エスティマ日和

『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』2章まで収録の、エッセイ集です。独立しました。

連続小説『空からやって来た少年』第1話

2010年02月08日 | 連載
ぼくちゅう以来の、ひさびさの連続ものです。

『空からやって来た少年』

その第1話:教えて(1)

少年などというものは、夢も希望も未来もあって、
それを空いっぱいに広げているようなイメージがあるけれど

実はそうしたものは、おろかで、浅く、
常に昨日観たテレビとか、おととい借りたマンガの影響がモロであったりして
夢というには、あまりに恥ずかしいシロモノだった。

その日も、僕は、田んぼのあぜ道の小高い所に座って
延々と、はてしない空を
夢見がちな瞳で見つめていた。

単純に稲刈りの手伝いに飽きただけだったように思うが。

とにかく空を見ていた。

少年が空を見つめているのは、なんとなくカッコイイ。
それが秋の空ならなおさらだ。
風が髪などをゆらしていけば、もう、ゆるぎもしない「主人公」なんだから。

「どうしたの?」
と、母。

たぶん、息子が「稲刈りに飽きた」ということも
とっくに悟っていたと思うのだけれど。

その母に向かい
「ああ、母ちゃん。空って広いね」。

今思えば、「手伝いは」どうしたの?という質問に
「空って広いね」は、泣けてくるほどバカな答えだ。

それでも、

「ああ、そうだね」。

母はいつも彼女がそうするように、
この時も、子供の夢想につきあった。

「空って、でっかいよなー」

なまいきに草などをくわえ、
草の上にねころぶ少年。

おそらくは、ゆうべテレビで観た
「勝海舟」だか「坂本龍馬」かなんかの話に影響されただけなのだが

そういう日には、空を見上げていれば、
「大物になれる」と、信じてうたがわなかった。

 いずれ天下とってやる!

でも、今夜、テレビでメロドラマをやれば
きっと、今度は夜空を見上げて

 ひとりの女性のために生きよう!

そう決心するにちがいないのだが。

でも、この時点では、まだメロドラマを観ていないので、
空を見上げていれば、いずれ天下をとれる、と信じて疑わない。

「あの空はさー。世界中につながってるんだよね?母ちゃん」

ほらね。

でも、母は、そんな僕を、百も承知でありながら

「ああ、そうだね」。

僕のとなりに腰掛けて、愚息のにわか大志につきあったりもした。
母親もたいへんだ。

「母ちゃん。ボク、大物になれるかな?」

「そうだねぇ・・・・」
母は、ちょっとだけ考えこんで、

将来、天下をとるかも知れない少年に向かって、

「その前に、お前がねころんだとこ。ヤギがフンしたんだけど」

「え~~~~~~~!」

 早く教えろよ!

少年の世界に君臨する野望は、
ヤギのフンによって、もろくもくずれさった。

少年などというものは、せいぜいその程度。


   つづく・・・

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 2章-第7話

2006年06月10日 | 連載
10日ぶりのドキュメント連載です。今回はスプーで自信を得ましたので、イラストを入れてみました。
マウスで書いたのですが、しょうこ画伯より、少しましになりました。
ああ、それにしても手が痛い。

前回までのお話。
1章 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話
2章 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話

どこまで書いたんでしたっけ?
ああ。駐在さんに本屋さんから引きずり出されるとこまででしたね。そうなんですよ。とんでもねーおまわりでしょ?

2章-第7話 万引き疑惑 のつづき

なにもしていないのに、駐在さんに店の外まで引きずり出された僕たち。
もう店内は騒然。書店の店長さんは、なにごとかと店の外まで出て来ました。

「おまわりさん、その子たちがなにか?」

「いや。こちらにおまかせください。ご心配なく」。

いや、ご心配もへったくれも、なんもしてませんから!
そんな言い方したら誤解生むやろがー!ぼけ!

我々のそんな気持ちも無視し、意気揚々と駐在所に向かうおまわりさん。
もう騒ぎは店の中だけではありません。そりゃ商店街を通る人、みんなびっくりです。
だって、高校生が2人、おまわりさんにひきずられてんですから。そりゃなにごとかと思いますよ。

「てめー!駐在!はなせ!ぼけ!」

西条くんは、犯罪慣れ(?)しているせいか、捕まり方がうまい。
って、感心してる場合じゃないですよねぇ。もう、この商店街歩けません。

幸いと言うか、駐在所は、この書店のはす向かいでしたので、距離はわずかに20mほど。
ふりむくと、書店の店長さんや、店にいた学生たちが、興味津々でこちらを見ていました。

ほどなく駐在所に到着し、

「座れ!」

ああ・・・なんてこのパターンの多いこと。

「てめー!なにしやがる!」

息巻いているのは西条くん。僕はさすがにここまでの口はきけません。

すると駐在さん。やることをやってすっかり気分がいいらしく、にこやかに

「まぁ。お茶でものんでけ」。

「おちゃぁ???ふざけんじゃねーぞー。俺ら、そんな暇・・・・」
と西条がどなっているさなかで

「お~い。加奈子ぉ~、お茶いれてくれ~」
奥さんをよぶ駐在さん。

「はぁ~い
奥から奥さんの声。

「・・・俺ら・・・そんな暇、ありあまってこまってました」。

おいおい。西条。なんで妥協してんだよ?

奥さんがお茶を運んで来る前に、駐在さんがいきなり本論に入りました。

「おまえら、こないだはよくもやってくれたなぁ」。

「応援のことですか?」

「ったりまえだ!」

「いやぁ。僕たち、日頃お世話になっている駐在さんに、なんとかエールを送りたくて」。

「ふん。エロ本ありがとう、のどこがエールだ? あ?」

そこへ奥さんが僕たちの分と、3つのカップを運んで来ました。

「うふいらっしゃい。またつかまっちゃったの?

「はい~。つかまりました~」。

西条。なにニコニコしてんだよ・・・。捕まった顔しろよ・・・・。さっきの怒りはどこへいった?

「うふふはい。どうぞ

「いただきますぅ~~~」。

すでにヘロヘロの西条くん。
ああ。神様。どうして「男」をこういう動物に作りたもうたのでしょう?

