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クチヒゲノムラガニの生態

退職し晴耕雨読的研究生活に入った元水族館屋の雑感ブログ

安田 南と気まぐれ飛行船とエタベーカー

2019-02-21 | 雑感

在りし日の安田 南さん

 息抜きにユーチューブで音楽を漁ることがたまにあるが、時にこれまで経験したことがなかった良きものに出会うことがある。今回はジャズシンガーの安田 南さんの歌つながりで、彼女がパーソナリティーを勤めていたFM東京のラジオ番組「気まぐれ飛行船」の収録を見つけ、それを聞く中で番組のテーマに用いられていた楽曲と凡そ40年ぶりに再会した。
 「気まぐれ飛行船」は作家の片岡義男さんと安田 南さんとの軽妙なトークがとてもおしゃれだった番組で、1974年~1979年まで放送された。当時は多感な高校生。素敵で大人の安田 南さんに些かの恋心を抱き楽しみに聞いていたのが懐かしく思い出される。
 後に分かってショックを受けたのだが、安田 南さんは歌手・俳優だけでなく、蓮っ葉で破天荒な私生活でも超伝説的な人であった。その一端は西岡恭蔵氏の代表作「プカプカ」のモデルとして歌われている。そして1979年に誰にも告げずに突然行方不明という形で番組のみならず社会からも去り、以来、二度と表舞台に登場することなく、死亡したことだけは伝っているが、没年・死因などは全く分かっていない。何があったのだろう。
 中学時代はハードロック中心、深夜放送は「パックインミュージック」のナチチャコのファンで、「セイヤング」も良く聞いた。ただし高校に入ると取聴はFM東京中心に移り、油井正一さんの「アスペクトインジャズ」によってジャズに開眼し、彼の熱説でマイルスデイビスとルイアームストロングの全てを教わった。ジャズが私の心の糧になったのはひとえに由井さんのお陰である。そんな大人になりかけの私の感性を高めてくれたのがこの番組であり、「ジェットストリーム」であり、先の「気まぐれ飛行船」等々、FM東京の素晴らしい番組の数々であったのである。
 話は逸れたが、「気まぐれ飛行船」のテーマに用いられていた楽曲は、エタベーカー(Etta Baker、1913-2006、女性)自作自演の「One Dime Blues」であることが今にして分かった。さっそく、ユーチューブで彼女の演奏を聴く。ギターの音色はなんともキラキラとした宝石のように輝き、演奏は素朴で人情味と歌心が溢れ、たちまち虜になってしまった。ここずうっと「One Dime Bleus」のフレーズが頭の中で鳴りっぱなしで、彼女の魔法にかけられた私はアルバム2枚を購入してしまった。
 エタベーカーは黒人・インディアン・白人の遺伝子を受け継いで生まれ、父を師匠とするピードモントブルースの名手であった。ピードモントブルースはアメリカ東海岸のニュージャージーからアラバマにかけて広がるアパラチア山脈の麓(ピードモントと呼ばれる)で生まれたブルースの一派で、軽快なフィンガー・ピッキングに特徴がある。
 ブルースの起源は黒人霊歌や労働歌であり、陰りのあるねちっこさがこの音楽の魅力である。しかしながら、彼女の演奏はコテコテのブルースとはほど遠く、明るく洗練された日向のフォークソングのよう、単純な旋律の繰り返しの中に音楽の真理を紡いでいる。
 ちなみに、「One Dime Bleus」のダイムとは10セント硬貨のこと。今でこそ10円程度の価値しかないが、作曲当時の1950年代における価値は5倍程度はあった。そのため、日本語に直せば「100円ブルース」といったところか。
 ところで、彼女は1990年頃(80才前後)になってから脚光を浴びるようになり、年輪が深く刻まれた映像しか残っていないが、若い頃は相当な美人で、嫉妬深い夫は彼女が演奏旅行に出るのを認めなかったそうな。これが世に出るのが遅れた真相かもしれない。


https://www.youtube.com/watch?v=cSUL_GT7nkA
「One Dime Bleus」。Instrumental Music from the Southern Appalachians 1956 (reissued 1997)より。1956年のデビュー録音である。エタは当時のピードモントブルースの名手たちの一人として参加しているが、彼女の演奏は際立っている。



https://www.youtube.com/watch?v=ReZ8-OpYogI
「One Dime Bleus」。One Dime Bleus 1990より。エタのアルバムを3枚聴いたが、このアルバムが一番良い。お得意の「One Dime Bleus」はテンポを1つ落としている。



https://www.youtube.com/watch?v=gcD3fOrRPqE
「One Dime Bleus」。Etta Baker with Taj Mahal 2004より。2004年の録音だそうであるが、1956年のとどこがちがうのか聞き分けるのが難しい。



https://www.youtube.com/watch?v=ynu187cS5Wg
「One Dime Bleus」 from THE FINGERPICKING BLUES OF ETTA BAKER。エタの生演奏が見られる。

