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クチヒゲノムラガニの生態

退職し晴耕雨読的研究生活に入った元水族館屋の雑感ブログ

「プチカッパドキア」発見される

2023-11-07 | 雑感




先日、種子島にサンゴ調査に行ってきた。予備日を消化せずに調査が終わっため、最終日の午後は島内観光を楽しんだが、その道中での発見の話。

とある海岸の砂浜に出る途中で、不思議な光景に出会った。頭に貝殻を乗せた柱状の突起が地面からたくさん生えているのである。頂部の直径は1~2cm、高さは5~10cm。サイズや材質は異なるものの、トルコ・カッパドキア地方にある有名な奇岩群にそっくりである。

本体の材質は固まった砂、林の中に形成されたものはほぼ頂部に貝殻を乗せているが、裸出した斜面に形成されたものはたいてい頂部に小石を乗せている。

おそらく、貝殻や小石の周囲が雨で浸食され、このような自然の構造物が形成されたのであろう。この存在に気づけて少し嬉しい。


林内の「プチカッパドキア」





林内に形成されたものはほぼ頭に貝殻を乗せている




外の斜面に形成されたものは頭に小石を乗せているものが多い

オオサンショウウオの大会に参加する

2023-10-29 | 雑感
O大教授の旧友K氏が、はるばる中国地方から会いに来てくれた。地元で開催された「日本オオサンショウウオの会 古座川大会」において教え子である院生の付き添いを口実にして。

私もそれを口実に、まったく異世界である両生類の会議に夫婦で参加してみた。サンゴ脳と化した石灰質のコチコチ頭にはとても新鮮に思えたし、興味もあった。

「日本オオサンショウウオの会」は学会ではなく、参加者は専門の研究者ばかりでなく、むしろそれは少数で、日本各地の保全活動者の情報交換の場としての同好会の意味合いが強い。

発表内容は初めて聞くことばかりで面白かったが、それにも増して参加者のユニークさ、人間模様に感心させられた。社会には実にいろいろな人達が活動している。対象とする生きものが変われば、人の集団も変わる。そして、海とは違った様々な問題も抱えている。その1つを紹介しておきたい。

地元の古座川にオオサンショウウオが棲むことは、昔から遠く耳にしていた。大会では「古座川の個体群は増加傾向にあり、血統も純血で、猛威を振るっているチュウゴクオオサンショウウオとの雑種個体が混じっていない」との報告を聞けて、とてもうれしかった。ただし、本個体群は他から持ち込まれた「国内外来種」であるのを知って困惑した。

淡水域の生物は、例え日本固有種であっても国内外来種の場合は、在来種保全の観点から駆逐されるべき傾向にあるからだ。しかしながら、オオサンショウウオは国の特別天然危険物として厳しく保護されている。また、絶滅危惧種にも指定されている。従って、国内外来種を理由においそれと駆除できる生物ではない。

さらに、
古座川の個体群は、雑種汚染された他の水域から強く隔離されているため、長い目で見れば、当地は保全上重要な資源域となる強い潜在的可能性を持っている。それが叶うのも、守ってからこそだろう。

計測のために一時捕獲された古座川産のオオサンショウウオ。体長80cmの成体。

ジムグリ・アサギマダラ・風景など

2023-10-20 | 雑感
日課の1つにしているのが散歩。たいてい、くじの川古道~橋杭岩を回るコースで、歩数は約8000歩、所要時間は2時間弱である。このコースには田舎ならではの風物詩があり、気分次第で一眼かコンデジのどちらかを携帯し、気まぐれに撮影する。今回は、最近出会った風景や動植物を紹介したい。

①橋杭岩:手持ちでパノラマ撮影するのは難しい。どうしても合成後につなぎ目が歪む。

②お気に入りの、くじの川の里:こちらもパノラマ合成画像。秋の空が良い。

③セイタカアワダチソウ:この花もそれなりに季節を伝えてくれる。

④ジムグリ:初めて出会い、その美しさに感激。写真のものは幼体で、成長するにつれて黒くなる。普段は地中に潜っていて、表には出て来ないとのこと。

⑤トビ:最も身近な野鳥であるが、この個体は近づいてもなかなか逃げず、しかも何かをうったえるように鳴いていた。幼鳥かな?

⑥アサギマダラ:この時期の一時だけ当地に現れ、はるか南に旅立っていく。和歌山で標識放流された個体が80日後に香港で再捕された記録がある。

新種より珍しい?