いかんいかん。ここは僕がしっかりしないと。
すっかり駐在ペースで事が運んでいる。

「えっと、ママちゃり君でしたっけ?あなたもどうぞ

「いただきますぅ~~~」。。


        直接対決というのにすっかり骨抜きの僕たち。
        このまま駐在ペースですすむのか?
        2章-第8話へつづく

※もうすぐ700日戦争の引っ越し終わります!次回はたぶんそちらです。

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 2章-第6話

2006年05月31日 | 連載
前回までのお話。
1章 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話
2章 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話

30日アップの予定が31日になってしまいました。
よくあることです・・・。特に月末。

2章-第6話 万引き疑惑

逆襲がみごとに成功したとは言え、翌日の登校は、僕にとっては憂鬱なものでした。
なにしろクラスの女子に、自転車の荷台に満載した超エロ本『○○ファン』を目撃されています。
いまごろはきっと、女子の間では、僕はたいへんな変態としてウワサになっているに違いありませんでした。

ちなみに僕のクラスは、38名ほどおりましたが、うち24名が女子、というたいへん恵まれた環境だったのですが、いまとなってはこれがアダです。つまりはクラスの過半数が「変態扱い」するということなのですから。

教室につき、重い扉を開きました。その瞬間の女子の凍り付いた雰囲気。
「あ、お、おはよーー」。棒読みで挨拶するボク。
いつもはやかましいほどの女子たちは、誰ひとり、挨拶を返しませんでした。それどころか、ただでさえうっとうしい男子から
「エロ本つんでたんだって?」
などという、いらぬ詮索まで入りまして、それはすでに女子だけではなく、クラス全体の話題であることがわかりました。
この雰囲気は、もう小学校の野良やぎ事件以来でしたねぇ。

しかし、男子がこの質問をしてくれたおかげで弁解の機会が与えられました。
僕は知りうる言葉の全てを使って、それが「西条のものである」ことと、駐在さんによって積まれたことを説明しました。が、後者については「おまわりさん」という職業からか、女子はこのことを信じようとしませんでした。

 おまえら、あの駐在を知らないからだ・・・。


ところで僕達も健全(か?)な高校生ですから、なにも毎日が毎日、イタズラばかりを考えていたわけではありません。ちゃんと高校生としての生活があるわけです。たとえ変態でサイテーで前科者でも学業はたいせつです。
すでにこの時、我々には中間試験が迫っておりました。

この日から数日後、僕は、西条くんと、村山くんという新キャラとともに、本屋さんにおりました。
言うまでもなく、中間試験の参考書を探すためです。この日、あのいまわしい事件がおきました。

 おい、西条

どこからともなく声が聞こえてきました。

西条がきょろきょろしていると

「おい、ママちゃり」。

僕のことをママちゃりと呼ぶ人間はひとりしかいません。

するといくつかの本棚の向こうに

「駐在!」

駐在さんは、本棚の向こうからさかんに手招きしています。
今日は制服です。駐在さん。

とっっってもいやな予感がしましたが、なにしろ国家権力。行かないわけにはまいりません。

我々が、
「なんですか?」
と声をそろえて駐在さんの前に行くと、へんににやける駐在さん。

そこは成人雑誌売り場。
ああ、思い出してもいやになりますが、この話には「成人雑誌」がかかせません。情けない。

僕たちが駐在さんの真ん前まで行くと駐在さんは
「あのな・・・・」と小声で言うので、思わず顔をよせてしまいました。

駐在さん。そこでしめたとばかりに突如僕たちの二の腕をわしづかみにすると

「お前ら!なにやってる!今日という今日は許さんぞ!」

ぐいぐいと僕たちを店の外へとひきずっていきました。

「な、なんですか?いきなり!」
当然の質問には答えもせず、

「話は署で聴く!」

と言いながら、書店のあるじに会釈などして、我々をとうとう店外へと連れ出したのです。

もう店内は騒然。そりゃそうです。
高校生が警察に腕をひっぱられて、連れ出されているわけですから。それも成人雑誌売り場。

いや。これってどう見てもエロ本万引きしてつかまったようにしか・・・・・・

  あ・・・・・!


     誰がどう見ても万引きの僕たちの運命は、2章-第7話へとつづくのです

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 2章-第5話

2006年05月24日 | 連載
う、うれしい。ポツポツとこの連載にもコメントが来るようになりましたよ。
だいたい同じメンバーですけど。でも、読んでくれてる人がいるんですねぇ。
ありがたやありがたや。
あんまりうれしいんで、今日もいっちゃいますね。って、他にネタがなかったという説もある。

前回までのお話。
1章 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話
2章 第1話 第2話 第3話 第4話

2章 第5話 大応援団 のつづき

僕たちは意気揚々と駅からもどりました。あの「技」のすごいところは「こちらの恥は一瞬の恥、相手の恥は一生の恥」なところです。
今頃駐在さんは、とっても居心地の悪い思いをされていることでしょう。

西条くんが思い出したように言いました。

「ところでさぁ、あの電車、俺も乗んなきゃいけなかったんだけど」。

気づくの遅すぎ。

しかし、この帰りの電車を逃がした男はついていました。
なぜ神様がこんな男に味方するのかはよくわかりませんが、僕たちが横断幕を学校に返しに向かう途中で、その神様は現れました。

そう。女神様です。

僕たちが交差点で停まっていると、その向こう側を自転車に乗った奇麗な女性が通り過ぎました。

「あ。駐在さんの奥さんだ!」
「ほんとだ。あいかわらず奇麗だなぁ」

「よし!追いかけろ!」

言い出したのは当然西条くん。
追いかけろって、お前、さっきその人の旦那にさんざんなことしておきながら・・・。

と、僕はその葛藤に悩んでおりましたが、まわりの7名はとっくにダッシュしているのでした・・・・。
でも、おいついたとしてなにをするというのでしょう?

しかし、間もなく奥さんは射程圏内。

「後ろ姿もたまらないなぁ・・・」
確かに。否定はしません。

「俺さぁ・・・」。
僕の後部座席(と言うのでしょうか?)で西条くんがしんみりと切り出します。

「俺さぁ・・・もし生まれ変わったら・・・・」
「ああ」



「自転車のサドルがいいなぁ」

それって無機物だからっ!
せめて生物に生まれ変われよ。西条。

やがて奥さんは、スーパーに到着しました。
追いかけて来た僕たちも、用事もなくスーパーへ。
これって集団ストーカーでは?

「あら。あなたたち

「奥さん、こんにちはぁ~」。
デレデレと、しかし声を合わせて挨拶する僕たち。

しかし、駐在さんは僕たちの話をつつぬけにしています。
はたして彼女が我々をどう思っているかは、かなり疑わしいものがありました。

「ウフまたなにか悪いコトしてきたの?

「いや・・・・そんな・・・・」
まさかその標的は、またしてもあなたの旦那さんです、とは、とうてい言えません。

しかし、あの駐在さんは、どうやら僕たちのことを、そんなに悪くは言っていないようでした。
それは彼女のそのくったくのない笑顔から読み取れました。

「あ、あのぉ~、おくさん」
唐突に声をかけた西条くん。

「あの、あの・・・」

「なぁに?

「手首、見せていただいてもよろしいですか?」

げげ!

この大ウツケがぁっ!!!
どこの高校生が人妻の手首を確かめる???

