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クチヒゲノムラガニの生態

退職し晴耕雨読的研究生活に入った元水族館屋の雑感ブログ

二度目の新居 ①

2018-05-28 | 雑感

新居の模型:メーカーさんにいただいたものに色紙を張る。木造平屋、22坪。


 家の真上を自動車専用道路が建設されることが決められ、立ち退きを余儀なくされてしまった。晴天の霹靂とはこのようなことか。人生最初で最後の高額な買い物と決意して建てた今の家であったが、わずか10数年で住み替えになるなんて思いも寄らなかった。人生何が起こるかわからない。
 国家権力に逆らったり、嘆いても仕方ないので、「いつかは必ず来る南海・東南海地震の津波に備えて高台に移るチャンスを与えてくれた」と考え直し、半年かけて新居の基本形、場所、ハウスメーカーを絞り込んできた。退職前の多忙な時機ではあったが、将来に大きく関わる重大事であるので、可能な限り労力を割いた。
 コンセプトは老後生活、具体的には、高台、利便性、研究室のあるコンパクトな平屋、オール電化、エネルギー収支0を目指した太陽光発電、それに低コスト。そして、昨年秋に土地とハウスメーカーを決めた。ハウスメーカーは選択に悩んだが、スタッフさんの対応と素朴な造りが気に入り、南紀白浜町にある工務店「きのへそ」さんにお願いした。

 昨12月に設計図ができる。敷地45坪、延床面積22坪、木造平屋。本年2月から建築が始まり、3月基礎工事、4月棟上げ、5月外壁工事と工事は順調に進み、7月には完成予定である。1日も早く新居に移り、本格的な研究生活に入りたいと願う。


基礎工事


棟上げ


屋根工事:平屋だが標本室用にロフトを設けてある


外壁工事:敷地は家の間に挟まれるが南に面する。

もはや幻ではない「幻の滝」を見に行った話

2018-05-22 | 雑感
 和歌山県の山間部にゆずで有名な平井という里がある。そこに幻の大滝があると聞き行ってみた。



幻の滝を隠す平井の山々


 その名も「幻の滝」。かつては地図にあっても道が無く、到達性が極めて悪いためこの名が付いたそうであるが、今はすぐ近くまで林道が整備されていると言う。ただし、紀伊半島は7年前に未曾有の大水害に見舞われ、いまだに山間の道路はその傷跡が所々で残り、地図に載っていた道が無くなっていることもたまにある。そのため、平井にある「ゆずの学校」で美味しいゆずジュースを飲みながら、親切なご主人に道を確認し、おそるおそる車を走らせた。
 なんと、その林道はきれいに舗装され、落石や倒木も無く、あっけなく登り口に着いてしまった。滝はここから徒歩10分の距離にある。



幻の滝入り口の看板


 ところが、滝への歩道は整備されておらず、清流沿いに進むと数分で道を見失う。滝はすぐ上流にあるはずなので岩をよじ登り進む。が、ハードになってきたため、一緒に来た妻がギブアップ。困ってしまい周囲を見渡すと、対岸に道らしき痕跡が見える。そこで、水深が浅い所を選び川を横断し、滝の落口近くまで到達した。



歩道入り口付近:歩道に入り数分は道が識別できた


数分後に道を見失う


川横断:裸足で渡る。これがどんなに危険な行為であるのか、彼女はまだ知らない。 


落差63m。古座川水系にある滝の中では最も長く、「那智大滝より米俵一俵分低い」と言い伝えられてきたように、壮大で大滝に姿が似ている。比較的お手軽ではあったが、良いものを見させてもらった。



「幻の滝」


滝の下部:水量が少ないせいか滝壺は形成されない


 さて、滑落せぬように気を配りながら車に戻るとおまけが付いてきた。それは「ヤマビル」。それも妻の靴ばかりに5匹ほど。妻はパニクりながら、私は楽しみながら、小枝を探して除去する。幸い発見が早かったため吸血されずに済んだ。



靴紐の付け根に隠れるヤマビル君


靴から剥がされて逃げるヤマビル君


 気温が高く雨が多い時期はヒルも多いのであろうが、完全に山を見くびっていた。山奥に踏み込むということはこういうことだ。今後、古座水系の滝巡りを気軽にしたいと思っていたので良い勉強になった。
 最後に、インターネット記事を参考に、以下に記すヤマビル対策を検討した。これはダニにも有効であろう。次回からの滝巡りではこれで安心だ。

ヤマビル対策法
 ①侵入経路を断つ:袖付きの長靴(もしくはゲイター利用)、長袖長ズボン、それに厚手の靴下を履き、帽子をかぶる。
 ②ヒルを寄せ付けない:忌避効果のあるスプレーを靴に散布。効果の高い専用スプレーもあるが、まずは効果があるとされる
  一般の虫除けスプレーかエアサロンパスを使用するつもり。

里花に親しむ ~最初の50種~

2018-05-13 | 雑感
 仕事上、海岸植物には少なからず親しんできたが、山里の植物には興味はあったもののからきしであった。それを克服すべく、わんこの散歩がてら1日1種を目標に里山の花の名前調べを始めた。きっかけは先月の探鳥会で先覚者から教えを受けたことによる(前々回の「花の名前を覚える近道は?」参照)。


