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クチヒゲノムラガニの生態

退職し晴耕雨読的研究生活に入った元水族館屋の雑感ブログ

中辺路紀行⑰ 大日越(大斎原~湯の峰温泉) - ついに最終回

2023-05-29 | 雑感

田辺市熊野ツーリズムビューローの古道地図を引用

 今回は熊野古道中辺路王子巡りの最終回として、唯一残された王子である湯峰王子を詣でるべく、大斎原(おおゆのはら)から湯の峰温泉にかけての、難所と呼ばれる「大日越」に挑んだ。

 行程としては、土曜日の午後に自宅を出発し、車で約1時間かけて三重県紀和町にある小舟キャンプ場に行き、ここで車中泊を行った。ここを利用するのはこれで2度目。川沿いにある静かで美しい、お気に入りのキャンプ場である。せせらぎの音とカジカの合唱を子守歌にして眠った。


小舟キャンプ場全景

キャンプ風景:バイカーも多い

迷い込んできたキジの雛:林に逃がしたが無事に育つことを祈る

2011年紀伊半島大水害時の水位表示:キャンプ場背面のかなりの高さにあるが、ここまで水が上がったとは・・・・


 当日は5時起床、朝霧の中、食事と片付けを行って6時に出発し、湯の峰温泉駐車場に車を駐め、ここでバスに乗り本宮熊野大社にて下車。大斎原を詣で、いよいよ大日越に挑んだ。


霧に煙る早朝のキャンプ場

奈良県大和八木行きのバスに乗る
大斎原の大鳥居:凡そ千年にわたりここに本宮熊野大社が鎮座したが明治期に大水害に遭い今の高台に移転した


 シュークリームで有名になった菓子店の向かいに大日越の登り口がある。この登山道はいきなり急勾配で始まり、一気に山越えして湯の峰温泉に下りる。距離は短いが急な難所であると知らされていたので、超スローペースで登る。登りは比較的路が整っているので急ではあるが歩き易い。これに対して、下りは不規則で凸凹が多く歩き難い。ただし、登りは杉の植林を通るため風景は単調であるが、下りは自然林とシダが豊富な森を通るため趣がある。湯峰王子は鳥居と社殿が設けられ、数多ある王子の中でも格式が高い。ここを詣でて中辺路王子巡りの制覇を完了した。


大日越登り口

杉の植林中の林道
林道の地面が杉の根でほぼ被われる

下りは自然林やシダ類が豊富に現れる
初めて出会ったツルアリドウシ

初めて出会ったシライトソウ

ランダムな勾配と凸凹路が続く

格式が整った湯峰王子


 完全制覇のお祝いに、少し贅沢に湯の峰温泉の旅館(伊せや)の内湯につかり、ソフトクリームを食べた。また、90℃あるという外にある「湯筒」で温泉卵を作り、車中泊で残ったパン等の食料と併せて昼食を堪能し帰途についた。


湯の峰温泉主要部のパノラマ

湯の峰温泉街

ここの内湯を使わせていただきました

湯の峰温泉ではつぼ湯と並んで有名な湯筒。狙いどおり13分で少し固めの半熟ができた


 2021年から中辺路王子巡りを始めて足かけ3年、述べ17日かけてついに完全制覇を完了した。王子巡りにかこつけて、ゆっくりとした道中の徒歩散策を行ったので、こんなにも歳月がかかってしまった。
①田辺市街~秋津王子跡・万呂王子跡(20210211)
②三栖王子跡・八上王子跡(20210221)
③八上王子跡・稲葉根王子(20210310)
④稲葉根王子跡・興禅寺・幻の一ノ瀬王子跡(20210320)
⑤一ノ瀬王子跡・鮎川王子跡・住吉神社(20210523)
⑥住吉神社・清姫の墓(20210427)
⑦清姫の墓・滝尻王子跡(20210523) 
⑧滝尻王子跡・不寝王子跡・高原高原(20210531)
⑨高原高原・大門王子跡・十丈王子跡(20211103)
⑩牛馬童子像・近露(20220515) 
⑪大坂本王子跡・近露王子跡・比曽原王子跡(20220522)
⑫継桜王子跡・中川王子跡・小広王子跡・熊瀬川王子跡(20221030)
⑬湯川王子跡・岩神王子跡(20221106)
⑭発心門王子跡・猪鼻王子跡・水呑王子跡(20221231)
⑮伏拝王子跡・三軒茶屋跡(20230319)
⑯祓殿王子跡・熊野本宮大社(20230402)
⑰大斎原・湯峰王子跡(20230528)