我々は、全員でこのうつけ者をぼっこぼっこに殴りつけ、
 「な、なんでもありません!さよーならー」
大慌てでその場を後にするしかありませんでした・・・・・。


    2章-第6話へつづく・・・・駐在さん逆襲の逆襲の逆襲開始。

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 2章-第4話

2006年05月22日 | 連載
20日のお約束でございました連載 2章-第4話。が、コンピューターのない世界におりました。すみません。
大慌ての4話アップでございます。

前回までのお話。
1章 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 
1章 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話
2章 第1話 第2話 第3話

2章-第4話 大応援団

我々が駐輪場でうだうだしていると、さらに下校してきたメンバーが加わり「うだうだ」は、9名に膨れ上がっていました。

そこにバレーボール部の連中がランニングからもどってまいりました。
そこには2名ほど我々の「メンバー」がいたのですが、彼らはランニングの列からはずれると、すぐさま報告に来ました。

「あのさー、駅に駐在さんがいたぞ。なにやら私服だった」。
「え!ほんとか??」

これは聞き逃せません。速攻逆襲のチャンスです。

「間違いないだろうな?」
「ああ、たぶん、電車に乗るんだと思うよ」

我々は顔を見合わせました。そして言うまでもなく、即逆襲の準備にとりかかったのです。

「次の電車までは?」
「まだ30分以上はあるぜ」。

田舎のことなので、電車の間隔は非常に長く、また行き先も「上り」以外は、ほぼ考えられません。

僕たちは、30分以内で一旦校内にもどり、「大道具」を用意する必要がありました。
しかし、僕たちには、シチュエーションごとにイタズラの「定番」がありましたので、その要領のいいこといいこと。これをもっと他のものに向ければ、きっと全員大成したに違いありません。

「あと10分だ!急げ!」

準備した大道具をかかえ、駅へととばす僕たち。
駅は、学校からは近く、自転車では、わずか5分もかからないところにあります。また、駅まではずっと下り坂であるため、2人乗りを混じえた僕たちには、実に便利でした。

駅前にすべりこむように到着すると、なにやら怒鳴り声が・・・。

「こらぁ!二人乗りはいかんぞ!」
「・・・・・って、またお前らかぁ・・・・・」。

駐在さんです。
駐在さんは、2人乗りをしていたのが僕たちだとわかると、かなり落胆したように肩を落としました。

「おまわりさん、今日、非番なんですか?」
「当たり前だ。あんなこと公務中にできるか」。

あんなこと、とは、自転車にエロ本を縛り付けたことでしょう。
私服でやってたとなると、もっと怪しいおっさんですけど。

「お?お前、西条!」

どうやら西条くんと駐在さんは初対面ではないようです。もちろん、原付での速度違反では面識があるはずなのですが。
それ以外にも、警察関係者とどういう面識があっても、まったく不思議じゃないやつでした。

「お前、死んでたんじゃないのか?」
「え?そうなんですか?」

西条くんは、我々が言い訳の為に彼を殺したことを知りません。

「そうなんですかって、お前、本人なのに知らないのか?」
ふふんと、にやつく駐在さん。
「おまわりさんも馬鹿だなぁ。本人だから知らないんじゃぁないですか」。
「う・・・・」。

西条、一本!

「おまわりさん、電車でどこかいかれるんですか?」
「あ?ああ。ちょっとヤボ用があってな。○○市までな」。

○○市は、県庁所在地。電車では1時間以上もかかります。
我々は、おまわりさんがこの「長時間電車に乗る」ことに歓喜しました。なぜ?
すぐにわかります。

「ところでお前ら、せこいいたずらしてんじゃねーぞ!」。
「おまわりさんこそ!僕はおかげで、学校じゃ変態扱いされそうなんですからね」。

この時、駐在さんは、確かにニヤリとしました。
おそらく、自分の作戦が的を得たことがうれしくてしかたないのでしょう。

「お、ママチャリ。お前、トランペットなんかふくのか?」
僕の自転車のカゴのトランペットのケースを見つけて、話をそらす駐在さん。

「ええ。すぐにわかります」。
「すぐ?」
「いえ」。
「ふーん。どんなやつもひとつくらい芸があるもんだな」。

カチーン。でも今はがまんがまん。西条くんが僕の肩をポンポンとたたきました。

そこにのぼりの電車が到着し、話は中断。駐在さんも僕らもホームへと入りました。

「なんだ。お前らもどっか行くのか?」
「いえいえ。僕らは、ホームまで見送りだけです」。
「ふーん。見送りねぇ」。

実は、ホームに入る時、僕たちは駅員さんとひともんちゃくがありました。
手荷物が大きすぎる、という忠告です。
が、これはホームまでで電車には乗らないことを伝えて一件落着。
もちろん、駐在さんは、そんなことは気にもとめませんでした。

やがて駐在さんは、僕たちにさんざん小言を残して電車に乗りました。
僕たちは、ホームから電車の中の駐在さんにさかんに声をかけました。
実は大声を出しているフリだけで、たいしたことを話しているわけでもないのですが、さかんに指などをさして、駐在さんの気をひきました。

駐在さんは、電車の窓際にきて、窓を開けました。

「あ?なんだって?」

「おまわりさ~ん。こっちこっち~!!」

「だからなんだってんだ?あ?」

窓から身を乗り出す駐在さん。
そして発車のベルがホームに鳴り響きました。

それは逆襲のベルでした。

僕たちは、用意してきた横断幕を広げました。その長さ6m!
これは高体連用の応援団のものを拝借してきたものです。

そしてシンバルを高らかにならし、トランペットでファンファーレをおもいっきり吹き鳴らしました。
電車の中のひとたちがいっせいにこちらを見ています。

そして全員でエール!

「がーんばれ、がーんばれ、駐在さん!」

横断幕にはこう書いてありました。


おまわりさんガンバレ!エロ本ありがとう!

直後、電車は扉を閉じ、驚きで声も出ない駐在さんと、爆笑する乗客たち、そして1時間にも渡る「恥ずかしさ」をつんでホームを後にしたのでした。


       2章-第5話へと続きます

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 2章-第3話

2006年05月16日 | 連載
今日のNHKアナウンサーはイマイチな表情で残念。
お約束。第3話です。

前回までのお話。
1章 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 
1章 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話
2章 第1話 第2話

第3話 バター騒動 の続き

よりによってクラスの女子に、超エロ本『○○ファン』の山積みを目撃されてしまったあわれな高校生「僕」。
山積みしたのは、言うまでもなく駐在さんであろうことは間違いありませんでしたが、あの制服で、学校に入って来てもくもくと自転車に結びつけてたんでしょうか?
想像を絶するおまわりです。

ああ、そんなことはともかく、明日から学校では「変態」として過ごさなくてはなりません。
「前科者」の上で「変態」・・・。もう、青春のロマンスはクラス内にはいない、と覚悟しなくてはなりません。
おまけにまだ紐はとけねーし。

と、そこに本来の「変態」、西条くんが部活を終えて仲間とともに下校してまいりました。

「西条ぉぉぉぉぉ~」

「お。お前ら、なにやってんの?そんなとこで?」

まったく同じシチュエーションでありながら、さっきの女子との差!
女子はピンクな声でしたが、こいつは黒です。

我々が事の成り行きを話しますと、彼は意外なことに爆笑するでもなく、腕組みなどして○○ファンの束を見つめているのでした。

「うーむ」。

西条。考えなくていいから。はっきり言って無駄だから。

「うーん・・・・」。うなりつづける西条くん。

「あのさ」。
「なんだよ?」

「その荷造り紐が荒縄みたいでなまめかしいよな」

だから・・・・考えなくてよかったのに・・・・。

しかし、彼はやおらポケットからライターを取り出すと、その紐に火を放ったのでした。
めでたく雑誌たちは「緊縛」から解かれ、晴れて自由の身に。
でも、西条。なんでポケットにライター入ってる?聴く方が野暮ってもんか?

