体に悪影響を及ぼす可能性は低く、
安全に使えるとのこと。
さらには、長期的に使用が止められない例は、
だいたいダニアレルギーによる通年性アレルギー性鼻炎のため、
舌下免疫療法を選択肢に入れる、というフローが見えてきました。
私が日々の診療で行っていることと一致します。