高校時代の文化祭。クラスが学校としては初めての「仮装行列」を催しました。
みんなで着ぐるみ(と言っても紙のハリボテですが)を作成。
言い出しっぺの私は「キューピー」をまといました。
自分で言うのもヘンですが、たいへん出来の良いハリボテで、某マヨネーズ会社(どこだかすぐにわかりますが)に寄付できそうなほどの傑作。監修も、もちろんワタクシでございます。
大きさは頭を含めて2mもあり(先がとがっているので)、とにかくよくできていました。
文化祭も終了し、教室にもどった我々は、祭りの後のさびしさもあってか
「このハリボテをそのまま壊してしまうのはもったいない」と、誰ともなしに言い出しました。
「じゃぁ、このまま街に繰り出そう!」
言い出したのは私です。
まだ仮装したままでしたから、簡単なことです。
みんなは少し躊躇しましたが、意見はまとまり、いざ街へ!
なぜみんなが躊躇したか、と申しますと、キューピー以外は、浦島太朗とか、乙姫とか、ハリボテではないため顔がわかってしまうからです。
キューピーとて20cmほどの穴があるので、わからないわけではないのですが、全身露出とは違います。
今でこそ、街中を学生の仮装行列が通ることは、そんなに不自然なことではありませんが、当時、そうしたことは大学生の特権で、高校でそこまでやるところはまずありませんでした。
それも田舎町のことです。顔を出している者は「○○さんちの息子」とか、わかってしまう可能性大なのです。
それでも、なんとなく話はまとまり、即実行するはこびとなりました。
コースは学校から繁華街を抜け、駐在さん(そうです。『靴の墓場』でお世話になった駐在さんです)まで行き、そこでごあいさつして折り返し、ということに決まりました。
先頭は言い出しっぺで、最大の大きさを誇りながらも、最も歩みの遅いキューピー、ということになりました。
さっそく校門を出ていざ街へ!
さて。ここで少しキューピーの構造について触れておきます。
ちょうど、マヨネーズのものを思い浮かべていただければ、よくわかるかと思いますが、腕は短く下ななめ45度に下がっています。
これを動かす為には回転運動しかなく、上を向ければ上ななめ45度固定。前は前45度、ということです。
足も極端に短いものでしたが、これは自在に動きました。ただし、膝はありません。
したがって、お世辞にも速く動くことはできません。
顔部分はキューピーの口あたりに20cmほどあいています。これが全視界ですが、頭だけでも直径1mを超えていますから、首を動かすことはできません。
つまり、視界は前20cm円だけです。
街に出ますと、さすがに街の人たちは驚いていました。
もう子供も老人もおおさわぎです。
それはそうです。キューピーを筆頭に、浦島太朗やら猿やら15人ほどの仮装パレード。この町では経験のないことでしたから。
「おもしれー。こいつはクセになるなぁ。みんなぁ」
時折、高笑いしながら、信号待ちでは
「よーし。みんな止まれー」
「すすめー!」
と、キューピーの中から指示を送る私。
各商店の店先ごとに、45度にしか動かない手をクルリと上げて
「ごあいさつー」
今思えば、なにをあんなに大声をはりあげていたのか・・・。
そして目的地。「駐在所」です。
「ごあいさつー」
さすがの駐在さんも、目をまるくしておどろいておりました。
「なにやってんだ?おまえ・・・」
おまえ?
おまえ・・・・?
なぜ単数形?
普通なら「おまえたち」のはず・・・。それが「おまえ」・・・・。
いやな予感がして、キューピーを回転させてふりかえりますと、なんと私以外誰もいません。
つまり・・・どこからかわかりませんが、仮装行列と思ったものは、キューピーの単独行進だったわけです。
「え~??」
キューピーの中は、「紙ずれ」の音が大きくてわかりませんでしたが、いつの間にかみんないなくなっていたのです。
いや、ひょっとすると初めから?
街の人々に囲まれながら、駐在所の前で呆然とするキューピー。
「またなんかのいやがらせか?あ?」
駐在さんが問いかけます。
(なぜこんなに駐在さんがとがっているのかは、後のブログでじょじょに明らかにします)
「いや・・・そういうわけでは・・・・」
こういうことは、集団だからできるのであって、単独となると話は別です。
え?じゃー商店街の挨拶も「止まれー」も「すすめー」も、キューピーひとりで叫んでいたわけ?
