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クチヒゲノムラガニの生態

退職し晴耕雨読的研究生活に入った元水族館屋の雑感ブログ

Crosslandよ、お前もか?

2019-12-30 | 雑感
 1年ほど前にミレポラコモンサンゴ Montipora millepora Crossland, 1952という種について書いた。この時に関連標本を整理し、一応の決着をみたのであるが、この種に関して新たに、しかも重大な発見があったので紹介したい。
 本種は莢径が0.5mm程と個体が小さく、共骨表面は付属突起を欠き滑らかなこと、個体が疎らに分布することの特徴を持ち、これらの形質を共有するものはみな本種に同定してきた。ただし、いくつかの形態多型が認められ、串本産の一部の個体群は共骨上の棘が細短い薄片状をなす独特な構造を持つことから、「未記載種かもしれない」と考えていた。
 ところが、少し前に串本で件の「串本型ミレポラコモンサンゴ」を見つけ、遺伝子がまだなかったので採集しようとしたらたいへんな事に気づいた。その20cm程の被覆状群体の上に高さ1-2cmの小さな枝が認められたのである。しかもその枝の頂端には中軸サンゴ個体がある。そう、コモンサンゴ属ではなくミドリイシ属なのである。種はどうやらナカユビミドリイシ Acropora glauca のようである。
 これまで「串本型ミレポラコモンサンゴ」は5標本を得ているが、たまたま枝が伸びる前であったことと、ミドリイシ属の被覆状基板部は個体が一様に共骨中に埋まりコモンサンゴ属に形態が酷似することから、属を誤同定していたことが分かった。既に、いくつかの雑誌に「串本型ミレポラコモンサンゴ」をミレポラコモンサンゴとして報告してしまっているので、今後、ミレポラコモンサンゴを扱った時には、「**が串本からミレポラコモンサンゴとして報告したものは、コモンサンゴ属ではなくナカユビミドリイシの枝が伸びる前の基盤部の同定間違いである」と訂正しなくてはならない。
 属を誤るなどプロのすることではなく、情けないことをしてしまったと嘆きながら、確認のためにMontipora millepora のタイプ標本の画像を見直していたら再度驚いた。なんと、タイプ標本の雰囲気は「串本型ミレポラコモンサンゴ」に似ているではないか。ということはミドリイシ属?
 そこで、ミドリイシ属の基板上の骨格構造とコモンサンゴ属のそれとを比較してみた。すると個体も含めた両属の骨格構造は極めて良く似ていて本質的な相違点は見当たらず、中軸サンゴ個体が出現しないと両属は明瞭に区別出来ない。強いて挙げれば、ミドリイシ属の共骨表面上の棘は細短い薄片状をなして一様な高さ・密度で分布するのに対し、少なくともこれまでミレポラコモンサンゴと同定していた標本にはそのような特徴はない。そして、Montipora millepora のタイプ標本の棘の構造はミドリイシ属のものと酷似し、どうやらタイプ標本の所属はミドリイシ属のようであり、記載者のCrossland氏も私と同様に見誤った可能性が高い。
 さて、そうであるとするならば、これまでミレポラコモンサンゴに同定されてきたコモンサンゴ類の扱いはどうなるであろう。それは、現在、Montipora millepora のシノニムとして扱われているM. pallida Bernard, 1897 かM. subtilis Bernard, 1897のどちらかが新たな担名タクソンとして選択されることになる。



これまでミレポラコモンサンゴとして扱ってきた標本(小笠原諸島母島産)


「串本型ミレポラコモンサンゴ」


Montipora milleporaのタイプ標本(グレートバリアリーフ産)

夫婦寄り添う姿が。。。。。

2019-12-13 | 雑感

玄関先に住みついた夫婦

 先日、玄関先に置いてあるブロックを動かしたらサツマギキブリの夫婦が肩を寄せ合うようにして縮こまっているのを見つけた。寒さのせいかほとんど動かない。とりあえず、つぶさないようにブロックをそっと戻して放置した。
 サツマゴキブリは熱帯森林域を主生息地とする種で、本州で最も暖かい串本でも、これまで目にすることはなかった。ところが、今の住宅地に越してきてから、冬場に街路樹の根元で死骸をちょくちょく目にするようになった。
 ネットで調べると、温暖化の影響で、それまでの分布北限である九州南部から北に分布を広げており、和歌山県での初確認は1994年とのことであった。さらに、どの記事でも本州に移入した不快害虫として扱われていた。
 しかしながら、サツマゴキブリの大きさこそ、害虫であるヤマトゴキブリやクロゴキブリと変わらないが、純野生種で、体型は小判型で動きは鈍く、しかも羽は退化して飛べず、頭部に三日月状の白色模様がありおしゃれであり、私にとっては不快ではなく、逆にかわいい。ゴキブリを不倶戴天の敵とする家内でも、この種には拒否反応はない。
 さて、玄関先の夫婦の扱いを数日かけて検討した。慎ましく暮らすその姿は、我ら夫婦にも重なる。しかも、この寒空の下、寒さに弱いのに追い立てるのは忍びない。そこで、とりあえず、レスキューし、家で飼うことにした。そのうち、名前も付けよう。





とりあえずの住まい


念のため蓋をかぶせる


回収されて寄り添う二人。左の大きな方が♀と思われる。