弱い文明

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改悪基本法をめぐって~友人へのメール

2006年12月17日 | Weblog
 昨夜は2つの忘年会をハシゴした。といっても僕が今年参加する予定の忘年会はこの2つだけだが。めちゃ疲れた・・・・。
 その2つ目の忘年会で、旧友から教育基本法の話題を振られた。もちろん僕がブログでその問題を取り上げていることを知っての話である。彼は「根本的に、教育基本法を改正しようという連中の言うことも、それに反対している連中の言うことも、どっちもわからない」と切り出した。彼が僕に問いたかったことは、基本的にこの法律がさほど大きく社会に影響するものだとは思えないということ、また教員免許の更新制など、教育現場の質の改善につながる前向きな面だってあるんじゃないかという、2つの異論が軸になっていた。
 ただ、それを話し合っている途中でカラオケ店になだれ込んでしまい、中途半端になってしまったので、今日になって彼にはメールを書き送った。
 で、書いてみると、ちょうど最近の経験の後で僕が書きまとめたいと思っていた内容とすっぽり重なるので、これをそのままブログに拝借しちゃおうか、と思いついたのである(手抜きと言うなら言え。手抜きなんだw__w)。
 一部加筆訂正してあるが、基本的に送ったメールそのままである。ただし文中の友人の名前はすべて「君」に書き換えてある。
 ちなみに彼は、防衛庁の「省」昇格の方がもっと大問題ではないのか、という意見も表明してくれて、実は僕も同感の部分があるのだが、それを書き出すときりがないので、ここではその話題は割愛した。

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 昨夜はどうも、おつかれさん。

 昨日話し合った教育基本法の問題について、君の反論を中心に、もう一度俺の考えを整理して書かせてほしい。あの時は酔っ払ってもいたし、唐突だったのでうまく説明できない部分もあったので。

1.
 まず君が言った「教師の質の低下」というのは、一般に言われている「教育現場の荒廃」といううちの一つだよね。これには俺も同意する。全体として本当に低下しているかどうかはわからないけど、生徒から慕われる立派な先生がいる一方で、「何考えてんだ」と言いたくなるバカ教師が目に付くのは厳然たる事実だ(もっぱら若い教師で)。
 だけど、どちらの教師も現行の基本法のもとで同一基準の教員免許を取得しているわけで、基本法の問題とは関係がない(戦前にはもっとひどい、人権意識のかけらもない教師が大手を振っていたわけだしね)。基本法を改正したからといって、バカ教師(おそらく、少なくとも君が考える類の)がいなくなるとか少なくなるとかいうこともありえない。それはそもそも学校の問題ではなくて、社会人としての一般的なモラルや人格の問題。
 基本法って言うのは文字通り「基本」法なのであって、教師の能力形成に直接関わるようなものではない。能力形成を保障する枠組みである、に過ぎない。逆に言えば、そういう能力形成に寄与する制度を作りたければ、あるいはモラルを欠いた人間を排除する仕組みを強化したければ、現基本法の枠内でやればいいだけの話だよ。っていうか、現基本法の精神はまさにそれを望んでるわけだから。
「免許の更新制」というのも同じ話で、それをやった方が教師の質を高く維持できるというのであれば、現基本法のままでそれをやればいい。今基本法改悪に反対している日教組の教師たちですら、更新制そのものに反対の人なんてあまりいないんじゃないかな。

 ただ俺としては、更新したからといって質が高くなるとも思えないんだけど。
 たとえば車の免許更新の時に、点数が悪い人はビデオ講習とか路上講習とかさせられるでしょ。あれはあって当然だと俺は思うけど、教育の仕事は車の運転みたいに、マニュアル通りにやれば安全が保障されるという類のものじゃない。子供の心のひだを感じ取る感性や、経験に培われた柔軟性こそが一番求められるものだったりする。ぶっちゃけ、杓子定規な授業しかできない、人の痛みを解さない(まさに安倍やそのお仲間たちのような)人より、小さな事故(失敗)は起こしながらも、臨機応変にアイデアを繰り出せるような人の方が、子供たちを引きつけて、学校を面白く感じさせるものだからね。
 子供っていうのは大人が思い込んでいる「能力」なんか眼中になくて、そういう人としての「本気の姿勢」を敏感に感じ取って食いついてくる。そういう瞬間の子供の目の輝き方って、独特だよな。今まで塾で教えてて、俺はしばしばそれを感じた。君も自分の子を見ていれば、いやそれ以前に自分の子供時代を思い返してみれば心当たりがあるだろ?
 後者のような人が、基本法「改正」によって新しく迎えられる教師、あるいは免許更新が許される教師の基準というものに合致するのかい?俺はむしろ前者のようなバカの方が合致するんじゃないかと思うよ。
 更新するかどうかより、明らかにその「基準」がどういうものであるかの方が問題なんであって、国の言いなりになるだけのロボット教師が前提ならば、更新制なんてそれを強化するための補助制度でしかない。