あの高笑いも、突如キューピーが笑ってたってこと・・・・。
ああ・・・・・そりゃ注目されるわけだ・・・・。
「失礼しましたぁ・・・」
駐在さんにご挨拶いたしますと、私はキューピーを180度回転させ、一路帰路へ。
しかし、どこを帰ればいいのでしょう?
キューピー1人となれば、まったく状況は違います。いえ、ずっとそうだったのでしょうが、意識しているかどうかが違います。
キューピーの裾野には、早くもガキどもが集まっていて、遅い歩みに拍車をかけます。
私はひとりキューピーの中で、裏切ったクラスメイトのことを考えておりましたが、もう、そんなことを言っている場合でもありません。
帰り道の恥ずかしいこと恥ずかしいこと。
気づきました。
キューピーは早足になるほど面白い動きに見えるらしく、ガキが爆笑します。
このため、早く帰りたいのですが、早足はできません。
まぁ、いずれにせよ速度にたいした差はないのですが。
これがわかっているのは、ハイパーホッケーの石塚さんと私くらいかも知れません。
ようやく人ごみを振り切り、校門にたどりついたキューピー。
そこには、すっかり着替えの終えたクラスメイトたちが、爆笑しながら迎えたのでした。
いえ。正確には、クラスメイトは爆笑で迎えたのですが、担任の先生は違いました・・・・。
「私は教師になって20年、こんな情けないことで説教するのは初めてだ!」
なら、説教しなきゃいいのに・・・。
あいうえお順INDEX
みんなで着ぐるみ(と言っても紙のハリボテですが)を作成。
言い出しっぺの私は「キューピー」をまといました。
自分で言うのもヘンですが、たいへん出来の良いハリボテで、某マヨネーズ会社(どこだかすぐにわかりますが)に寄付できそうなほどの傑作。監修も、もちろんワタクシでございます。
大きさは頭を含めて2mもあり(先がとがっているので)、とにかくよくできていました。
文化祭も終了し、教室にもどった我々は、祭りの後のさびしさもあってか
「このハリボテをそのまま壊してしまうのはもったいない」と、誰ともなしに言い出しました。
「じゃぁ、このまま街に繰り出そう!」
言い出したのは私です。
まだ仮装したままでしたから、簡単なことです。
みんなは少し躊躇しましたが、意見はまとまり、いざ街へ!
なぜみんなが躊躇したか、と申しますと、キューピー以外は、浦島太朗とか、乙姫とか、ハリボテではないため顔がわかってしまうからです。
キューピーとて20cmほどの穴があるので、わからないわけではないのですが、全身露出とは違います。
今でこそ、街中を学生の仮装行列が通ることは、そんなに不自然なことではありませんが、当時、そうしたことは大学生の特権で、高校でそこまでやるところはまずありませんでした。
それも田舎町のことです。顔を出している者は「○○さんちの息子」とか、わかってしまう可能性大なのです。
それでも、なんとなく話はまとまり、即実行するはこびとなりました。
コースは学校から繁華街を抜け、駐在さん(そうです。『靴の墓場』でお世話になった駐在さんです)まで行き、そこでごあいさつして折り返し、ということに決まりました。
先頭は言い出しっぺで、最大の大きさを誇りながらも、最も歩みの遅いキューピー、ということになりました。
さっそく校門を出ていざ街へ!
