小児アレルギー科医の視線

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新興感染症に「地名」「人名」「動物」含まれる名称はNG,WHOが指針

2015年05月12日 05時30分07秒 | 予防接種
 なるほど、と頷けるニュースが流れました。

 病名にはいろいろな由来がありますが、偏見を助長することがあります。
 四半世紀前の研修医時代、総回診の際に「点頭てんかん」という病名でプレゼンしたら、上司から「“てんかん”という病名はできる限り患者の前では使うべきではない、別名の“ウエスト症候群”を使いなさい」と指導されたことがあります。
 病名を使う場合、ある人々にとっては聞きたくない名前である可能性を想像する必要があることを教えられたエピソードとして記憶に残っています。

■ 新興感染症に「地名」「人名」「動物」含まれる名称はNG,WHOが指針 ~特定の国や民族,経済活動などへの影響に配慮
(2015.5.11:MTPro)
 世界保健機関(WHO)は5月8日,研究者や各国保健当局,報道機関に向け新たなヒトにおける感染症の名称を定める上で参考にすべきベストプラクティス(以下,指針)を公表した。疾患名によって特定の国や民族などの印象が損なわれたり,経済活動に悪影響が及んだりするのを回避することが目的だとしている。指針では新たな感染症の名称には特定の地域や国名,人名,動物の名称を含むべきではないとされており,回避すべき名称の具体例には「中東呼吸器疾患(MERS)」や「日本脳炎」「鳥インフルエンザ」などが挙げられている。

◇「クロイツフェルト・ヤコブ病」「レジオネラ症」もNG
 インターネット上のソーシャルメディアなどを通じて即時に地球規模での情報伝達が可能となった現代社会では,いったん疾患名が拡散し,定着すればそれを変更することは難しい。そのため,新たに認知され,公衆衛生上の問題となる可能性のある感染症あるいは症候群を報告する者には適切な疾患名を定めることが求められると,WHOは今回指針を示した背景について説明している。
 WHO事務局長補の福田敬二氏は「近年,幾つかの新興感染症が報告されたが,“ブタインフルエンザ(swine flu)”や“中東呼吸器症候群(MERS)”といった名称は特定の地域や民族のイメージダウンをもたらした。人々の往来や交易が遮断され,食肉用の動物の虐殺にもつながった」と指摘。「こうしたことは,最終的には人々の生命や生活に深刻な影響を及ぼすことになりうる」と述べ,今回の指針の意義を強調している。
 指針では,新たな感染症の疾患名には疾患に起因した症状を示す一般的な用語(呼吸器疾患,神経学的症候群,水様性下痢など)や,症状のより具体的な情報あるいは患者群,重症度,季節性に関する用語(進行性,若年性,重症,冬季など)が含まれるべきとされている。また,新たな感染症の原因が既知の病原菌(コロナウイルス,インフルエンザウイルス,サルモネラ菌など)である場合には,これを疾患名に加えることも求められている。
 一方,疾患名に含むべきではないとされたのは地域や国名(中東呼吸器症候群,スペイン風邪,日本脳炎など),人名(クロイツフェルト・ヤコブ病,シャガス病など),動物の名称(豚インフルエンザ,鳥インフルエンザ,馬脳炎),職業(レジオネラ症など)などに関連した用語。この他,人々の恐怖心を煽る可能性のある「未知の(unknown)」「致死性(fatal)」「伝染性(epidemic)」なども使用すべきでないとの見解が示された。
 なお,新興感染症に関して不適切な名称が公表あるいは使用されたり,名称が定められないままとなっている場合には,WHOが暫定的な疾患名を公表し,その使用を推奨する可能性があるとしている。

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