 どの区間もその土地ならではの風土の名残があるため印象深いが、とりわけ高原地区と伏拝地区はその美しい風景と集落のたたずまいに感銘を受けた。最もきつかった難所はこれも滝尻王子~高原地区であった。残念ながら、どの王子も初期の遺物はほとんど残されていなかったが、古の参詣道としての痕跡を所々で体感することができた。また、和歌山県民として自県を再発見するきっかけとなり、古道歩きはいろいろと有意義であった。
 もう、詣でるべき中辺路の王子が無くなってしまったのはたいへん寂しいが、何事も始まりと終わりがある。これからは車中泊を武器に、小辺路・伊勢路・紀州路といった遠方の熊野古道巡りに着手したい。

旧型ハスラー車中泊寝床平坦化作戦

2023-05-23 | 雑感
来年から自家用車での散発的な短期国内旅行を計画中であるが、その準備として車中泊の整備と馴化に取り組んでいる。

車中泊にとっては「眠れること」が大切であり、そのためには寝床の平坦化が最低限必要となる。愛車である旧型ハスラーは完全にシートを倒すことができるが、けっこうな凸凹が生じる。そのため、完全フラット化するための純正専用マットが販売されているが、とても高価なため手が出ない。

そのため、平坦化のために安価工夫されている他の方のサイトを参考にしてトライしているが、あまり使い心地はよくない。そこで、今回、安価・簡単に平坦化できるものを考案してみた。

購入したのは合板1枚(12mm厚、2000円)、ニトリの6つ折りマットレス1つ(3490円)である。合板は積み込み時の車幅に併せ114×45.5cm(2枚)にカットし、その片側表面に余っていた滑り止めマットを貼り付けた。ニトリのマットレスは小さくたためるため、収納がとても楽である。それらに加えて、座布団2枚(不要になっていたもの)と自作ラゲッジボード1枚も平坦化に使用した。

以下、平坦化の方法である。
①後部座席を一番後ろに下げ、前座席を倒す。
②前後のヘッドレストを外し、前部座席に組み合わせて並べる。
③後部座席の上に座布団を敷く。
④その上に板を置く。
⑤ヘッドレスト上にラゲッジボードを置く。
⑥それらの上にマットレスを敷き、平坦化完成。

荷物置き場を確保するため、後部座席は倒さなかったので、寝床の長さは170cm程度しかないが、我ら夫婦にはなんとか足りた。懸案の平坦化は申し分なく、一晩熟睡とまではいかなかったが、十分に睡眠をとることができた。これで、寝床の問題は解決したので、あとは旅行まで経験を積むだけである。






恐るべし雑賀崎 その景観と地質

2023-05-23 | 雑感

雑賀(さいか)崎:その眺めは日本のアマルフィーとも呼ばれるが、空き家が多く、今後の景観維持が心配である。


和歌山市雑賀崎は、つい最近岸田総理が選挙演説中に暴漢に襲われた地として一躍有名になったが、古より和歌浦の構成員を成す風光明媚な地として知られる。個人的には天下の秀吉に楯突いて滅ぼされた雑賀孫市が活躍した場所、緑色をシンボルカラーとした特異な漁船群が所属する場所、親交のある「画家まつお」さんのアトリエのある場所として興味があったが、妻から雑賀崎にある番所庭園を見たいとのかねてからのリクエストもあったので、和歌山市内で車中泊をする機会にこの地を訪れた。

ところが、到着して最初から最後まで、私の興味を奪ったのは、美しい景色ではなく、見慣れない地質であった。雑賀崎の地質は、人工由来物を除けば、海岸に落ちている石から地形を形成する全ての岩盤、石垣や庭石に至るまで、ほぼ1種の自然岩で形成されているのである。それは私にとって驚くべきことであった。

旅行から帰って、さっそく雑賀崎の地質をググってみると、それを構成する鉱物の呼び名は「結晶片岩、緑色片岩、苦鉄質片岩、点紋苦鉄質片岩、緑泥片岩、青石(紀州青石)」とたくさんあり、どれが正解であるが識者によって異なることが分かった。一般的には緑泥片岩(りょくでいへんがん)、地方名としてはいわゆる紀州青石と呼ばれると解釈したが、さらに日本列島形成に関わる重要な地質でもあることが分かり、帰宅後においても大いに感心させられた。雑賀崎、恐るべし。

