エスティマ日和

『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』2章まで収録の、エッセイ集です。独立しました。

喫煙注意報

2005年12月13日 | 雑記

誰にでも、ふれられたくない過去はあります。


その男は、最後のタバコに火をつけました。

その男はヘビースモーカーでした。それは偶然のことでした。

なにげなく鼻をほじっていたら、鼻血が吹き出しました。

きっとどこかをひっかいてしまったのでしょう。

偶然のことです。

男はそばにあったティッシュで、むぞうさに止血しました。

顔の中心に白い花が咲いたように、それは広がっていました。

とりたてて美しくもありませんが、けなされるほどのことでもありません。

よくあることです。

その男は、最後のタバコに火をつけました。


これが止血したちり紙に引火。

その日は乾燥注意報が発令されていました。偶然のことです。

突如、顔の半分が燃え上がってあせらない人間はいません。

あわててちり紙を抜こうとしましたが、燃え上がっていますから抜こうに抜けません。

これが髪の毛までこがすような大火となり、職場の同僚に助けを求めましたが

口を開くことができないので、言葉になりません。

同僚とて、突然鼻が炎上している人間を見るのは初めてです。

同僚は、男の”新しい芸”だと思い、笑いころげてしまいました。

結局、顔半分のまつげ、まゆげ、から前髪までをちりちりにしながらようやく鎮火。

男は病院をたずねました。

「どうしてこんなところを火傷したんですか?」

「言いたくありません・・・」

誰にでも、ふれられたくない過去はあるものです。

ひとつだけ、彼が決意したことがあります。

2度とタバコなんか吸うもんか。

それが男の最後のタバコになりました。




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11 コメント

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Unknown (スパイダーマン)
2005-12-13 08:17:03
ぶわははははははははははははははは

なんだこれw?

こんなしょうもないことを芸術にしたてあげるとは。あんたは天才!!!
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Unknown (ポメラニアン)
2005-12-13 22:08:00
ほっんと面白いです(爆)。

こんな夜分に笑わせられる「読者」のことも考えて下さいネ、家族に怪しまれます(笑)。



でも、私の同僚も意外とヤってくれるんですよ。

几帳面な同僚でした。

朝から鼻血が出たということで、やはり鼻にティッシュを詰めてました。

そのうち朝の部会がエキサイトし始め、彼は何を思ったか、

鼻に詰めた几帳面に丸めたティッシュをおもむろに抜き取り、

灰皿にポンポン(←灰を落とす仕草と思われます)。

その後、几帳面な彼は、周囲の期待通り、タバコに似た形状のティッシュを咥えてくれました。



あぁあぁ、笑いが止まりません。

いつもありがとうございます。

ココにお邪魔すると、一日の疲れが吹っ飛ぶというものです(^^)。
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誰にでも… (明子姐)
2005-12-13 23:35:26


再び 電柱の影より出でて…。





先だっての、暴走気味の「勝手に広報」に、ちゃぶ台返しを覚悟しておりました…。

ご丁寧なレス ありがとうございました。

あまりの気恥ずかしさに お礼もソコソコ、定位置(電柱影)へ直行しておりました。





さて。



誰にもふれられたくない過去…。



今は昔。竹取の翁といふ者ありき・・と 言われる程は古くない話。





と、ある街の と、ある 異国情緒漂うキャンパスに ひとりの少女が居りました。

年の頃は17歳。セーラー服に身を包み 人気もまばらな夕闇の校内を歩いていました。





ドラマの撮影に幾度も使われた事もある校舎。

時代がかった細工が施された階段の手すり。

廊下の軋む音。

普段の教室が在る新校舎では 聴くことの出来ない暖かい音。



少女は、この時間のこの空気が大好きでした。





ふと、ネイチャーコールに誘われて、少女は立ち止まりました。



「たまには古い校舎で…」 



そう呟き、一室に引き寄せられて行きました。

薄暗い空間へ進み入り、ドアを開け 後ろ手で鍵を閉め 身を屈めた…その瞬間。



「ゴツンッ!!」



鈍い音とともに 額に痛みが走りました。

目の前に在ったのは 水の流れるパイプの継ぎ目。



薄暗さと 不案内の空間が 動作の読みを狂わせたのでした…。

痛さと その不恰好さに 額から汗が滲みました。





用を済ませ、手洗い場に行くと 一人の下級生が居ました。

彼女は「きゃっ!」 と 短い叫び声を上げ その場を走り去って行きました。

が、少女は特に 驚きもしませんでした。

なぜなら。ボーイッシュな上級生に 擬似恋愛の感情を抱く下級生は意外に多く

少女を見て 声を上げ 恥ずかしがる様は 日常だったのです。



「ふっ…」



下級生の可愛らしい言動に 少女は思わず笑みをこぼしました。

額から再び汗が流れました。



泡立てた石鹸を流そうと 蛇口に手を伸ばしたその時に・・

白い泡立ちの上に 赤い滴が落ちました。



「ポツン・・ポツン・・」



赤い滴が ふたつ みっつ と 増えていきます。



少女は、訳が判らずに 次々と増える滴を呆然と眺めていました。



ようやく異変に気付き、恐る恐る 目の前にある鏡に目を移すと…。

そこにうつったのは 血だらけの顔面。



「トイレの花子って血染めだったか!!??」 



額を強打してから 何度も流れ伝ったものは 汗ではなかった…。

その事を理解するまでに 数十秒。



そして 下級生が走り去った 本当の訳を理解するまでに さらに数十秒。









誰にでも、ふれられたくない過去はあるものです。



薄暗いトイレには 気を付けましょう…。



学園スプラッタ物語。







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^^ (hitotosite)
2006-03-05 01:04:01
面白いですね^^

笑わせていただきました!またお邪魔いたします
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Unknown (sainei)
2006-08-31 14:10:59
わたくし、この話でもう2日も

思い出し笑いが続いています。



勤務中でさえ、思い出すと笑いがこみあげ

困っているのです~笑

はい腹筋はずーっと痛いです。
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神出鬼没? (くろわっ)
2006-08-31 15:32:26
saineiさん、突如、もぐらたたきみたいに現れますねぇ(笑)。



これは「芸術」に挑戦した「作品」でした。

他とタッチがちがうでしょ?



まぁ。これくらいの文章は書けるってことですね(ちがうか・・)。



もちろん私の話ではありません。だんじて。
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Unknown (みゆき)
2010-04-28 16:24:35
禁煙できて、良かったですね。
それにしても、激 痛そう!!!!!

それを、笑い話にするなんて…
痛みは消えたんですね。

やけどの跡は消えたのでしょうか?
髪型は!?
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Unknown (ゲンくん)
2011-03-22 15:42:10
サイコー!
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Unknown (さらさ)
2015-09-23 14:43:58
職場の喫煙所。周りには知らぬ人ばかり。
ひとりタバコを吸いながら読んでいました。

ぷっ

笑いがこらえ切れませんでした。

周りの視線が気になります(;´Д`)いやん
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Unknown (まったく同じ現象を令和になって経験した者)
2020-09-29 17:50:28
つい数時間前にまったく同じ事をしでかしました。
鼻の皮が火傷してヒリヒリします😭
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