弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

ねとねと・うようよの研究②

2007年03月23日 | 言葉/表現
 前回取り上げた村野瀬女史のネトウヨ分類①~⑬に、一つ別に付け加えたいのが「権威なりすまし型」とでもいうべきタイプである。僕はなぜか昔から、このタイプに遭遇したり・からまれたりすることが多いので、いやでも意識してしまう。

 これは、あるテーマについて語ったり議論していたりするところへ、その「実体験者」とか「専門家」と称する人が登場するパターンである。

 たとえば戦争について論じている場所に、「私は元日本軍人だ」という人が現れ、「体験したこともない者が戦争を断罪する資格などないわ」という調子のことを語り始める。何を語るかと言えば、論議の根幹から外れた枝葉末節の話なのだが、それをもって「だから日本軍は高潔だった──おまえらは腐っとる!」ということになる。
 「専門家」が登場する場合も似ていて、こちらは素人なりに自分の存在や生き方の質に関わる問題として語って(語り合って)いるのに、枝葉の細かい知識がなければ君達の議論も無駄なのだと言わんばかりの論調でくる。その点では、前回分類の②「枝葉末節固執型」または⑥「ジャイアンリサイタル型」~「薀蓄披露型」と重なる特徴だろう。
 普通だと「幹がわからなければ枝葉を論じてもしょーがない」となるものなのに、この人達は逆のスタンス、「枝葉命」である。なおかつ、どんな理屈を持ってこられようと、体験者とか専門家という「権威」に勝る正当性はない、という感覚を下地に持っているように思えるので、こっちはますますシラけてしまう。

 これは仮にその人が本当に体験者なり専門家であったとしても、錯誤には違いない。ただ、こうした「権威」の力で相手を負かそうという発想の人達というのは、実は本当にそういう人なのではなく、そういう「権威」を騙っている人であることも多い。俗に言う「なりすまし」である。
 こういう人は、何回かキャッチボールをしていると、だんだん辻褄が合わないところが出てきて、あらあら・・・となってくる。僕の経験だと、特に意識して相手の知識を試そうなどとしなくても、こっちの考えの本質がブレてさえいなければ、向こうが勝手にボロを出す傾向がある。
 ちなみに、上の「元軍人」さん(たしかイラク侵攻を議論するbbsで出会った)の場合、それ以前の「騙り」のレベルだった。その人の投稿時間を見ると、いつも夜中の3時・4時台なのだ。いくら老人は早起きと言ったってこれはないだろうと思い、「あまり夜更かしをなさるとお体にさわるのでは・・・?」と書いたら、それまで毎日のように続いていた投稿がパタッと止んだ。
 なりすます対象を間違えたのだろう。早く気づいてやれなかった僕もいけなかったのかも知れない。

 テーマにもよるだろうが、本当の「権威」と呼ばれるような人は、ネットのbbsや個人のブログなどに書き込みに来たりすること自体が稀だ。来たとしても、それとわかるような品格や思考のクオリティが行間に漂っている。上で述べたような「権威」で負かそうという意図のプンプンしてる人が実際に何かの「権威」だとしても、それは三流の権威だから、僕らは安心してコケにできるわけである。

 ただ、僕がここで問題として強調したいのは、別の人物になりすますことそれ自体ではなくて、「権威になりすます」ことだ。
 権威になりすますことで、主張に正当性を持たせようとする、いや、持たせることができると信じている人間の精神構造がある。確かにそれは自分も含めて、多くの人が大なり小なり共有している構造なのだが、実際になりすまし行為に及ぶ人間がいること、その中にネトウヨと呼ばれる人たちの割合が多いという、事実の相関関係が興味深い。前回書いた「劣等意識の裏返し」ともつながる。橋本治が「インターネットというのは不幸なメディアだ」と言ったのも、なんとなく分かるような気がする(マガジン9条のインタヴュー参照)。氏は別に「なりすましが横行する」とか「ヴァーチャルな権威嗜好が強まる」とかいった文脈で「不幸」と言ったわけではないのだが、少なくともそれらも含めて「不幸なメディアかもしれない」という観点を持っていても損ではないと思う。
 一方で、島田雅彦が『楽しいナショナリズム』という本の中で書いていた「教養のない奴ほど権威に媚びる」という言葉も思い出される。といって、これも「ハハハ、ほんとだぜ」とただ笑って済ますような言葉ではないと、今になって思えてくる。この場合の「教養」が、「学歴」なんかのことではないのは明らかだ。人にとって大切な「教養」とは何なのか、それが大事にされない社会がどういう腐り方をしていくのか、嫌でも考えさせられる。