2023-10-15 | 雑感

機上からの南大東島の眺め


日本において最も特殊な部類に属する島々が大東諸島である。沖縄本島の南東約350km沖合に位置し、地理的には琉球列島に近い。しかしながら、琉球列島はユーラシアプレートの上に乗っているのに対し、大東諸島は水深6000mを越える琉球海溝を挟んでフィリピン海プレートの上にあり、島嶼形成において琉球列島とはまったく関連を持たない海洋島なのである。というのは、大東諸島はニューギニア近くで火山島として形成され、その後プレートの移動と共に5000万年もの歳月をかけて現在の場所に移動してきた来た。ちなみに、もう200万年もすると大東諸島は琉球海溝に沈むそうである。

昔から、大東諸島は憧れであった。絶海の孤島、特殊な地史、日本では無二の環礁構造、島の周囲は断崖であるため人や物資は岸からクレーンでつり上げないと運べない(今は昔より上陸しやすくなっている)、台風の大波が島に当たると島全体が地響きを立てる。。。。。

2022年6月にそんな夢の島(南大東島)を訪れる機会に恵まれ、さぞや珍しい種に出会えるだろうと期待を胸に専門であるコモンサンゴ類の調査を行った。結果は、海洋島ならではの貧相なサンゴ類相であったが、1種だけ新種とおぼしきコモンサンゴ類が採集された。

それは極めて特徴的で、被覆状の基部の上に枝状の突起を持ち、共骨には繊細な霜柱状突起が分布し、莢壁は筒状に突出し側面には肋が認められた。こんなコモンサンゴ類は国内で採集したことはないし、世界中で報告されたどの種にもあてはまらない。ということは未記載種?。

この調査の後に、オーストラリアから日本中のサンゴを調べに来ていたB氏が自宅研究室に立ち寄った際に、自慢げにこの珍種を披露した。彼はコモンサンゴ類にも詳しく、また、世界中のサンゴのタイプ標本を調べている。すると、予想外にも彼は「これとよく似た標本があったかもしれない。すぐには思い出せないので、オーストラリアに戻ったら調べて返事する」と答えてきた。

年末に彼からの連絡と共に画像が送られてきた。「件の種はドイツ人研究者 Ortmann が1888年にタヒチから報告した Montipora stalagmites に似ている」というものだった。B氏恐るべし!!。文献だけではなく、タイプ標本を直接見た人は強い。さて、彼が撮影したストラスブール動物博物館(フランス)に収蔵されているこのタイプ標本の画像を解析したところ、南大東島で採集された標本はM. stalagmitesに間違いないと判断された。

また、驚くべきことに、南大東島で採集した標本は、M. stalagmites の原記載以降135年間ぶりの世界2例目の記録となった。これはある意味、新種を採集するよりも珍しい。さっそく、年明けにこの珍種の論文を書いて投稿し、このほど発行された。

それにしてでもである。南大東島産の標本はタイプ標本に合致したため同定には問題無いのであるが、135年間の間に凡そ1万kmも隔てたタヒチと日本でそれぞれ1標本ずつしか採集記録がない種が存在するというのは異常であり、理解できない。このような少なさでは種の維持など到底不可能であるからだ。もしかしたらタヒチ-大東島間のどこかに知られざる大きな資源域があるのか、あるいはコモンサンゴ類なぞ誰も見向きもしないので単に記録が少ないのか、もしくはこの珍奇な標本はごく稀に生じる雑種なのか。


Montipora stalagmites Ortmann, 1888 ダイトウコモンサンゴ


採集場所

大東諸島の海中は生物相が貧弱で殺風景である


南大東島から遠く北大東島を望む


珍種のサンゴよりも感銘を受けたのがこの製糖工場の煙突である。苦労と共に歩んだ島の歴史と気概を発している。

1勝2敗とピーチポイント

2023-10-07 | 雑感
10月始めに予定していた沖縄でのサンゴ調査が、9月の別件に続いて台風で延期となった。今年の予定調査はこれで1勝2敗。夏季に行う調査は台風の大きなリスクが伴うが、どうも今年は運が悪い。さらに、両調査共に、台風の影響は少なかったことが延期決定後に判明し、とても口惜しい。

口惜しくなるのは、他にも理由がある。それは、もろもろのキャンセル手続きや送ってしまった荷物の回収等の後始末が面倒であるからだ。

特に問題となるのがキャンセル料。調査には依頼元の厳格な予算枠があり、この中にはキャンセル料は見込まれていない。従って、キャンセル料は自己負担となる。また、調査延期の決定が遅れ出発日に近づくほどキャンセル料は高くなる。