西条君が仲間をひきつれてきたので、総勢6名となった僕たちは、男子置き場に自転車ごと移動し、さっそく対策を話し合うことに。

「なんかさぁ。今回のは、敵にタマあげただけみたいになっちゃったな」。

「誰だ?まとめておいてこよう、なんて言い出したのは?」
西条くんの質問に、残りメンバー全員が一致して彼を指さすと

「え?俺だっけ?」

そうです。そもそものアイディアは西条くんでした。

「まぁ、作戦は失敗もあるさ。それより、次の行動にいつうつるか、だな」。
と、とりなしたのも、当の本人。

事実、僕たちは、度重なる失敗に、少々へこんでおりました。
なにしろ僕は、西条のおかげで「前科者」の「サイテー」の「変態」です。

「逆襲してくるってことは、ききめはあったってことなんじゃないかな」。

確かに。それは言えていました。
しかし問題は残り8冊。
駐在さんが、これをどう使って来るかが問題でした。うち一冊はバター付き。

そこで僕たちは、速攻で次の作戦にうつることにしました。
とりあえずは「駐在さんの一日」を調べること。

なんか、小学校の自由研究みたいな微笑ましい話ですが、目的が違います。
幸いにして、その6名の中には、面のわれていない2名がおりましたので名誉の抜擢。
作戦の成功を誓い合った我々でした。

 ところがところが。

思わぬことで、その日のうちにこっちの逆襲のチャンスがまいりました。
神様は見捨てていなかったのです。たとえ「サイテー」の「変態」の「前科者」(順不同)でも・・・・。

それは、この会議から、わずかに数十分後のことだったのです。

   2章 第4話へ続く

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 2章-第2話

2006年05月12日 | 連載
お約束の日なので、お約束の2章 第2話です。なんか「納期」みたいになってきちゃいましたねー。

前回までのお話。
1章 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 
1章 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話
2章 第1話

翌朝、僕たちは例によって駐在所を避けるために、回り道の急な坂を登らなくてはなりませんでした。
それにしても、高校生にして、すでに警察を避けて通るって・・・・。
人生にもわもわと暗雲がたちこめる気分が、さらにペダルを重くしておりました。

なにしろ「バター付き」の挑戦状です。よりによって・・・。
言うまでもなく、バターは黒塗り部分だけに塗られているわけで、その目的は、素人目にも明確。
そこだけ「シミ」・・・・・。
それが全ページ・・・・。西条・・・・・。

幸いにして、その朝、駐在さんと会うことはありませんでした。
しかし、あの駐在さんが、そのままなにもしない、というのは考えにくかったので、僕たちはさらに次の策をねっておりました。

予想は当たりました。
それは全授業が終わり、下校する時のことです。

ところで、僕の自転車がママチャリであることは、この戦いの前哨戦『俺たちは風』で書いた通りなのですが、覚えていらっしゃるでしょうか?
このために、僕は最後まで駐在さんから「ママチャリ」と呼ばれることになったのですが、当時の男子生徒の大半は、変速スポーツ車に乗っておりましたから、そういう意味ではちょっと変わっていました。

自転車を置く駐輪場は、特定の場所指定はなかったのですが、登校の時のグループ単位で停めていくため、男子と女子が奇麗に分かれていまして、それぞれ「男子置き場」「女子置き場」と呼ばれていました。

さて、部活も終え、友人と2人で下校しようとすると・・・

自転車がない。

WHY?

「なぁ、今日、自転車で登校したよな?」
「ほかに手段ないだろ?」

盗まれたのか?しかし、なぜ、とりたてて奇麗でもない、しかもママチャリが?

と、自転車置き場を見回すと、ありました。
なぜか、女子置き場にポツンと、僕のママチャリ。

?????

すると友人。
「おい、荷台になんか積んであるけど」。

ほんとだ。なんだろう?
と、自転車にかけよりますと・・・・。

なんと。それは『○○ファン』の束!
4冊ほどが、荷造り紐で、ガッチリと荷台に結ばれています。

やられた!!!!!!!!!!!!!!

しかもそれは女子置き場。まわりのほとんどの自転車がない、ということは、まわりの女子のほとんどがそれを目撃した、ということ???

僕は顔面蒼白。クラクラしました。

「と、とにかくはずさないと」。
「そ、そうだな、まだ女子が来るからな」。

ところが。ゴム紐と違って、荷造り紐のとけないこと。相当にガッツリ結ばれているのです。

その間にも、ちょくちょくと女子達が自転車をとりに来るものですから、その都度、僕たちは、実に不自然な姿勢で荷台のエロ雑誌をかくすはめになりました。

「くそ~。とけねーーーーー」。
「駐在だな」
「やるもんだなぁ・・・」。

感心してる場合じゃありません。

と、その時、ちょうど同級生の女子2名が、やはり自転車をとりにきて、僕たちに声をかけてきました。

「あれ?なにやってんの?」

げ。。。

「な、なんでもねーよ。あっちいけよ!」

「あ。。アヤシー。」

いつもはこっちから近寄りたい女子も、この時ばかりは違います。

「いいから、こっちくるなよ。さようなら。明日また会おうね!」

「なにかかくしてるゥ」
「かかか、かくしてねーーって!あ、あ、愛してるからコッチ来るなっ!また明日。ね。ね」。

ますます近づいてくる女子たち!絶対絶命!
こんなの見られたら、明日から学校に来れません。普通のエロ本ならともかくなんてったって「○○ファン」。そりゃ表紙からして違います。僕たちはガードを固めました。

しかし

「なにかくしてん・・・・・・・・・・」




目撃。





ああ。お母さん。今日という日まで僕を育ててくださってありがとうございました。僕の人生は、今終わります。せめて僕の葬式には、西条はぜったいよばないでください・・・・。
(ボヘミアン・ラプソディーより)







「サイッッッテーーー!!!」

「ちがうんだ!これは・・・これ・・・・は・・・・」。

女子たちは逃げるように去っていきました。

「ちがうんだよー」 だよー・・・・  だよー・・・・  だよー・・・・ だよー

僕の声は、むなしく自転車置き場にこだまするのでした。

        2章 第3話へ続く 残り8冊、「最低の変態」になった僕の運命は?

