弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

「射殺しろ」

2011年09月15日 | 言葉/表現
 犯罪者を射殺しろ!と警察に怒鳴る男がいた。彼は日本人ではないと思う。日本では、犯罪者がいたら即射殺、なんてことはないからだ。そういうことがありそうなのは、たとえば北朝鮮のようなタイプの専制国家だろう。彼は、そこの出身かもしれない。少なくとも、精神構造は日本人より、そちらの国の人にずっと近いのではないか、と想像できる。──と言ったら、「そちらの国」の人はお怒りになるだろうか。

 まあ、つまらない冗談はさておき(ほんと、書いててつまらんかった)、9月11日の新宿デモ、僕も参加してきた。そこで、相も変らぬ警察・公安の嫌がらせと、在特会(在日外国人はボクらにはない特別な輝きがあってうらやましい、死ぬほど悔しい、でも死ぬのは怖いよおかーひゃん、の会)の挑発に出会った。
 後者については、本来言及する気も起きない。まともに分析したり論じたりする価値のある対象ではない、と常々思ってきた。それは、動物学者の仕事だろうと思っていた。

 しかしこの場面──フランス人参加者が逮捕される不条理極まりないシーンを後日映像で見て、そこで在特会のアジテーターから投げつけられる言葉を耳にして、これについてはちょっと言わないわけにはいかない、という気にもなった。

 2011.9.11在特会に抗議しようとした脱原発デモ参加者逮捕の瞬間【1】 

 ここでアジテーターは拡声器を使って「犯罪者」「逮捕しろ」という言葉(正しくは鳴き声)をくり返している。もちろん相手は犯罪など何も犯していないので、逮捕される理由もない。いちいち解説するのもばかばかしいが、この警察の逮捕の不当性、またそこに至るまでの過剰で抑圧的な「警備」の不当性については、以下のリポートを参照してもらえればいい。
 
 過激派を捕らえてみれば陽気なフランス人夫婦 

 日本のデモに表現の自由はない 警察の暴力が目立った9・11新宿デモ

 僕がここで取り上げたいのは別のことだ。在特会のアジテーターはこの「犯罪者」を「射殺しろ!」とくり返しがなっているのだ。
 「射殺しろ」とは?
 もちろん、人の命を亡きものにせよという、忌まわしい「暴言」だ。それで眉をひそめる人は多いだろう。だが僕などは、根が野蛮だからか、気に入らないやつ、たとえば石原都知事などを写真や映像で見かけたら、条件反射的に「死ね」とつぶやいてしまう。その自分の悪い癖を棚に上げて、アジテーター氏の暴言をとやかく言うのは気が引ける。
 ただ、そんな僕でも、いやそんな僕だからこそ、思うのだ。俺だったら人に「射殺しろ」なんて要求しない。自分で「殺すぞこの野郎!」とかいって踊りかかることはあるかもしれない。が、決して、人任せにはしない。だって、まさか人がそれをやってくれるわけがない、と自然に了解しているから。
 ところがこのアジテーターは、当たり前のように警察に向けて、「射殺しろ!射殺しろ!」と要求している。逮捕劇のあるなしとは関係なく、この言葉が何の躊躇もなく発せられている状況(空間)自体、まったく奇妙・異常だと思う。

 それはとりもなおさず、アジテーター氏の精神構造の異常さからきている。
 まず、彼は警察を信頼している。警察が彼をどう思っているかは知らない。共謀関係があるかないかはわからないし、この際どうでもいい。とにかく、彼は警察をあっさりと信頼できる。何か頼めば、してくれるのが警察だと思っているみたいだ。何かを頼んで、逆に怒られるとかの心配をしている気配がまったくない。
 逮捕されたデモ参加者が抗議しようと近づいてきた時、「さっさと逮捕しろ」「それが警察の仕事だろう」などと、普通なら警察官たちがカチンと来るような無礼なことを、悪びれることもなく言っている。「喧嘩上等」を売りにしているような者なら、自分が「なんだ、やるってーのか」式の威嚇をするのが先だろうが、そんな様子はおくびにも出さない。間に警察隊が十分な人数入っていて、こちらに暴力など仕掛けられないことを重々わかった上で、警察官に逮捕を要求している。
 こういうのを何と言うか。いや、誰でもわかるでしょ。これはヘタレという。ビビリという。普通、わずかでもプライドがある人間にはできない真似だ。それをやっているのに、恥ずかしさをまったく自覚していないというのは、本当の異常者にしかありえないことではないか。
 さらに、取り押さえられて身動きできないデモ参加者を見ながら、「逮捕なんて生ぬるい、射殺しろ、早く射殺しろ」とくり返す。最初に冗談半分に書いたとおり、日本では抵抗できない犯罪者を射殺するようなことは絶対にしない(少なくとも法律上は)。いや日本に限らず、よほど治安が悪く、また警察が腐敗している国家でないと、そんなことは起きない。それをアジテーター氏は要求している、ということは、日本の警察の折り目正しさをフォローする意識すらも、一切ない。相手の立場など何も考えず、ただ、子どもが「イヤイヤ!言うとおりにしてくんなきゃイヤ!」とごねているだけだ。
 象徴的なのはデモ参加者が組み伏せられた時、「おめでとーございまーす」と言い放ったことだ。警察に頼んで逮捕してもらったのだから、「ご苦労様です」か「ありがとうございます」だろう。まるでUFOキャッチャーに景品が引っかかったことを喜ぶような感覚で、警察をねぎらう気持ちがまるでない。あればよろしいというわけではないが(不当逮捕なのだから)、ないというのは異常な感じがする。不本意ながら、この点だけでは、泥をかぶった警察が気の毒にさえ思えてくる(思えるだけで、本当はそんなはずはない)。
 そして警察との関係を別としても、もはや自分達に何の危害も加える恐れのない(最初からそんな恐れはないが)、組み伏せられた参加者を見ながら、「射殺しろ」をくり返す神経というのは、それ自体まったくゲーム感覚、自分は安全なところにいて、ゲーム上の「敵」を殲滅しては「勝利」感を味わっている子どもと同次元のようでもある。また同時に、すでに捕らえられ、無力である容疑者を「死刑にしろ」と叫んだり、ネットに書き込んだり、容疑者の家族に嫌がらせをしたりする陰湿な国民性とも共通の地盤を持っているような気がする。