ところで、延期となった2つの調査共にピーチ航空を利用する予定であった。キャンセルすると、少なからず手数料が取られ、さらにお金では返金してもらえず代金相応のピーチポイントなるものが付与される。このピーチポイント、有効期限が長ければそれはそれで良いのであるが、期限は半年しかない。半年以内に再調査が実施されれば良いが、そうでない場合は他の目的に利用しないと消えてしまう。

悪いことに調査の1つは丸1年も延期となってしまった。ピーチポイントを無駄にしないためには、どこかに旅行するしかない。ただし、旅行には空港までの交通費(僻地住まいなので空港まで到達するのに時間と費用がいる)や宿泊代、食事代等が余分にかかる。結局、ピーチポイントを無理して使うよりも捨てた方がずっと経済的であるということが分かった。何か理不尽ではあるが、LCCは安いばかりではないということだ。


ツリガネニンジンの花は通常紫~薄紫色であるが、今年は白色のものが目につく。春の新芽は食用に、根は生薬になるという。一度試してみたい。

トリプルな残念なできごと

2023-09-25 | 雑感
5年の保証期間が切れた刹那の昨晩、エコキュートが壊れた。なぜ10年の延長保証に入らなかったのか思い出せないが、とにかく壊れた。モニター画面にはエラー番号と共に、故障なのですぐに修理すべしという表示が出る。

大事の予感がしつつ、早朝、家を建てていただいた白浜にあるN工務店に連絡する。
「家を担当された**さんをお願いします」
(**は昨年退職しました)
「エ~~、では常務の##さんをお願いします」
(##も退職されました)
「エ~~~、誰でもかまわないので対応できる人お願いします」
(それでは手配しますので折り返し担当から電話を差し上げます)

ショックだった。注文住宅である自宅の建設に丁寧に対応していただき知古を得た担当者全員(親子)が何処かに消え失せ、N工務店との繋がりも断ち切れてしまった。何があったのであろう。内紛?。N工務店に問いただすのも気が引ける。こちらの方はエコキュートの故障以上にショックを受け、強い喪失感に襲われた。

幸い、エコキュートのメーカーと対応専門業者に素早く対応していただき、午後には修理が完了した。故障原因は室外機の基盤のショート、代金は片手強。ヒューズ1個(?)で基盤全取替とは今時の修理らしいが、10年過ぎると部品の在庫が処分され、修理自体が不能となり買い換えを余儀なくされる。それを鑑みると、今、基盤を取り替えておくのは全くの無駄ではないということか。


数日前の話。阿尾湿地を訪れたついでに近くにある日ノ御碕パークを20年振りに訪れた。が、すっかり朽ち果てた廃墟になっていた。かつて宿泊したことがある元国民宿舎も休業中の看板が出ていたが、パークがこの有様では再開は困難であろう。ただし、ここから見下ろす淡路島や四国の遠望は相変わらず美しい。「国破れて山河あり」か。日本の衰退をまざまざと見る思いだ。




サンゴの骨をみて生体をみず

2023-09-03 | 雑感
「サンゴの骨をみて生体をみず」:屋内でサンゴの骨格ばかり調べ、野外に出て生体をみないこと。同様の格言に「サンゴの分子をみて生体を見ず」がある。共に「木を見て森を見ず」と同意。


先日、凡そ5年振りにコモンサンゴ類の宝庫である琉球列島の海に調査で潜った。場所は誰もがあこがれる宮古諸島、主に八重干瀬。

潜水した途端、美しい海中景観と、あまりのコモンサンゴ類の豊富さに圧倒された。また、当初はどれもこれも珍しく感じ、採集する標本の優占順位が付けられずに迷いに迷い、パニックに至った。

しばらくして冷静さを取り戻すと、今度は採集しようとするサンゴの種名がほとんど思い浮かばないことに気づいた。

コモンサンゴ類の分類を10年もやっているのに、いったいこの体たらくは何てことだ。自分の無能さに情けなくなった。


サンゴの骨は生体より好きである。骨を調べれば、磨き上げた検索表や膨大な収集標本と照合させて、誰もが忌み嫌う本類の同定を一応はできる。

ところがである。自分が行っている分類は野外では役に立たないことを痛切に思い知らされた。原因は何であろう。頭が悪いからか。

近年記憶力が劣化して来ているののは事実であるがそれだけではない。コモンサンゴ類が豊富なサンゴ礁の海に出る機会が圧倒的に少ないことに思い当たった。

野外での観察と屋内での標本観察との相互フィードバック、それに基づいた経験の蓄積、すなわち野外での「勘」というものがまったく涵養されていないのである。これでは、標本分類はできても自然分類には肉薄できまい。

分類屋といえども生態屋同様に頻繁に野外に出なくてはならない。幸い、今年はあと2回、サンゴ礁の海に出る機会がある。せいぜい、「勘」を養い、野外で種を見分ける直感を磨き上げたい。「優れた直感は自然分類に通ずる」と信じているから。


幸運にも飛行機から拝めた八重干瀬。後光が差して見える?