 ちなみに、日本列島を作ったプレート活動の跡が世界屈指の巨大断層(中央構造線)で、構造線に沿って南北に分布する岩石の内、北側は領家変成帯(白亜紀に高温低圧型変成を受けたもの)、南側は三波川変成帯(白亜紀に低温高圧型変成を受けたもの)とそれぞれ呼ばれる。緑泥片岩を含む緑色片岩は三波川変成帯に特有な地質で、その分布は中部地方から近畿地方、四国地方を横切り九州佐賀県に至る。また、三波川変成帯が受けた変成作用は、温度が200~450℃、圧力が2キロバールから10キロバール(1バール=約1気圧)とされる。なお、緑泥片岩の特徴は緑色の成分と、発達した面状構造(片理)がみせる縞模様であり、特に層状に剥離しやすいことである。


緑泥片岩(紀州青石):雑賀崎一体の地質を形成し、様々な資材としても利用されている。



番所庭園(ばんどこていえん):基は幕末の外国船の見張所であったが、ばんしょとは読まない。風景がたいへん美しい。緑泥片岩の観察にも最高。





「画家まつお」さんのアトリエ:大きな古民家を利用されたもので、周囲は「まつおワールド」が上品に炸裂している。残念ながら本人は現在世界を漫遊されていて不在。無事に帰ってきて欲しい。



緑色は雑賀漁協所属のシンボル



海に溶け込む空。その境目に淡路島や四国が遠くかすむ。「春うらら」ならぬ「初夏うらら」である。


「紀伊国の 雑賀の浦に出で見れば 海人の燈火 波の間に見ゆ」(万葉集)

やはりレンズか

2023-05-17 | 雑感
散歩の友としてオリンパスPEN Liteにズームレンズ(M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6)を付けて持ち歩いている。軽く、広角でかつそこそこ望遠なので重宝しているが、前回述べたように景観の再現力は物足りない。

そこで標本撮影専用に用いている、かつて神レンズと呼ばれたZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macroを持ち出してみた。35mm換算で100mmになる中望遠単焦点なので被写体が大きく制限されるが、今回はカメラのパノラマモードも併用して山を写してみた。

やはり写りが違う。「見た目」の感覚に近い。ただし、フォーサーズレンズなのでアダプターと併せるとちーと重い。どうせ重いならM.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3が欲しくなる。ただし高価だ。中古でも全く安くない。

やはり散歩の友を大切にせねば。

撮影条件:晴天ややかすみ、強風、手持ち、ASA200、露出・速度自動。





















いつもの散歩道であるが

2023-05-12 | 雑感
いつもの散歩道(袋から古座姫に続く、くじの川里道:熊野古道大辺路)ではあるが、好天で爽やかなためか、いつになく歩いていて気分が良い。また、新緑と樹木の一斉開花とが相俟って山は異常に美しい。山は燃えている。山のベストは紅葉ではなく当に今の季節である。ただし、たいへん歯がゆく思われるのは、この景色を我がカメラシステムでは全く表現できないことだ。腕なのか、レンズなのか。久しぶりに橋杭岩が一望できる展望台に足を向けてみた。




















もう後数年でこの、のどかな里道の天空を右から左に横断する自動車道が完成する。景色は止まることなく、変化は止まない。

初めての車中泊

2023-04-23 | 雑感



 今、体がまだ元気な内に車で日本中を見て回りたい、特に生まれ育った土地(北海道恵庭~千歳)を60年ぶりに再訪したいとの念願がある。それを、家内が一旦退職する来年以降からポチポチと実現させる計画である。旅行はビジネスホテル泊に車中泊(自炊)を併用する予定であるが、そのために車中泊や車中自炊に慣れておこうと思い、昨日、初めての車中泊を実施した。
 車は旧型のハスラーである。もともと車中泊を考えて購入したものであるが、購入して以降は人生で最も仕事が忙しい時期や引っ越しと重なり、ゆっくりと車中泊を行う心のゆとりと、「念願」を叶える強い欲求が起きなかった。一念発起のきっかけは、近年、体の老化が進行し、「今すぐに始めないと実現できなくなる」との切実な恐れを抱いているからである。
 さて、初車中泊は、何か支障が生じたらすぐに家に戻れることを考え、場所は家から30分ほどの道の駅にした。装備は2ヶ月程を費やして、以下を調達した。
〇車中泊用:フラット寝台化のためのニトリのマット+座布団4枚、格安シュラフ、自作シェード&カーテン等。
〇自炊用:ポータブルバッテリー、IHクッキングヒーター、万能IH用ポッド、ホットサンドメーカー、フレンチプレスコーヒーメーカー、保温タンブラー等。