さて。ここで少しキューピーの構造について触れておきます。
ちょうど、マヨネーズのものを思い浮かべていただければ、よくわかるかと思いますが、腕は短く下ななめ45度に下がっています。
これを動かす為には回転運動しかなく、上を向ければ上ななめ45度固定。前は前45度、ということです。
足も極端に短いものでしたが、これは自在に動きました。ただし、膝はありません。
したがって、お世辞にも速く動くことはできません。
顔部分はキューピーの口あたりに20cmほどあいています。これが全視界ですが、頭だけでも直径1mを超えていますから、首を動かすことはできません。
つまり、視界は前20cm円だけです。
街に出ますと、さすがに街の人たちは驚いていました。
もう子供も老人もおおさわぎです。
それはそうです。キューピーを筆頭に、浦島太朗やら猿やら15人ほどの仮装パレード。この町では経験のないことでしたから。
「おもしれー。こいつはクセになるなぁ。みんなぁ」
時折、高笑いしながら、信号待ちでは
「よーし。みんな止まれー」
「すすめー!」
と、キューピーの中から指示を送る私。
各商店の店先ごとに、45度にしか動かない手をクルリと上げて
「ごあいさつー」
今思えば、なにをあんなに大声をはりあげていたのか・・・。
そして目的地。「駐在所」です。
「ごあいさつー」
さすがの駐在さんも、目をまるくしておどろいておりました。
「なにやってんだ?おまえ・・・」
おまえ?
おまえ・・・・?
なぜ単数形?
普通なら「おまえたち」のはず・・・。それが「おまえ」・・・・。
いやな予感がして、キューピーを回転させてふりかえりますと、なんと私以外誰もいません。
つまり・・・どこからかわかりませんが、仮装行列と思ったものは、キューピーの単独行進だったわけです。
「え~??」
キューピーの中は、「紙ずれ」の音が大きくてわかりませんでしたが、いつの間にかみんないなくなっていたのです。
いや、ひょっとすると初めから?
街の人々に囲まれながら、駐在所の前で呆然とするキューピー。
「またなんかのいやがらせか?あ?」
駐在さんが問いかけます。
(なぜこんなに駐在さんがとがっているのかは、後のブログでじょじょに明らかにします)
「いや・・・そういうわけでは・・・・」
こういうことは、集団だからできるのであって、単独となると話は別です。
え?じゃー商店街の挨拶も「止まれー」も「すすめー」も、キューピーひとりで叫んでいたわけ?
あの高笑いも、突如キューピーが笑ってたってこと・・・・。
ああ・・・・・そりゃ注目されるわけだ・・・・。
「失礼しましたぁ・・・」
駐在さんにご挨拶いたしますと、私はキューピーを180度回転させ、一路帰路へ。
しかし、どこを帰ればいいのでしょう?
キューピー1人となれば、まったく状況は違います。いえ、ずっとそうだったのでしょうが、意識しているかどうかが違います。
キューピーの裾野には、早くもガキどもが集まっていて、遅い歩みに拍車をかけます。
私はひとりキューピーの中で、裏切ったクラスメイトのことを考えておりましたが、もう、そんなことを言っている場合でもありません。
帰り道の恥ずかしいこと恥ずかしいこと。
気づきました。
キューピーは早足になるほど面白い動きに見えるらしく、ガキが爆笑します。
このため、早く帰りたいのですが、早足はできません。
まぁ、いずれにせよ速度にたいした差はないのですが。
これがわかっているのは、ハイパーホッケーの石塚さんと私くらいかも知れません。
ようやく人ごみを振り切り、校門にたどりついたキューピー。
そこには、すっかり着替えの終えたクラスメイトたちが、爆笑しながら迎えたのでした。
いえ。正確には、クラスメイトは爆笑で迎えたのですが、担任の先生は違いました・・・・。
「私は教師になって20年、こんな情けないことで説教するのは初めてだ!」
なら、説教しなきゃいいのに・・・。
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いろいろと多義に渡る内容と、うまい表現には毎度感心いたしておりました。
突如コメントしようとまで思いたちましたのは、実は私も高校時代に仮装パレードに参加したことがあり、街中をねりあるいたことがあったからです。その時はニコちゃん大王かなにかをやらされたのですが、顔はまる出しでずいぶんと恥ずかしい思いをした記憶があります。もちろんニコちゃん大王の単独行進にはなりませんでしたけど。
今日からキューピーを見る目が変わりそうでちょっと怖いTORUでした。
はははははは爆笑!
あっでも本編文化祭終わってる。残念!
(#^-^#)
お友達に裏切られたことあったんですね。
キューピーの仮装見てみたかったです。
駐在さんには、受けなかったんですね。
笑いが止まりません。