八重干瀬の海中景観。このような所が残っているのはうれしい限り


離礁上部を埋め尽くすコモンサンゴ類(八重干瀬)


おそらく国内最大級のトゲコモンサンゴ群落(宮古島狩俣沖)


八重干瀬ブルー


池間島ブルー


大神島からのご来光

散歩で出会ったキノコ類

2023-09-03 | 雑感
夏の運動はもっぱらスノーケリング、暑いのであまり歩かない。
歩くときは曇天か、海が荒れている時。

先日、久しぶりにいつものコース(橋杭岩~くじの川古道:夏は逆ルート)を歩いたら、やたら白いキノコ類が目についた。

美しく、大形なので、食欲をそそられなくもないが、やはり素人は手を出してはいけない。



シロツルタケ?:今の時期は大小、あちこちで見られる


シロオニタケ:これまで見た記憶がない。大形でいかにも毒々しい。それもそのはず、テングダケ属である。


シロオニタケ?:傘の直径は掌ほどある。上のが開くとこのようになる?

月下美人の恩返し

2023-07-25 | 雑感
昨年の秋に、枝だけのみすぼらしい姿で廃棄されかけたサボテンの一種「月下美人」をレスキューした。大きな鉢に植え換え支柱を入れて育てていたところ、昨日、一輪だけであるが純白の大輪の花が咲いてくれた。可憐でいて繊細、しかも芳醇。

この花は妻の職場にあったのであるが、放置され、これまで誰もこの花が咲いたのを見たことがなかったという。花は何も思わないが、愛でてあげないと浮かばれまい。



開花前日の蕾。前日までは口は堅く閉じている。蕾は面白いことに、開花前になると鎌首を持ち上げるように上方に向きを変える。


当日になると口がわずかに開くので、開花するのが分かる。土間に持ち込んで観察する。


19:30 口がやや開く。


21:30 9部咲き。


22:30 満開状態。


翌朝 夜明け前にはこのように萎んでいた。この後、おひたしにして賞味させていただいた。匂いは消えてしまったが、適度なヌメリと食感がある。味はあまりしない。

大学の同窓生と会う

2023-06-28 | 雑感

同窓生との古道歩き



大学の同窓生達は65才を過ぎ、だいたい退職したようで、その一人から仲間と会いたいとの連絡が来た。こちらはいち早く退職したとは言え、自宅での研究生活が忙しいので、昔を懐かしみたい欲求は湧かないのであるが、断る理由もないので応じた。

こちらは狭い繋がりの世界で生きてきて、しかも僻地暮らし、複数の同窓生と一度に会うことはほとんどなかった。この前会ったのは誰かの結婚式、もう30年以上も前だ。

さて、どこで誰と会うか。同窓生は日本各地に散らばっている。また、同窓生なら誰でも良いわけではない。特に酒癖が悪いのはもうご免である。声をかけてきた友人に場所と人の選択を任せた。

結果、集まる場所はこちらの地元である本州最南端、メンバーは厳選3人ということになった。一人は伊勢在住、クラスとクラブ(潜水部)が一緒。もう一人は岡山在住、クラスと下宿先が一緒。このメンバーで会うのは大学卒業以来で、実に40年以上振り。

日程は2泊3日、ホスト役となったこちらは、当地を満喫してもらえるように少し考案した。初日は夕方に落ち合って、炉端で語らう。2日目は勝浦でマグロ見学、朝食は新宮でめはり、そして古道歩き、宿泊は湯ノ峰温泉。最終日は丸山千枚田を眺めて熊野駅にて9時半出発の南紀号に乗せて解散。

あっという間の3日間であったが、驚いたのは、互いに風貌の変化と肉体の劣化こそあったものの、性格はまるっきり変わっていなかった事だ。みな昔のまま。この3日間は学生時代にタイムスリップしてしまった。

しかしながら、皆、よく覚えていることよ。こちらはすっかり忘却していたが、数多の失敗談や武勇談を指摘された。とてもここでは披露できない。これから、体が動ける間は年に1回程度、どこか遠方で落ち合うのも悪くない。