 初車中泊の感想:ミートボール、ポテトサラダ、コールスローを入れたホットサンドと入れ立てのフレンチプレスコーヒーはとても美味しく(基本的に晩朝一緒)、手間もかからず、自炊は大成功であった。ところが、寝台は改善の余地が大いに残った。完全フラットにしなかったので腰が少し痛くなったのと、スペースを節約したため窮屈になり熟睡できなかった。また、寝台用具がかなりかさばり、フットワークを損ねたことも課題になった。次回の車中泊にはこれらを改良して挑みたい。


日の出と車中泊した道の駅。


早朝の駐車場:江須崎を望む。右は新しくできたホテル、左上は高級グランピング施設。停まっているのは全て車中泊車。軽からマイクロバス、専用のキャンピングカーまで、近くは和歌山、遠くは九州、多かったのは京都。この時期の週末はこの余裕。ただしGWはとんでもないことになるのでしょう。


愛車のハスラー。


フレンチプレスコーヒー抽出中。お湯を入れてかき混ぜ4分待つ。

コーヒーを飲みながらホットサンドが焼けるのを待つ。


だいたい500W3分でひっくり返す。


完成したホットサンド:圧着型ホットサンドメーカーの利点はパンの縁を閉じられることにあるが、このように加熱が足りないと縁から中身が漏れ出すことがある。また、うまくパンを装着しないと閉じることができない。少し技術が要る。


窓からの景色

オオクボミコモンサンゴ Montipora foveolata (Dana, 1846) 物語

2023-04-11 | 雑感


 コモンサンゴ類の分類学的研究で最も多大な貢献をした、「コモンサンゴ類の父」とも呼べる存在が大英自然史博物館(現ロンドン自然史博物館)に在職されたH. M. Bernard(1853-1909)なら、エール大学に在職されコモンサンゴ類分類の基礎を築いたJ. D. Dana(1813-1895)は「コモンサンゴ類の母」と呼べよう。Danaは地球を1周する壮大な探検航海「United States exploring expedition」(1838~1842年)に参加し、その収集物を基に多数のコモンサンゴ類の新種記載を行ったが、コモンサンゴ類における業績は彼の研究成果のほんの一部に過ぎない。
 さて、彼が新種記載したコモンサンゴ類の中にMontipora foveolataという種がある。この時代の常識ではあるが、原記載は非常に簡潔でかつ大まかである。


Montipora foveolata  (Dana, 1846) の原記載:原記載ではDanaが提唱したManoporaの属名が用いられた。

 ラテン語に加えて英語で書かれているのは救いがあるが、その短い英文でさえ私の読解力では完全には理解できない。ただし、はっきりと分かることは、近縁種と区別可能な特徴が述べられておらず、原記載では種を把握することができないということである。また、致命的なことに、原記載を含め現在までタイプ標本の図が一度も媒体に掲載されたことはなく、タイプ標本もスミソニアン博物館にはなく、彼が勤務したエール大学にも残っていない。彼のサンゴ標本はこの2つの機関のどちらかにあるはずなので、所在不明ということは、標本のラベルが消失した後に廃棄されてしまったのであろう。

 こうなると、本種の解釈はお手上げなのであるが、そこは「コモンサンゴ類研究の父」。Bernard (1897)は大英自然史博物館に収蔵されていたタイプ産地もしくはそれに近い7つの標本(4つはトンガ産、3つはフィジー産)に基づいて、本種の再記載を行った。そのお陰で、現在の本種の解釈が成り立っている。ただし、Danaの種とBernardの種が同一なのかどうかについては、もはや誰も分からない。タイプ標本が残っていない以上、検証不能であるからである。


Bernard(1897)のMontipora foveolataの再記載で掲載された図:骨格のスケッチでは個体壁内が顕著なすり鉢状を成すことが描かれているが、骨格の写真ではその特徴があまり顕著ではない。