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 2章-第1話

2006年05月08日 | 連載
お待たせいたしました。どれだけの方が待っていたのか、よくわかっていませんが、2章スタートです。

最近、犯罪の若年化がすさまじいですが、こうやって読み返すといい時代でした。
こんなことが許されていたんですからねぇ(許されてませんでしたけど)。
ちなみに1章をまだお読みでないかたは、こちらからどうぞ。
前回までのお話。
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話

ぼくたちと駐在さんの700日戦争 2章

1.バター騒動

僕たちは、宣戦布告の回答として、駐在さんの机の上に12冊の○○ファンを並べてきました。
西条くんは、僕の自転車の後ろに乗り、逃げろ、だの、飛ばせ、だの好き放題言っていましたが、しばらくすると、またなにやら悩んでいるようでもありました。

「西条、よかったのか?あの本、高いんだろ?」
すると西条くん
「え?大丈夫。あれくらい暗記してるから」。

どうやら悩みはそれではないようです。
しかし暗記って、エロ本だから。しかも何百ページあるでしょう?

「お前なぁ。もっと他のもの覚えろよ。そんなもん暗記する脳細胞があるんだったらさ」。
「うーん・・・。まぁ、好きこそモノの上手なれってな。得意不得意があるんだよ。脳にも」。

どういうモノの上手なのでしょう?
こいつの脳の9割は煩脳といわれる脳にちがいありませんでした。

しかし

「あ。お前らも読みたかった?」

う・・・・。そこを言われると弱い。

「たださ・・・あの本・・・」
西条くんが続けました。

「こないだのより、もっとすげぇテクが書いてあるんだよなぁ・・・。大丈夫かな。奥さん」。

またそっちか?
テクってなんだ?テクって?『縄に××××する女たち』より、すごいテクか?

「いや・・・・大丈夫ってのも困るなぁ・・・」。

コイツがなにを困るのでしょう?

「またそれを悩んでたのか?お前」。

「いやいや。今回は違うよ。もっと深刻なこと」。

「なんだよ。話せよ」。

コイツのことですから、作戦にどんな影響があるかわかりません。

「いやぁ。あの中で1月号だけな・・・・」

「うんうん」


バターとかぬっちゃってるんだよね~」。

「はあ?」

「そいつがさぁ、乾かなくて」。

なぜバターが塗ってあるか、と言いますと、一時期そうした本の「黒塗り」部分がバターで落ちる、と、まことしやかにささやかれたことがあったのです。むろん、とんだガセネタなんですが。
バターは油分なので、ずっとシミとして残る・・・・らしいのです。あくまで聞いた話ですが。

「お前ねぇ・・・・それを置いてきたわけ?」

「え?12冊揃えろって言ったのお前らじゃん!」

いや。言ったけど。それなら11冊でもいいものを・・・。

「はぁ~・・・・・」。

西条くん以外、全員が溜息をついた理由を、彼はまったく理解できないようでした。

「それもな、ほぼ全ページなんだよね~・・・」。

1ページだめならあきらめろよっ!
なぜ全ページ試す!?

「え?試すだろ?普通」。

コイツの「普通」がわかりません。

いずれにせよ、とんだ恥さらしな挑戦状となったことだけは確実でした。

    2章 第2話へ続く この「1月号」というのを記憶しておいてください

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第11話

2006年04月29日 | 連載
あー。長かった。1章、本日完結です。

前回までのお話。
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話

5.駐在さんの逆襲 の続き

僕たちは、事態を知らせることと、苦言を言うために西条くんのもとへ行きました。

西条くんは、事の子細をひととおり聞くと、例によって思案しておりました。
彼の場合「ヘタの考え休むに似たり」という諺どおりなのですが、

「それで・・・・・」

ようやく口を開きました。その”悩んだ”第一声が

奥さんの手首に縄の痕とかなかった?

はあ?

我々の落胆ぶりをどう表しましょう?

「会ってねーし、お前、事態がわかってないだろう?」
「そうか。会ってないのかぁ。じゃぁ確認できないなぁ」

いや・・・。そういう確認で駐在所行ったわけじゃないから。

しかし話題は、当然駐在さんという「人物」について。
僕たちは、様々な「悪さ」を行ってきましたが、大人からの「逆襲」というものに会ったことはなかったので、正直、面食らっていました。

「なんかねぇ。あの駐在さん、元超族らしいよ」。
言い出したのは、警察官の弟。

「族」というのは、当然、「貴族」とか「華族」とかのことではありません。
言うまでもなく「暴走族」のことです。
情報源が情報源なので、信憑性は非常に高いものでした。

「まぁ。今日帰ったら兄キに確認してみるけどね。一度そんな話を聞いた」。
「族、ねぇ・・・」。

我々は、放課後「緊急集会」を開くことを決定しましたが、その最中、校内放送で西条君が呼ばれました。
西条君が校内放送で呼ばれるのは、避難訓練などよりはるかに頻繁でしたので、学校中が馴れっこでしたが、それはまた、なにかが起きる「きっかけ」であることを我々は理解しておりました。

放課後、ふたたび僕たちはフルメンバーで集まり「善後策」を話し合いました。
でも結論は決まっていました。
こんな「手応え」のある楽しいことから降りるわけにはいきません。
相手が「権力」を持っていることも、僕たちを燃え上がらせました。

名付けて『逆うらみ大作戦』。第一次決行は、明日。


学校から帰宅すると、母が庭に出ていて言いました。

「さっきねぇ。駐在さんが見えられて」

「は?駐在?」

いやな予感。

「お前が、拾得物届け出の控えを忘れていったとかで、わざわざ届けに来たんだよ。お前にわたしてくれって」。

そうかぁ。これかぁ。「持ってかなくていいのか?」の答えは。

例の「特集 縄に××××する女たち」と記載された公文書です。
今思うと、あれは正式な書面ではなかったように思います。
おそらくは、駐在さんがコピーからつくったものだと思うのですが、だとすると公文書偽造になると思うのですが、まぁ、その程度は平気で行うかただった、ということは、すでにうすうすおわかりでしょう。

「お前・・・・・」

「なに?」

「拾った本を届けるなんて、偉いね」。

駐在さんは、私の母を「普通の母親」と思っていたようですが大間違い。
なにしろ「神童」と呼ばれた方ですから。


翌日、僕たちは西条を先頭に、再び駐在所を訪れました。

そして彼の机に、○○ファン1月号~12月号まで1年分、奇麗に並べて立ててきたのです。

さすがに12冊並ぶと壮観!