 このように、逮捕の不当性、挑発内容の不当性ということは別にしても、彼ら在特会のアジテーション(とその背景にある精神性)の異常さというのは、もう主義・主張がどう間違っているという次元を超えて、単に人として芯から腐っている、としか言いようがないものだ。同様に、彼らのメンバーではないにしても、彼らの言い分の一部または大部分に共鳴できるという精神性の人間達もそう。
 やっかいなのは、人間達、といっても、最初に書いたとおり、人間の言葉が通じるとも思えないことだ。
 今度のことで、彼らは決定的な敗北をした、と僕は考える。その意味で、彼らの跋扈を憂える必要は、実はないと思っている(異論のある人は多いだろうが…)。ただ、問題は、彼らは敗北していることに気づかないくらい頭がおかしいので、迷惑行為、人道にもとる嫌がらせ等、これからも続けるだろう、ということだ。
 といって、言葉(対話)で反論したり、説得したりするのは無意味だ。それも今回、大いにわかった。彼らに通じるのは、雷親父からの平手打ち、みたいな「しつけ」だけだろうと思う。
 僕は、右翼のことをよく知らない。だが、国を思う真面目な右翼の人に問いたい。いいんですか?と。こんなやつらと同じ「右」のカテゴリーということにされるなんて、侮辱ではないですか?と。誇り高い先輩の右翼が、彼らあまりにもモラル低下した後輩を叱ってあげるしか、道はないだろうと思う。
 まあ、右翼がどこでどれだけ腐敗しようと、知ったこっちゃないけど。


○千葉では右翼が街宣車20台連ねて罵詈雑言を浴びせかけにきた(デモ隊に車がつっこんできたという情報も)。という話を聞くと、上に書いたことも高望みか…

9・11集会報告
 http://ichiharatomoko201104.blog.fc2.com/blog-entry-42.html
9.11 脱原発 千葉大集会は大成功!
 http://kurakurasakura.blog.fc2.com/blog-entry-102.html

○9.11原発やめろデモ!!!!!弾圧救援会
 http://911nonukyuen.tumblr.com/

追記:
 この文章のなかで、在特の連中を「動物」に見立てるような書き方をしてしまったが、友人から「動物に対して失礼だ。動物はこんなに頭腐ってない!」という批判をいただいた。まったくそのとおり。謹んで、自然界の動物一同に謝罪する。ごめんなさい。
 言葉があまりに通じないことで、思わず「動物」扱いしてしまったが、正味な話、僕個人、動物の方がよっぽど心が通い合う感触を常々持っている。その意味でも、不適切な形容だったと思う。

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8 コメント

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方向音痴 (漂瓶)
2011-09-15 19:35:16
在ナントカ会とか本当に右とかじゃなく単に利権にあやかってるとんだあまちゃん達でしかなく、右を名乗る資格すらそもそもねぇじゃんか、っていう以下略。

深刻なんだけどなんか笑うしかねぇよなぁ、って。でも笑ってられる事態じゃないんですよねぇ。
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>漂瓶さん (レイランダー)
2011-09-16 01:12:12
いや、笑える部分はちゃんと笑ったほうが健康にいいと思いますよ。笑う「だけ」では済まないですけど…。
なんか、「憎しみ教」とでも言うべき、一種のカルトだと考えた方が分かりがいい気がします。
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はじめまして! (shun)
2011-09-17 16:48:30
>在特会(在日外国人はボクらにはない特別な輝きがあってうらやましい、死ぬほど悔しい、でも死ぬのは怖いよおかーひゃん、の会)

