
田辺市熊野ツーリズムビューローの古道地図を引用
今回は熊野古道中辺路王子巡りの最終回として、唯一残された王子である湯峰王子を詣でるべく、大斎原(おおゆのはら)から湯の峰温泉にかけての、難所と呼ばれる「大日越」に挑んだ。
行程としては、土曜日の午後に自宅を出発し、車で約1時間かけて三重県紀和町にある小舟キャンプ場に行き、ここで車中泊を行った。ここを利用するのはこれで2度目。川沿いにある静かで美しい、お気に入りのキャンプ場である。せせらぎの音とカジカの合唱を子守歌にして眠った。

小舟キャンプ場全景

キャンプ風景:バイカーも多い

迷い込んできたキジの雛:林に逃がしたが無事に育つことを祈る

2011年紀伊半島大水害時の水位表示:キャンプ場背面のかなりの高さにあるが、ここまで水が上がったとは・・・・
当日は5時起床、朝霧の中、食事と片付けを行って6時に出発し、湯の峰温泉駐車場に車を駐め、ここでバスに乗り本宮熊野大社にて下車。大斎原を詣で、いよいよ大日越に挑んだ。

霧に煙る早朝のキャンプ場

奈良県大和八木行きのバスに乗る
大斎原の大鳥居:凡そ千年にわたりここに本宮熊野大社が鎮座したが明治期に大水害に遭い今の高台に移転した

大斎原の大鳥居:凡そ千年にわたりここに本宮熊野大社が鎮座したが明治期に大水害に遭い今の高台に移転した
シュークリームで有名になった菓子店の向かいに大日越の登り口がある。この登山道はいきなり急勾配で始まり、一気に山越えして湯の峰温泉に下りる。距離は短いが急な難所であると知らされていたので、超スローペースで登る。登りは比較的路が整っているので急ではあるが歩き易い。これに対して、下りは不規則で凸凹が多く歩き難い。ただし、登りは杉の植林を通るため風景は単調であるが、下りは自然林とシダが豊富な森を通るため趣がある。湯峰王子は鳥居と社殿が設けられ、数多ある王子の中でも格式が高い。ここを詣でて中辺路王子巡りの制覇を完了した。

大日越登り口

杉の植林中の林道

林道の地面が杉の根でほぼ被われる

下りは自然林やシダ類が豊富に現れる

初めて出会ったツルアリドウシ

初めて出会ったシライトソウ

ランダムな勾配と凸凹路が続く

格式が整った湯峰王子
完全制覇のお祝いに、少し贅沢に湯の峰温泉の旅館(伊せや)の内湯につかり、ソフトクリームを食べた。また、90℃あるという外にある「湯筒」で温泉卵を作り、車中泊で残ったパン等の食料と併せて昼食を堪能し帰途についた。

湯の峰温泉主要部のパノラマ

湯の峰温泉街

ここの内湯を使わせていただきました

湯の峰温泉ではつぼ湯と並んで有名な湯筒。狙いどおり13分で少し固めの半熟ができた
2021年から中辺路王子巡りを始めて足かけ3年、述べ17日かけてついに完全制覇を完了した。王子巡りにかこつけて、ゆっくりとした道中の徒歩散策を行ったので、こんなにも歳月がかかってしまった。
①田辺市街~秋津王子跡・万呂王子跡(20210211)
②三栖王子跡・八上王子跡(20210221)
③八上王子跡・稲葉根王子(20210310)
④稲葉根王子跡・興禅寺・幻の一ノ瀬王子跡(20210320)
⑤一ノ瀬王子跡・鮎川王子跡・住吉神社(20210523)
⑥住吉神社・清姫の墓(20210427)
⑦清姫の墓・滝尻王子跡(20210523)
⑧滝尻王子跡・不寝王子跡・高原高原(20210531)
⑨高原高原・大門王子跡・十丈王子跡(20211103)
⑩牛馬童子像・近露(20220515)
⑪大坂本王子跡・近露王子跡・比曽原王子跡(20220522)
⑫継桜王子跡・中川王子跡・小広王子跡・熊瀬川王子跡(20221030)
⑬湯川王子跡・岩神王子跡(20221106)
⑭発心門王子跡・猪鼻王子跡・水呑王子跡(20221231)
⑮伏拝王子跡・三軒茶屋跡(20230319)
⑯祓殿王子跡・熊野本宮大社(20230402)
⑰大斎原・湯峰王子跡(20230528)
どの区間もその土地ならではの風土の名残があるため印象深いが、とりわけ高原地区と伏拝地区はその美しい風景と集落のたたずまいに感銘を受けた。最もきつかった難所はこれも滝尻王子~高原地区であった。残念ながら、どの王子も初期の遺物はほとんど残されていなかったが、古の参詣道としての痕跡を所々で体感することができた。また、和歌山県民として自県を再発見するきっかけとなり、古道歩きはいろいろと有意義であった。
もう、詣でるべき中辺路の王子が無くなってしまったのはたいへん寂しいが、何事も始まりと終わりがある。これからは車中泊を武器に、小辺路・伊勢路・紀州路といった遠方の熊野古道巡りに着手したい。