これが僕たちの駐在さんに対する「返答」でもありました。

それにしても、毎月とってたのか。西条。『○○ファン』。


     --  第1章完結 --


       2章は書くかどうか、GW明けに考えます。長いこと読んでいただきまして、ありがとうございました。
       感謝。

2章はこちら

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第10話

2006年04月27日 | 連載
うーん。第10話だよ。ここ始まって以来のロングランです。
そう言えば、イーグルスのアルバムにありましたね。『LONG RUN』。もちろん楽天ではありません。

前回までのお話。
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第6話 第7話 第8話 第9話

さっそく生徒指導の先生に呼び出された僕たち。
職員室はスルーして、「生活指導室」という滅多に入れないVIPルームへ。まぁ、僕たちの専用室みたいなもんでした。

生徒指導の先生は、『所持品』でも、登場していただきました高齢の男性教諭です。むろん、僕たちとは「犬猿の仲」。そしてプラス担任の女性教諭です。

「お前達、きょう本拾ったんだってな」。
さっそく来ました。
「ええ。それがなにか?」
なにしろ拾得物届け出そのものは、善行であっても悪いことではありません。というか、それで押し切る以外にありません。
「うん。実はな、駐在さんがお前達の遅刻届けと、拾得物の届け出を、わざわざファックスしてくれてな」。

げ。

「それによると・・だ。この・・・なんとかファンの3月号ってやつだが」。
さすがに先生もそのまま読むことはできないようでした。
「はい・・・・」。

「本当に拾ったのか?」

するどく神髄にくいこんでまいりました。

「ええ。実際に拾ったのは 西条君なんですけど」。

「西条か・・・。そこなんだが・・・・」

「はい・・・それがなにか?」

「実はな、ここに同じ雑誌の1月号と2月号がある」。

は???????
なぜ??????

「これはな。つい先日西条の持ち物から没収したものだ」

げげ!

完全な想定外です。

「その同じ雑誌を、西条がまた拾う、というのは、まぁ、考えられん」。

そうでしょうねぇ・・・・。僕もそう思います。
それにしても、なにを考えて月刊エロ雑誌を学校に持って来てるんでしょう?

「で。それが駐在所にあった。と」。

すでにコロンボ刑事みたいになっている先生。
この間、担任の先生は、そのあまりに恥ずかしい雑誌の表紙に、よそを向いておりました。

「くしくも!」

コロンボに成りきっている先生が続けました。

「こないだ、駐在さんにご迷惑をかけて停学になったお前らが、だ」。

もう、脂汗タラタラです。

「なにかある、と思って当然だろう?思わんか?」

ごもっとも・・・です。
すっかり無言の僕たち。

「で・・・・・」。

「はい・・・」。

「なにをたくらんで、なにをしたのか言え!」

それまでと一変して声を荒げる先生。
生徒指導の先生なんてのは、これがひとつの手段でもあるわけで、僕はこのシチュエーションそのものは馴れていました。

「・・・・西条君に聞いてください」。

「うん。西条には聞く。聞くが・・・」

「西条はな、根は悪いやつだが・・・・」
すげぇ言われようです。西条。

「こういう機転のきくことまでは思いつかんやつだ」。

「誰かが、入れ知恵しないとな・・・」。

先生はコロンボになりきって、勝手に推理をめぐらせています。
僕にとっては、めちゃくちゃ危険な状態でした。

駐在さんの逆襲はみごとに的をえておりました。

うーん。ただ者じゃないな。駐在。
それにしてもおとなげねーヤツ。

   第11話へ続く これで終わりじゃなかった逆襲。1章いよいよ完結!

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第9話

2006年04月26日 | 連載
第1章完結まであとわずか!何章まであるんだ?

前回までのお話。
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第6話 第7話 第8話

エロ本の「拾得物届け」を書かされる、という、これまた学校創立以来のグレートな立場に陥った僕たち。
あー、なにがグレートなんだか。

「さぁ、これで学校は安心だ。どうせ授業、受けたくないんだろうからゆっくり書け!」
安心なもんか。学校に「エロ本拾った」などと報告しやがって。

しかし、思うのですが、このシチュエーションって、自転車の速度違反で捕まった時とおんなじなんですが。
普通、拾得物届け出ってのは、こんなに尋問みたいにやられるんでしょうか?
表向き「いいこと」してるのに。って、いいことじゃありませんけどね。

「ところで奥さんは・・・?」
下心満載の友人が、かんじんなことをたずねました。
「あ?加奈子?(仮名22歳)」
そうか、加奈子さんって言うんだぁ。いい名前だなぁ・・・。たぶん、どんな名前を言われようと「とめ」とか「くま」でない限りは、きっとそう思ったことでしょうが。

「今、留守だ」。
「へ?」
「うん。会いたいらしい、とは言ったが、いるとは言わなかったが?」
「ぐ・・・」。

くそう。こんなところで「ワザアリ」をとられてしまうとは。くやしい。

「いいから、さっさと書け。まず、ここに住所氏名」
「はいはい・・・・」

もう、すっかりふてくされてしまっていた僕ですが、言われた通りにするしかありません。

「うん、書いたな。次にな、拾得物の名前」
と言って、西条の置いていった○○ファンを机の上に投げ出した駐在さん。

うわぁ。すっげー表紙・・・・・。
今日、授業まともにうけられるだろうか?

「え、それも僕が書くんですか?」
「あたりまえだろう」。

うーん。あたりまえとか言われちゃったよ。

「まずな、雑誌 ○○ファン3月号・・・」
「はい・・・○○ファン3月号・・・」

書いているそばで顔から火が出そうな思いでした。西条の馬鹿野郎・・・。
この「3月号」というのを覚えておいてください。これが後に問題をひきおこします。

「うんうん。その横にな、特集 縄に××××する女たち・・・と」

はぁ?
「え!特集名まで書くんですか?」
「うん。固有物は明確にわかるようにしないといかん」。

「え!そういうもんなんですか?」

「決まりなんだからしょうがないだろう」。
「はぁ・・・・」。

決まりとまで言われてはしかたありません。

「とくしゅう・・・・なわに××××する、おんなたち・・・と」。

しかし、未成年にこんなこと書かせるおまわりがどこにいる?って、ここにいますけどね。

「書きました」。

「よーし。あとはいい。拾ったのは肉屋の前だったな?」
「あ?あーーー。そうだったような気もします。なにしろ拾ったのは西条くんなので・・・」
「ああ。こないだ葬式あげたヤツ、な。もう生き返ったのか?」
「え、えー、まぁ。坊主の誤診だったみたいで・・・・・」

くそーっ。
ことごとくやられっぱなしの僕たち。
ここまで見事に逆襲されるとは思ってもみませんでした。
しかし、彼の逆襲は、ここで終わりではありませんでした。

「よし。じゃぁ、公欠届けと、この届け出用紙のコピー、学校に持ってけ」
「は?」
「だから、遅刻の届け出用紙を書いてやったから。これがないとお前らただの遅刻になっちゃうからな。それと、届け出用紙のコピー」。

いや。前者はいいとして、後者はなぜ必要なのでしょう?

「あの・・・届け出用紙のコピーはいりませんから」。
「そうか?証拠物品なのに。公文書だぞ。公文書」。

”縄に××××する女達”なんて書かれた公文書いりません。

「まぁ、いらんと言うのなら・・・。じゃぁ、ご苦労さん。」
「そうそう1年して持ち主が現れなかったら、お前のものになるんだが・・・未成年だからな。そのまま没収でいいか?」
「ええ。かまいませんよ。でも、拾ったのは、西条くんですから」。
「そうか。死んでたんだっけな。西条」。

くそー。くやしい。
結局、美人な奥さんにも会えず、恥ずかしい文書を書いただけで駐在所を後にした僕たち。


1時限めの途中で登校した僕たちは、昼休みに案の定、先生の呼び出しをくらいました。

実はそこには、さらなるナワが・・・もとい、ワナが待っていたのです。

   いよいよ1章佳境。第10話へと続きます!