 ところで、本種に関してはまだ迷いがある。Bernard (1897)が再記載したM. foveolataMontipora venosa (Ehrenberg, 1834) に極めて酷似し、両者はほとんど区別がつかない。ほぼ唯一の識別点は、「前者の個体壁内壁はやや斜めに落ち込んですり鉢状の窪みを形成するのに対し、後者のそれは垂直に落ち込んで円筒状の窪みを形成すことである」と理解したのであるが、この識別点は現代の研究者には用いられていない。通用しているのは、個体壁が良く発達する(foveolata)かあまり発達しない(venosa)であるが、この形質は両種の区別には役に立たない。果たして、個体壁内壁の傾斜の度合は有効な形質なのかどうか、少し不安が残る昨今である。


Veron(1986)のMontipora foveolataの掲載図:すり鉢状の個体壁は微妙である。


国内で唯一調べることができたオオクボミコモンサンゴMontipora foveolataの標本(宮古島産、採集・撮影はH. T. 氏):この標本は個体壁がメアンドロイド様に蛇行するものが多いが、メアンドロイド様個体壁はBernard(1897)の標本でも散見され、この出現の多寡は種内変異であると解釈した。すり鉢状の個体壁が特徴的である。


国内で採集されたフカアナコモンサンゴMontipora venosaの標本(宮古島産、採集・撮影はH. Y. 氏):この標本の個体壁は垂直に落ち込むが、個体壁の発達度合のみで判断すればM. foveolataに同定される。

中辺路紀行⑯ 三軒茶屋跡~祓殿王子~熊野本宮大社 20230402

2023-04-03 | 雑感

田辺市熊野ツーリズムビューローの古道地図を引用

 今回はいよいよ最終地点である熊野本宮大社へ向かう。本宮大社前の河川敷駐車場に車を駐め、舗装道路を歩いて三軒茶屋跡(九鬼ヶ口関所跡)から古道に入り、祓殿王子を経て本宮大社を詣でた。

 今回の散策は総歩行数約15000歩、くもり、稀に小雨。友人にガイドいただき、かつて無いほど実に内容が盛りだくさんであった(以下)。
①古道歩き
②近い将来の車中泊決行に備えた、車内自炊のチェック(ポータブルバッテリー、小型IHクッキングヒーター、ポッド、フレンチプレスコーヒーメーカー、ホットサンドメーカーを駆使した喫茶と昼食の試行)
③古道センター見学、お土産購入(やたあんの釜餅)。
④本宮で有名なChouxのシュークリームを堪能
⑤大峯奧駈道の始点に当たる吹越峠で花見
⑥三重県紀和町飛雪の滝見学

 次回は中辺路王子巡りの最終回、唯一残った湯の峰王子詣で。起点予定の本宮大社からの距離は短いが、難所である大日越が待っている。湯の峰温泉入浴を楽しみにもうひと踏ん張り。


本宮大社前の無料河川敷駐車場:ここで出発前の喫茶と帰車後の昼食を取った。川向こうは修験道で有名な大峯奧駈道の吹越峠。この山火事のような桜に引かれ、帰りの途中で立ち寄った。




今回の古道散策起点:誰も目を留めないであろうが、ここの周囲にたくさんいたオオアリマキ類が気になった。数種がいるように思われた。


途中にある見晴台。大斎原の大鳥居と大峯奧駈道が通る吹越峠を見渡すことができる。案内の看板がグッドデザイン。


祓殿(はらいど)石塚:江戸時代に参詣者が禊ぎのために河原から石を持ち寄ったために塚が形成されたらしい。今でもこの風習が残っていればよかったのにと思う。


祓殿団地:一連の中辺路散策の中で最大の愕きであったのであるが、祓殿石塚から下るとこの団地に出てしまった。ここに来てこのように聖域が大きく遮断されるとは思いも寄らず、クライマックスのはずが途端にしらけてしまった。当に画竜点睛を欠く。いったいどうして?


祓殿王子:最後の王子で、本宮大社の直前にある。参詣者は本宮大社に詣でる前にここにお参りして穢れを払った。



本宮大社の鳥居:厳かで趣のある参道を配した「表の鳥居」に比べて、中辺路経由の参詣者はこの「裏の鳥居?」をくぐって本宮大社を詣でる。ただし、ここを通ると八咫烏のポストが見られる。


「表?の鳥居」


大斎原(おおゆのはら)の大鳥居:旧本宮大社跡に立つ大きな鳥居で、本宮周辺1番のランドマークである。



大峯奧駈道吹越峠から見た大鳥居と桜並木:これまで見た桜の中では最高かもしれない。規模も大きいし、花が降り積もった山の表面もとても美しい。まるで桜色の絨毯を敷き詰めたよう。