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2007-03-24 00:16:57
例えば「この前提をどこかに追いやった上での一見「公平な」解決が、すべからく偽善的な結果しかもたらさなかったという経験を数十年来味わい続けているのが、パレスチナ人と呼ばれる人々なのだ」なんて珍文を披露して得意になってる「スベカラク族」が「権威なりすまし族」だと20年も前に呉智英が指摘していたが、いまだに居るんですね。呉によれば「スベカラク族に珍左翼の割合が多い」という事実の相関関係も興味深い。もっとも「この前提をどこかに追いやった上での一見「公平な」解決がゼヒトモ偽善的な結果しかもたらスベキデなかったという経験を…」なのかも知れないが。教養のない奴はスベカラク(?)権威に媚びるものです。
返信する
上の人 (りーな)
2007-03-26 17:59:18
この上のコメントの人って、自分で実例を挙げてくれたのかな?
返信する
たぶん (レイランダー)
2007-03-27 00:45:49
ひとりごとだと思います。何か懸命に笑顔を作ろうとしているようにも思えますが、よくわかりません。
返信する
Unknown (どっこい)
2007-03-28 00:46:57
従軍慰安婦問題で権威好きなウヨに持ち上げられて迷走中の池田先生を見ていると、「プチ権威暴走型」ってのもいっぱいいそうです。既存テレビメディアに痛烈な分析と批判をかましてくれていたはずなのに、最近は朝日嫌悪が暴走したのかWikiやら従軍慰安婦やら咬みつき先がまるで先生の嫌う2ちゃんネラーにすっかり馴染んでしまいました。「秦郁彦『慰安婦と戦場の性』を読めば、客観的事実はすぐわかる」だなんて、正気とは思えませんよ…
返信する
おっと (レイランダー)
2007-03-29 23:58:55
一部おやじサークルできゅーと絵文字多用の予感!(やり始めはおまえだろうが)

ところで池田先生って誰?まさかあのS会の大センセイ?(違うよね)
返信する
Unknown (どっこい)
2007-04-01 22:43:34
池田信夫先生です。元NHK、今は反朝日の著名ブロガーですw
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo
四月馬鹿のネタもわからないネトウヨのコメントが湧いてますョ…
返信する
研究の続き (村野瀬玲奈)
2007-05-23 21:18:24
レイランダーさん、おひさしぶりです。レイランダーさんの考察もとても納得できるもので、ただ分類の類型を列挙しているだけの私の記事よりも読み応えがあり、考えさせられます。

研究の続編をお送りします。ご笑覧ください。
返信する
>研究の続き (レイランダー)
2007-05-25 10:09:08
分類追加、ありがとうございます。

>「ためしてガッテン型」
>「政府与党スポークスマン型」
>「水戸黄門の印籠型」(この下部種として「規則守れ型」、「判例守れ型」がある。)

「印籠型」の下部種としては、「うっかり八兵衛型」もあるように感じます。「型」とは言わないかも知れませんが(っていうか、ほぼ全員だろという話も)。

例がないので、なんとなく推測するだけなんですが、どうにも小粒な印象は拭えませんねえ。「鳥肌実」くらいのインパクトがほしいところです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。