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第8話

2006年04月24日 | 連載
早いもんで、もう第8話ですよ。
アクセス数は異常に上がっているのに、感想やらあんまり来ませんね。ほんとに読まれているんだろうか?疑問。

前回までのお話。
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第6話 第7話

5.駐在さんの逆襲 のつづき

そこに待ち受けていたのは、制服姿の駐在さん。
駐在さんは、交通整理などをしておられましたが、あきらかに狙いは僕たちでした。

「昨日、たずねて来たんだってな」
「はい・・・。ちょっとお詫びをと思いまして・・・」

とってもよくない展開です。

「そうか。殊勝な心がけだなぁ。で・・・・・・、あの本だがな・・・」

来た!
当の西条は、電車通学なので、ここにはいませんでした。
いつも、こうなんだからなぁ・・・。

「本?」
「うん。あの本だが。お前たちの忘れ物か?」
「いや・・・あれは・・・あれは拾ったので届けようと持っていったんです。なぁ?」
「そうですともー。あれは拾ったのでー。そうかー、駐在所に忘れてきたんだー」。
すっかり棒読みな僕たち。
ここで駐在さんがニヤリとしたのを、僕は見逃しませんでした。

「そうか。そりゃ感心だな。お前らには、ちとヤバい本だったからな」。
いやぁ。大人にも相当「ヤバい」本ですけどね。

「で。どこで拾った?」
「あ・・・・。肉屋さんの前。だったような気がします」。
「そうか。じゃぁ、肉屋のおやじかな?とにかく・・・」。

拾得物だからな。届出を書いてもらわないと」。

届出?
エロ本の?
しかも『○○ファン』の?
しかもしかも西条のものを?

「ああ。じゃぁ、僕たち学校帰りにでも寄りますから。拾った本人つれて・・・」。
「いや」。

「お前ら、帰りに寄るとは限らんからな。今、寄って書いてけ」。
「でも、僕たち、ごらんのとおり学校遅刻しちゃう・・・」言いかけた途中から
「学校には、俺から連絡するから大丈夫だ。警察に協力しているのに遅刻にはならん。市民の義務だからな」。

え~~。エロ本が義務?

「いや・・・だから放課後に・・・」
「そう言えば、妻も君らに会いたがっていたな。面白い生徒さんとか言って・・・」。

「行きます!」

あ!こらこら。勝手に答えるな。

すっかり下心を利用され、駐在所へと同行する僕たち。
同行と言っても、目と鼻の先なので、あっと言う間のことでしたが。

駐在さんと向かい合わせに座ったのは、僕です。たずねた本人でしたから。
つまりエロ本を拾得した本人、ということになってしまいました。

その目前で、学校に電話をかける駐在さん。

「あー、学校ですか?駐在所ですがぁ。先日はいろいろとどーも」
いろいろって、僕たちの停学のことでしょうか?

「あー、それでですね。おたくの生徒さんの、○○くんとですねぇ、○○くんと、○○くんが、拾い物を届けてくれたんですよー。えーえー感心な生徒さんたちで」

「あー。それが成人向け雑誌なんですけどねー」。

あ?


「えーえー。それでですね、すこし届け出で協力していただいているんで、本日、少し登校が遅れますんで。はい」

やられた・・・・・・・。
どー考えてもエロ本届けるヤツなどいません。生徒指導課の尋問は必至!
やっと停学解けたのにぃ。

受話器を置いてニヤリとした駐在さんの目は、あきらかに復讐の炎が燃えておりました。

   エロ本でなにがあったのか駐在さんの壮絶な逆襲は続く! 続きは第9話へ!

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第7話

2006年04月22日 | 連載
前回までのお話。
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第6話

4.戦線布告 の続き

「ごめんくださーい」。

駐在所は裏手に駐在さんたちの住居が繋がっています。
西条君の仕掛けの完了を確認した僕は、さらに大きな声で「奥さん」を呼びました。

「は~い」。

う~ん。人妻ながら、このうるわしくかわいらしい声。だって語尾にがついてんですから。
さらに期待に胸を膨らませているのは西条君です。エロ本仕掛けてたくせに。
さらにさらに、その外では、駐在所をとりまくように様子を見守る「ツアラー」たち。
総数13名。それぞれ、障害物に隠れておりましたが、それはそれで駐在所があるほど街中のことですから、相当に奇妙でした。

奥さんは、ライトブルーのエプロンで、僕たちの前に現れたのです。

「あら?この間の生徒さんどうしたの?

ぱぁ~ ☆。.:*・゜

初めて見ました。本当に奇麗な女性って、マンガみたいにまわりに花がちってるんですね。

「あの・・・」

僕は2度目の面識でしたので、それほどではありませんでしたが、横目に確認した西条君の驚きようはたいへんなものでした。
もう、顔を紅潮させているのです。意外と純。「○○ファン」など愛読している割合には。
せめてその口閉じろよ。

「あ主人になにかご用でした?

「はい。僕たち、先日のことを駐在さんに、お詫びにきたんですが」
もちろん口からでたらめのコンコンチキです。
でも、人妻である奥さんに、高校生風情が「あなたを見にきました」とは言えません。

ところが
「あー?、シンバル、のこと?

げ!また夫婦円満のネタにしやがったな?あの爬虫類・・・。
またしてもバレバレです。

「今、主人は留守なのすぐ帰ってくると思うんだけど・・・

え!すぐ帰って来るなら、僕たちもすぐ帰らなくちゃ!と、思ったのですが

「待ってる?コーヒーでも入れましょうか?

なんと!
2週間連続で悪さをしたあげく、はるか年下の僕たちに、コーヒーを入れてくれる、と言うのです。
そんな駐在所あるでしょうか?

「は、は、はい!」
ハクション大魔王のテーマソングみたいに答えたのは西条君。

馬鹿!自分、見失ってんじゃねーよ!エロ本はどーすんだよ!

「いえ。いらっしゃらないならけっこうです。よろしくお伝えください」。

僕は奥さんのメバタニで「マヒ」している西条君の手をとって、無理矢理駐在所を後にしたのでした。
しかし、今でも思いますが、本当に奇麗な方でした。生涯で見た美人の中でもTOP3に入ります。

僕たちは、帰り足、自転車をこぎながら
「ほんとに奇麗な人なんだなぁ。俺驚いたよ」。
「そうそう。それがあの駐在の奥さんってのが、もっと驚きだよな。人間、わからんもんだ」
と、「美人を見た」ということだけで満足しきっている我々でした。思えば情けない。

しかし、ひとり西条君だけがひどく落ち込んでいるのです。
「あ~あ。エロ本、置いてくるんじゃなかったなぁ・・・。もし、見つかって俺が置いて来たと思われたらどうしよう?