(一例として、情報流通促進計画の記事「愛国教育の実態」を添付。)

2.
 もう一つは君が言った「基本法なんて関係ねえんじゃねえのか」という言い分について。昨日も言ったけど、実は俺も内心は「関係ねえよ」と思ってる。
 ただ俺の場合の「関係ねえよ」には、次のような背景が含まれている。

①基本法がどうなろうと、運用する教師に根性があれば(あるいは押し付けをすり抜ける、解毒する賢さがあれば)「関係ない」。

②子供が悪い教育を受けたとしても、大人になってから考え直すきっかけや材料がそろっていれば大丈夫。学生時代が人生のすべてではないのだから、「関係ない」。

③最悪学校がやばくなったら、学校なんぞに行かせなけりゃいい。民間の良心的な塾やフリー・スクールの類に行かせる手もある(現在登校拒否児童の受け皿になっているような)。
 同じくあまりにひどいようなら、子供たちにボイコットまたは打ち壊しを促す。もちろん現実性は乏しいが、全国の小学生同士・中学生同士・高校生同士の横の連帯を促す、構築を手伝うことはできるかもしれない。いずれにしろ、子供たち自身の「いやだ!!」という声に勝るものはない。

④改正基本法を「再改正」に持っていく運動を起こす。元の基本法よりさらに民主的な法だって作れないことはない(国民にその気があれば)。

⑤教育基本法以外にも重要な政治・社会の問題は山積している。基本法の話は、今もうとりあえず「関係ない」。

⑥世の中どうなろうと「関係ない」。この国は堕ちるところまで堕ちるしかない。堕ちろ!

 細かく思い起こすとまだあるんだが、ざっとこんな感じ。
 これのうち、①と③は現状厳しい。特に①は、まだ改悪基本法が反映していない現在ですら、教師たちは苦しい目に会っている。国旗・国家の強制に抵抗している「突出した」人たちだけの話ではない。そもそも現在の「教育の荒廃」とやらは、文科省や地域の教育委員会からの締め付けにあえぐ、現場の教師たちの余裕のない仕事環境が発端という面もある。
 ③については、子供たちはそれこそ自殺や登校拒否によって、すでにさんざん「いやだ!!」を表明しているという事実を忘れたなら、これは本末転倒の意見に過ぎなくなる。だからもちろん、ここでは異なる抵抗の仕方があることを子供たちに提案するという意味ではあるが、現実性が乏しいのは認める。
 ⑤は後退局面の認識の単なる一部。⑥は無責任な単なる感情の一部。
 だから現実として意味がある考えは②と④くらいかな、と思ってる。②は一見いいかげんな意見に見えるかもしれないけど、かなり俺はこだわっている思いなんだ。「大人の教育問題」こそ重要だ、というようなこと。もうずっと前から、ホームページをやり始める前から書きたかったことなんだが(まだ書いていないけど)。俺がロックに単なる趣味・娯楽のレベルを超えてこだわるのもそれのせいだよね。
 
 ただね、その②をのぞけば、こうした考えというのは実際に基本法改悪の反対運動にコミットしてみて、はじめて自分自身の存在の質に関わる問題として俺の中に生まれたんだよ。はじめから「関係ない」と思っていたら、なぜ「関係ない」と言えるのかすら、わからなかったと思う。
 それは参加する前からある程度予感していたことでもある。これはこれから俺たちが向き合わねばならない対決シリーズのほんの一幕だろう。だから今、改悪法を一本通されたくらいで「もうだめだああ」なんて落ち込んでる場合じゃない。むしろ積極的に「関係ねえよ、くそったれが」と言えるふてぶてしさが俺たちには要る。もちろん、「反社会的」という烙印を押されることを恐れずにそれを示せる人は少ないだろうけど、内心でそれを思っていることが、どこかで必ず力になるはずだ。
 安倍政権がやっていることというのは、「教育の荒廃」という危機を利用して、自分らの都合のいい「基本」を押し付けてるだけ。「北朝鮮の脅威」という危機を利用して「防衛省」に昇格させたり、憲法改定を狙っているのも同じ。そして「国際テロ」という危機を利用して「共謀罪」を制定しようとしているのも同じ。すべては「危機」を口実にして自分たちの好む国家の姿に日本を再編していこうという策動の一部。この「危機」の時代を足がかりにして、自民党の一派と財界の一部が、戦後一貫して持ち続けていた宿願を実現しようとしているんだよ。
 長年のメディア・コントロールで国民に麻酔をかけた上で、いよいよオペに踏み切ったってとこだろう。だけど麻酔が効かなかった国民も現に大勢いるわけでさ。いつの時代もそんなもんだけどね。でも、麻酔が効かなかった、あるいは麻酔から抜け出した人が立ち上がった歴史があるから、今の俺たちの市民的自由もある。やっぱり俺は、そういう人間の方に加担するのが好きなんだな。

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