吹きましたwもう、なんか本当に、こんな暴言吐いてストレス発散(なのかな?)してる人たちの心情が理解できません。もっと理解できないのが、警察の対応ですけども。
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>はじめまして! (レイランダー)
2011-09-18 23:28:48
>shunさん

お初にどうもです。
人は誰しもストレスがあって、発散したいのは当然だけど、彼らはもう自分の憎悪に酔うことがイコール発散みたいな、最悪の発散パターンしか選べない。それしかやりようを編み出せない、自分らの質の悪さ自体がストレスの元じゃねえのか、とも思います。一種、出口がない感じがするんですよ、彼らは。

警察の対応については、もっと深刻な問題が絡まり合ってます。お役所、官僚の融通の利かなさ、のレベルでは片付けられないような問題が…。上記、小倉利丸さんの記事も参照してください。
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Unknown (SHUN)
2011-09-19 10:08:56
>彼らはもう自分の憎悪に酔うことがイコール発散みたいな、最悪の発散パターンしか選べない。それしかやりようを編み出せない、自分らの質の悪さ自体がストレスの元じゃねえのか、とも思います。一種、出口がない感じがするんですよ、彼らは。

ある意味可哀想な人たちですね。心のケアが必要かも(ケアする側にストレスがかかって大変そうですが)

お勧めの記事大変勉強になりました!
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脱原発デモと在特会 (愛猫家)
2011-10-02 16:56:48
初めまして。脱原発デモと在特会の関係に興味を持ち、書き込ませていただきます。

「日帝打倒!」や「全学連」の幟を掲げた脱原発デモ隊に対する一般庶民のイメージは、決して良いものではありません。しかし、そこに在特会のような連中が乱入してきたら、デモ隊の方に少しは同情が集まりますよね。

在特会は、保守のイメージを悪くする為に活動しているスパイではないですか?
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>愛猫家さん (レイランダー)
2011-10-03 12:39:02
はじめまして。

在特会が保守のほんの一部の面汚しであるのと同じに、「全学連」や「日帝打倒」の幟を立てた連中も脱原発デモの中のほんの一部の勘違いおじさんたちであるという意味のコメントでしたら、ほぼ同意します。ただ注目すべき問題は、警察の対応、右派マスコミの取り扱いなんですね。
在特が暴れても警察はおざなりな警備しかしないし、マスコミも保守派の責任を追求したりしません。だけど、いわゆる左翼系の、中核だの革マルだのが脱原発デモに紛れ込んでいると、警察・公安はそれを口実に全体を弾圧することもあるし、マスコミもそれ見たことか、少なくとも彼らは反社会的分子なんだという調子の記事をしらっと書く。
で、実際にはデモに参加していない「一般庶民」は、それを見て(読んで)脱原発デモに「悪い印象」を抱く、という段取りです。

僕が「デモそのものは別に好きじゃない」とか言いながら、上みたいな記事を書くのも、そうした世の中の仕組まれた流れに抗いたいからです。

ただ私見では、デモに眉をひそめるだけが「一般庶民」ではなくて、3.11以降はデモに共感する、またデモを危険で怪しいものと思い込ませる行政・メディアの「洗脳圧」が裏目に出て、目が覚めた「一般庶民」もずいぶん増えてきている、と思います。それゆえ、警察や右派マスコミも焦っているんでしょう。
アメリカでも「素人の乱」的な新しいデモの動きが広まっているというのが、興味深いですね。ここ数年の日本のデモ(脱原発に限らない)も、こうした方向と関連付けて考えられるべきものでしょう。

さらに私見では、保守の「イメージ」の悪化というのは、在特のようなとっぴな連中の跋扈によるだけでなく、本来の「国土を愛する保守」の精神にのっとって脱原発の先頭に立とうとしない、「国家保守」の空虚さの露呈、にも拠っているのではないかと思います。僕に言わせれば、脱原発デモに参加している一般庶民こそが、普通に真面目な「保守」の人たちなので。
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>愛猫家さん(2) (レイランダー)
2011-10-05 10:36:37
続く返信のコメント、こちらの書いたこと(本文及びコメント)を一切踏まえず、事実関係を捻じ曲げて勝手な「印象」をばらまき、変わる事ない御自分の偏見をばらまく以外の意図がないと見做し、非表示のまま削除させていただきました。
なるほど、「保守のシンパ」たる人が相変わらずそんな調子なら、在特みたいな跳ね上がりを「スパイ」呼ばわりする資格なんてないよなあと、よくわかる次第でした。
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