ゲド戦記の主人公に遭遇す

2019-02-17 | 雑感
 昨12月の話になるが、ある生物の面白い狩りの現場に遭遇した。写真も撮影できたが、種名が確定できず保留にしていた。本日、地元で野鳥の観察会があり、専門家から種名を教示いただけたので紹介したい。
 その名もハイタカ、小型の猛禽類で、ゲド戦記の主人公である魔法使いの名前でもある。12月のある日、橋杭海岸の漁港前を散歩していたら、すぐ手前の生け垣の中に空から何かが突入してきた。何が起きたか分からず、じっと見守ると、生け垣の上に鳩を一回り大きくした鷹の姿が現れた。彼は周囲を警戒すること無く、生け垣の中をしばらく覗き込み、そのまま生け垣の中に再突入して動き回り、雀が中から慌てて飛び立った。そこでようやく狩りが行われていることが分かった。その時は狩りは不成功のようで、しかも人がそばにいることにやっと気づき、少し離れた道路標識の上に移動して止まり、やがて屋根の上に飛び去った。狩りを邪魔したようで気の毒に思ったが、本日、専門家から「写真の個体は幼鳥ですね」と教えを受けて合点がいった。周囲を警戒しない配慮のなさや、狩りの未熟さは、経験の乏しさに由来したものだったのである。
 その翌日、狩りの現場を再び訪れると、ハイタカはいなかったが、植え込みの中で散乱した小鳥の羽を見つけた。狩りは成功したようである。その後、植え込みに雀が集まることはなくなりハイタカも見ることはなくなったが、離れた場所で鳩と思われる散乱した羽を目にした。ハイタカも腕を上げたのかもしれない。ゲド戦記好きの私にとっては、この名前を持つ鳥と出会えたことは少し誇らしい。
 蛇足ながら、本日の野鳥観察会(橋杭海岸~くじ野川熊野古道)で私が確認できた種を記す。トビ、ノスリ、ハヤブサ、ミサゴ、クロサギ、セグロカモメ、カワウ?、モズ、ヒヨドリ、ホオジロ、ジョウビタキ、ハシブトガラス、ウグイス、メジロ、ハクセキレイ。今年は鳥が少ないとのこと、ウグイスは初鳴きとのこと。モズは性格に似ず姿だけはかわいかった。


生け垣の中から現れたハイタカの幼鳥


生け垣の中を窺うハイタカ




人の気配に気づき移動したハイタカ


狩りの翌日に発見した獲物の羽

コモンサンゴ類の分類学的雑感記⑤ 奄美のコモンサンゴ類            ムラサキコモンサンゴ Motipora peltiformis Bernard, 1897

2019-02-10 | 雑感
 コモンサンゴ類の研究を始めて早10年、この間、南は八重山・小笠原両諸島、北は三重県・日本海と、日本中のサンゴ生息域に赴いてサンプル採集に勤しんだ。サンプル数は優に1500を越える。日本中ほぼ網羅したと言いたいところだが、重要な海域が1つだけ抜けていた。それが奄美諸島だ。
 奄美はこれまでなかなか縁が無く、奄美が抜けたまま日本産コモンサンゴ類相の整理を進める気でいたが、やっとタイミングが合い、昨年末に有意義な採集が行えた。その大量のサンプルの同定をほぼ2ヶ月を費やして行って来たが、昨日、なんとかやり終えた。
 出現種数は32種。奄美諸島、特に奄美大島と加計呂麻島にまたがる奄美海峡の環境の多様性と、コモンサンゴ類の種多様性を鑑みれば種数は些か少ないが、今月の終わりには再挑戦の機会を得ているので、最終的には40種を越えよう。
 さて、今回の同定作業で有終の美を飾った種がムラサキコモンサンゴである。特に意図した訳ではないが、特徴が少ないために何気に最後まで残ってしまった。特徴が少ないとは言ったが、目立つ付属突起を欠き、チクチクする棘がほぼ一様な大きさで、一様に分布するのが本種の特徴ではある。
 本種は波当たりの良い浅所に分布し、串本以南のサンゴ礁域に比較的普通に見られる。紫色を帯びた軟体部の色彩的特徴に因みムラサキコモンサンゴの和名が与えられているが、奄美で得られた標本はどれもくすんだ色をしていた。なお、本種にはイタイボコモンサンゴの和名が使われたことがあるが、これは白井・佐野(1985)が板状に大きく張り出した突起を持つ種不明の標本をM. peltiformisと誤同定したものに与えられた。


ムラサキコモンサンゴ(奄美大島嘉鉄産)


ムラサキコモンサンゴ(同生時ポリプ)


ムラサキコモンサンゴ(同骨格標本)


ムラサキコモンサンゴ(同骨格標本個体の形態)


ムラサキコモンサンゴ(奄美須子茂離島産)


ムラサキコモンサンゴ(串本町潮岬産)


ムラサキコモンサンゴ(ケラマ群島阿嘉島産)

キクラゲ~初キノコ狩り

2019-02-02 | 雑感
 先日から家の近くを連なる熊野古道(袋~姫道)で短いジョギングを始めた。行きはスロージョギング、帰りは歩き散策となるのであるが、帰りがけに道端の倒木にキノコが生えているのを見つけた。雨上がりであったので、水を吸ってプニョプニョしている。キクラゲかも?と思いながら、食い意地はない方であり、また、素人がキノコに手を出すと危ないという恐怖心があるので、眺めるだけに止めた。
 帰ってググるとやはりキクラゲ(類?)で間違いなく、これは食べてもだいじょうぶであると分かった。そこで、初キノコ狩りとばかり、翌日に採集してみた。倒木の表面に生えているものは既に乾いてパリパリ状態であったが、裏側のものはしっとりとして正に生キクラゲ。大きなものを半分ほど選んで持ち帰った。
 真水で洗い水に浸しておくと膨らんでボールは満杯状態に。あーこんな採るんじゃなかった。さて、さっそく食べようと思い、クックパッドを眺めているとおいしそうなのがあった。豚肉とキクラゲ炒めのミゾレ和え!!。20分ほどで完成し、がっつり食べる。食感は良い、ただしキクラゲ自体は味は無い。名の通り、食感だけのクラゲの様であるが、これよりはキクラゲの方がはるかに栄養がある。
 さて、残りをどのようにして食べようか。あまり気が進まない


倒木に生えたキクラゲ。乾燥してパリパリ状態。


倒木の裏面のはしっとりとして正に生キクラゲ。



水に戻すとボールは満杯状態に。