記念すべき確認第1種目「タツナミソウ」:岸近くで波が砕ける様に由来。簡潔でたいへんセンスが良い名前。

 里花に親しんで早一月が過ぎ、「スミレやタツナミソウの青系の花が少なくなり、ドクダミやヒメジョオンの白系の花が目に付くようになる」と言った、花の消長による季節の移ろいが楽しめるようになってきた。苦手な夏が近づいているのではあるが。。。


記念すべき確認第50種目「ママコノシリヌグイ」:なんとも酷い物語を持つ名前で、命名は植物学の父と呼ばれる牧野富太郎。明治時代の学者は皆、想像力豊かだ。

 さて、本業に支障のない範囲で欲張らずに花の名調べを続けてきたが、本日、記念すべき50種目の撮影に達した。プチ自慢までにその目録を以下に記す。確認時機は4月から5月上旬、地域は和歌山県紀南地方、場所は海岸近くの里山、対象は野生花であるが、ごく一部の樹木や園芸種も撮影したものについては加えてある。


春の里花のお気に入りNo. 1「オオイヌノフグリ」:小さくて可憐で大好きな空色。花は抜群だが、名は最悪。牧野さんには愛のある名に変えて欲しかった。


 アメリカフロウ、イワタイゲキ、ウンゼンツツジ、オオイヌノフグリ、オオジシバリ、オオバコ、オヤビジラミ、ガクウツギ、カタバミ、キキョウソウ、ゲンゲ、コガクウツギ、コセンダングサ、コツツブツメクサ、サンショウ、シャガ、スイバ、セイヨウタンポポ、タガラシ、タチイヌノフグリ、タチツボスミレ、タツナミソウ、タビラコ、チガヤ、ツルマンネングサ、ドクダミ、ナズナ、ニガナ、ニワゼキショウ、ノビル、ハエドクソウ、ハハコグサ、ハマエンドウ、ハマヒルガオ、ハマボッス、ヒメジョオン、ヒメレンゲ、ヒルザキツキミソウ、マツヨイグサ、ママコノシリヌグイ、ミヅキ、ミゾカクシ、ミヤコグサ、ムラサキカタバミ、ムロウマムシグサ、モチツツジ、ヤマフジ、ユズリハ、リンドウ(ハルリンドウ?)、ワスレナグサ


春の里花のお気に入りNo. 2「ムラサキカタバミ」:鮮やかな小花を持つが、要注意外来種だそう。帰化して数百年、もう市民権はあるだろうに。

 この目録を愛好者が見れば普通種過ぎて失笑するであろうが、目録にあるほとんどは初認識、全くの無知であった。


春の里花のお気に入りNo. 3「ハハコグサ」:春の七草の1つとは知らなかった。近くに本種とゲンゲ、それにニワゼキショウが入り乱れた宝箱のような小さな原っぱがある。

 私の研究対象は調べても種名が分かることは稀な、名前のない混沌とした世界である。一方、花は、先人の恩恵によるものであるが、「名のない雑草など存在しない」と言っても過言ではないほどの整然とした世界である。名前が分かることは、日頃のストレス解消にも役立っている。


おまけ1「スイバ」:雑草王であるが、花を拡大して見ると実に美しい。

 なお、上記の目録は素人同定であるので近縁種との誤認は免れまいが、継続によって腕が磨かれるものと期待している。同定は主に「山と渓谷社の野に咲く花」と「ナツメ社の野草図鑑」を参考にした。特に後者は花の色から名前を探せるので素人には最適。さて、次の50種はいつになろうか。大好きなツユクサの開花も待ち遠しい。


おまけ2「ミヤコグサ」:都草とは書くが古い帰化植物とのこと。群生景観はこの時期の1つのクライマックス。

窓の眺め

2018-05-03 | 雑感
 私が住まう所は、のどかな、ごくありふれた、こじんまりした田園地帯、小川が流れ、山に囲まれ、海にも近い。私に心地よいものが揃ったこの地が気に入り15年前に家を建てた。そして2階にはこの風景を楽しむために出窓を付けた。しかしながら、入居してからは公私共に人生で最も忙しい時期を迎え、窓からの風景を堪能することなくあっというまに時は過ぎ去ってしまった。

 退職して時間にゆとりができ、倉庫と化した出窓の周囲を片付け、締め切られたまま埃が積もったカーテンを洗い、本当に久しぶりに窓からの眺めと向き合った。

 入居当時は家の周囲はほぼ田んぼで、春になると蛙が大合唱し(その道の研究者によると正体はシュレーゲルアマガエルが6割、アマガエルが4割)、季節の風物詩の1つとして楽しめた。ところが当地にも過疎化・高齢化の波が押し寄せ、いつしか周囲は稲作放棄地ばかりとなり、それとともに蛙の鳴き声も激減した。

 国破れて山河ありではないが、それでもいまだに家から眺める山桜や新緑の景色は美しく、また、里山感もそこそこ残り、この眺めには十分な癒やしがある。

 ただし、その寿命もわずかだ。裏山から家の真上を通り前の山をくり抜いて自動車専用道路が近々建設されるからだ。遅きに失したが、せいぜいこの景色が残る間は眺めを楽しんでおきたい。まして、次に移転する場所は自然の景色のない住宅街だ。便利を求めると自然は損なわれる。