いや。思われたらって・・・。お前の案でお前が置いて来たんだから。事実とどこも違いませんからっ。

「どうしよぉ。あんな本置いてきちゃって・・・」
すっかり宣戦布告を悔いている西条君。

「うーん」。全員が静まり返って悩む中、

「あんなの參考にされたら、あの奥さんにあんなことやあんなことを・・・」

ってそっちかよ!?

「あ~!俺はなんて馬鹿者なんだ!!」

馬鹿だ。特に反省点が馬鹿だ。

なにしろいつも原因はこいつです。だから「超本人」なんです。

とにかく、こいつの「反省」とは無関係にサイは投げられたのです。
というか、こいつが投げました。
もう後へは引けません。


5.駐在さんの逆襲

翌日、僕たちは通学路を変更しました。
通常はどうしても駐在所前を通ってしまうので、また先日のように出くわすとまずいのです。
駐在所前を避けると、急な坂道があるので、自転車通学の僕たちは、あまり通りたくありません。
が。今回はやむをえません。

ところが。

坂道をようやく登って交差点にさしかかったところで

「お。来た来た」

そこにいたのは・・・。制服姿の駐在さんでした。

  第8話へ続きま~す 駐在さんは、想像を絶する仕返しを用意しておりました・・・。

予告

2006年04月22日 | 連載
『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』第7話は、本日午後(就業時間後)にアップいたします。
すみませんが、それまで、また自習しててください。
ところでこのお話。とっっっても長いので、ここから独立させよう、って考えも出てるんですが、いかがなもんでしょう?


前回までのお話。

ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話

ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第6話

前哨戦
俺たちは風

番外編
靴の墓場
キューピー騒動


第7話 あらすじ

実は僕たちが戦をしかけたこの駐在さん。ただものではありませんでした。

---おしまい


本当に「荒い」ですね。

【連載】ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第6話

2006年04月21日 | 連載
傍若無人の内容に、とうとう本体のHPから切り離されてしまった本ブログですが、そんなことはなんのそのの高アクセス!なんと歴代2番めです。
やっぱりあれかなぁ。国家権力に立ち向かうってのがうけてるのかな?(違うと思うけど・・・)。
ますます図に乗って本日、第6話です。

前回までのお話は、以下にまとめてあります。読まれていない方はどうぞ。

ぼくたちと駐在さんの700日戦争 第1話 第2話 第3話 第4話 第5話

このお話がフィクションかどうか?ということなんですが、そんなのフィクションに決まってるじゃぁないですか。
ただ、自転車でレーダーに挑戦したのは本当です。それから、停学になったことも。
あと・・・徒歩でレーダー妨害したのも、一応事実です。鎧兜も・・・。シンバルも・・・事実だったかな?
じゃぁ、どこがフィクションかと言いますと・・・スーザホンですね。スーザホン。
やっぱりそんなやつはおらんやろう。スーザホン持ってレーダー妨害なんて、ねぇ。いくらなんでも。
そんな馬鹿はねぇ・・・・。馬鹿・・・・。

いちゃいけませんかっ!?

4.宣戦布告



ところで「停学」は、僕たちにひとつの恩恵をもたらしていました。学校では停学になったヤツは必ずウワサになるわけですが、我々は、歴代始まって以来の「公務執行妨害」として話が広がっていました。
このため、僕たちは「前科者」とよばれることになりましたが、おかげで学校の上級生が一目おくようになったのです。
高校生などというものは、とかくしょうもない「序列」をつくりたがるものですが、警察に直接ごやっかいになったヤツは、いわゆる「不良グループ」にも、そうそういません。
実はそれが自転車のスピード違反、などということは、まったく伝わっていなかったので、僕たちには、ずいぶんと「迫」がついておりました。ムショから出て来たチンピラの気持ちが理解できましたね。

さて。我々に「とうとう殺される」ところまでいってしまった西条君(仮名16歳)が、停学から復帰したのは、さらにその2日後のことでした。
彼は、事件のあらまし、つまり作戦の失敗をすでに知らされておりましたが、復帰後、最初に言い出したことは「とりあえず駐在さんの奥さんが見たい」という、じつに煩悩丸出しなことでした。
こんなヤツの為にとんだ屈辱を味わったかと思うと腹が立ちましたが、奥さんを見たい、というのは、僕たち血気盛んな若者の共通の欲望でしたので、あっと言う間に同化してしまいました。

それじゃぁ、っていうんで『駐在さんの美人奥さんを一目見ようツアー』企画決定!
僕たちは、奥さんを見ていない3名ずつを1グループとし、すでに奥さんと面識のある1名がそれにツアーコンダクターとして加わることにしました。問題の超本人(繰り返しますが、ちょう、はこれでいいのです)西条グループの添乗員は僕です。

駐在所は、学校からすぐ近くにありましたが、僕たちは自転車を利用しました。
なぜなら万一の場合でも「逃げやすい」からです。我々は多数の経験から、災害に対する心構えがよくできておりました。

さて。問題はどうやって奥さんを見るか?です。
一般住宅と異なりまして、駐在所は、たいへんガードの固いところですので(当たり前ですが)、ノゾキというわけにはまいりません。

まず、駐在さんがいるかどうかを確認しなくてはなりません。
もし駐在さんがいれば、企画は延期。やむをえません。
駐在さんがいるかどうかは、前にパトカーが停まっているかどうかで容易に確認できます。

いないといいな。

願いは通じ、パトカーはありませんでした。

よーし!

ここで僕たちは再び戦略会議です。
どういう理由で、マドンナを呼び出すか、そして、駐在さんが「留守」ということをどう最大限に活用するか、です。
実は、西条君には、すでに彼なりの考えがありました。
単なる煩悩野郎ではなかったのです。

そして作戦実行です。

「こんにちは」。

駐在所、つまり敵陣に入って行ったのはもっとも誠実に見える僕でした。
繰り返します。もっとも誠実に見える僕でした(この繰り返しに意味はありません)。
その後ろに西条君が続きます。

奥さんはなかなか出て来ませんでした。
が、これが僕たち、いえ、西条君には好都合だったのです。

西条君は、後に組んだ手に、握っているものがありました。
それは・・・

書くのも恥ずかしい、大人もちょっとコアな人しか持っていない『○○ファン』という、成人向け雑誌。超エロ本です。
彼は、その本をおおいそぎで駐在さんの机の上に置くと「たぶんそれなりのページ」を開いて、さもさっきまで読んでいたか?というような偽装を行ったのです。
彼の偽装は巧妙でした。ただ開いたばかりではなく、さらにコア中のコアなページに鉛筆をはさむ、という懲りよう。
ご丁重にあちこちページの角が折れている・・・のは、始めからみたいでしたが。

うーん。やっぱりただの煩悩野郎かも・・・・。

「ごめんください」。

   超コアなエロ本が奥さんの目についたのか?は、第7話『駐在さんの逆襲』へと続きます