飛雪の滝:家への戻りは熊野川対岸の三重県側を通りこの滝を見学した。キャンプ場が整備されている。

大日越進入口:次回のために場所を確認しておいた。ここを見ただけで難所であることが分かる。


八咫烏達磨:同行した友人に買っていただいた。カラスなのにこのかわいさはずるい。

中辺路紀行⑮ 伏拝王子とその周辺~味わい深い伏拝集落~ 20230319

2023-03-20 | 雑感

田辺市熊野ツーリズムビューローの古道地図を引用

 今年初めての中辺路王子巡り。中辺路完全制覇まで残り3回となってしまったので、名残惜しく出発をためらっていた。今回は伏拝王子をメインに据え、最寄りの道の駅に車を駐め、平岩口バス停から古道に入り、三軒茶屋跡を経て伏拝王子を詣で、水呑王子を往復するコースを取った。帰りの買い物も含め、全行程1.6万歩、約13kmであった。
 快晴、ほぼ無風、山桜(満開)・ソメイヨシノ(咲き始め)をはじめとして様々な春の花の競演と、のどかな伏拝地区の風土を満喫させていただいた。
 それにしても、伏拝地区の人と風景は素晴らしい。この残された昭和の山村の面影は、限界集落とも呼ばれるが、将来、無くなってしまうかもしれないことを考えれば王子跡よりも貴重であるように感じられる。それは、私が昭和世代であるからであろうか。今回は、いろいろと心に染み入る散策であった。
 中辺路王子巡りの残りは後2回とすることにした。次回は三軒茶屋跡から本宮熊野大社に至り、周辺の町並み散策と妻のリクエストである有名なシュークリーム屋に入るコース、最後は本宮大社から大鳥居を経由して唯一残された湯峰王子を巡るコースである。湯峰王子では完結記念に温泉にて祝杯する予定。


平岩口バス停にある古道入口


三軒茶屋跡。きれいなトイレも整備されている。


途中で出会った台湾の団体。今回は参詣道のメインであるだけに、また、ほぼ唯一の逆行者であったために、これまでの行程で最も多くの人とすれ違った。その数、述べ100人ほど。


伏拝王子。右手は休日のみに営業される茶屋(満員であった)、左上の山中に質素な王子跡と和泉式部の歌碑とその供養碑がある。


伏拝集落。奈良との県境に伸びる果無山脈を望む。


伏拝集落。素敵なお家と井戸(菊水井戸)。


伏拝集落。歴史を語る廃屋。


伏拝集落。少しばかり有名な「おとなし茶」の茶畑が点在する。


伏拝集落。集落の外れに鎮座する菰を着たお地蔵さん。集落の人柄がわかる。


集落で挨拶したら親切にしてくださった農家のおばあさん。お孫さんが描かれたとのこと。おとなし茶や作物を栽培し、一部を無人販売所に置いている。八朔をたくさんわけていただいた。「私みたいに年取ったらどこにも行けないから、あんたら若い内にたくさん歩いときなさいよ」と人生の教示をいただいた。ちなみに、おとなし茶は控えめなウーロン茶のよう。お湯を入れて少し置いておくと味と香りが出る。伏拝集落のような滋味がある。また、購入したい。


おばあさんの無人売店。お茶と梅干しを買わせていただいた。


おばあさんの茶畑。


伏拝集落と水呑王子の間にある峠。帰りがけに、ここでおもしろい現象に出会った。すれ違った中年の男性が、私たちの後ろの「人?」にもはっきりと挨拶をして行ったのである。私たちの後ろには誰もいないはず。驚いて振り返ったらやはり誰もいない。以降、神経を後方に集中して峠を歩いたのであるが、「それ」の気配は何も感じられなかった。「それ」はすれ違った男性について戻った?、もしくは男性にかつがれた?

見事な杉の紅葉

2023-02-18 | 雑感










春が近づくと杉の色が赤っぽく変化する。これは花粉を湛えたせいとばかり思っていたが、葉の色が赤く変わる、いわゆる「紅葉」のせいであるようだ。

古座川と小川(こかわ)の合流付近の山腹に杉の紅葉の名所がある。ピークは河津桜が満開になる頃。先日、この桜の偵察に訪れたが、まだ一分咲き程度であった。ただし、杉の紅葉は楽しめた。

件の杉の紅葉をよく見ると、緑と赤のグラデーションが付いている。これには、紅葉の度合いに個体差があると共に、珍しく自然林(二次林?)が残っていることも関係している。