中華街ランチ探偵団「酔華」

中華料理店の密集する横浜中華街。最近はなかなかランチに行けないのだが、少しずつ更新していきます。

三塔の食堂(キング編)

2017年03月18日 | おいしい横浜

 この前の土曜・日曜に、「三塔の日」を記念するイベントが行われたことは前々回の記事に書いたが、庁舎が公開されたのは横浜税関(クイーン)と開港記念会館(ジャック)だけで、神奈川県庁(キング)は工事中のため入ることができなかった。

 キングのことについては過去にもいろいろと書いているので、「県庁」をキーワードにブログ内検索していただくとして、今日は三塔の食堂について記録しておこうと思う。


 これは2013年8月に3日連続で行われた県庁屋上公開の風景。夕方から21時まで簡易ビヤガーデンがオープンしていた。
 ご覧のようにジョッキなどはなく缶ビールと簡単なツマミだけであったが、普段はなかなか体験することのできない素晴らしい立ち呑みであったことを記憶している。

 ところで県庁には食堂がたくさんあったのを皆さんご存知だろうか。本庁舎、分庁舎、新庁舎にそれぞれ設置されていた。
 こんな風に過去形で書いたのでもうお気づきだろうと思うが、それらが今はすべて消えてしまっているのだ。(私はメタ坊ちゃまの記事で知ったのだが…)


 張り紙の表示が正確でないと思うのだが、ここに書いてある蕎麦屋というのは「本庁地下食堂」なのだろう。こちらは既に2013年3月で閉店している。
 また、この案内には書かれていないが、分庁舎地下にも食堂があった。しかし、それも「本庁地下食堂」と同様、数年前に閉店となっている。
 そして今回、新庁舎12階の大食堂「シーガル」と「小食堂」が廃止されたというわけなんだろうね。
 

 今はない「本庁地下食堂」。
 省エネのため照明を極端に減らしているので薄暗いが、店内はかなり明るかった。


 「本庁地下食堂」が閉店になる直前に出された《おたより第60号》。
 その中ほどに「戦後すぐに開業したというウワサがあるけどよく分からない」てなことが書いてある。
 蕎麦・ラーメン類が50円~60円という値段から考えると、そんな気もしないではないが、食糧事情があまり良くない時だったので、どうなのかなぁ……。
 私的には、なんとなく昭和30年代のような感じがする。

 それはともかく、こうして神奈川県庁からすべての食堂が消えてしまったわけだが、それでは県庁に初めて食堂が出現したのはいつだったのかを探ってみたい。

 といっても、そのためにいろいろと調べたわけではなく、別件で昔の新聞記事を探していた時に偶然見つけただけのことなのだが。



 大正8年4月17日号の「横浜貿易新報」の記事である。この2週間ほど前に開港記念会館の地階にできた簡易食堂の話が出ているのだが、それに続くような形で見出しがつくられている。

 《県庁でも簡易食堂 一食十五銭で お客は廿五銭》

 という見出しが付いている。

 記事によれば、開港記念会館にできた本町食堂が好評なため、県庁でも5月25日から永久的に開業する、なんて書いてある。(下線は筆者による)
 しかし、昔の官庁だけあって食堂にも差別があったことが、この記事から読み取れる。
 高等官用の食堂と、判任官用の食堂は別けられていたのである。
 食事をする場所は違っても、食べているのもは、いわゆる「一汁一菜」で変りはないようだったが。

 さて、県庁職員がここでどうやって食べていたのかというと…

 午前10時までに伝票で注文を取る。
 正午から1時までに食事をする。
 料理は日替わり。
 オプションで一皿五銭のオカズもある。
 料金は給料日(21日)にまとめて支払う。

 なんてことが書いてあるが、その続きは下段右端に続いている。
 

 月ぎめで支払い、食べなかった分だけ差し引く、なんてこともやっていたようである。
 
 かなり早い時期に生まれた社員食堂のようだが、ここでは一般市民も食事をすることができたことが、この記事から分かる。
 ただし紹介がなければダメ。しかも料金は25銭だ!!!
  
 そして最大の興味である《どこが運営していたのか》という疑問にも答が書いてある。
 住吉町6丁目の料亭「千登世」で働いていた調理人を雇い入れたというのだ。料亭を経営する業者に委託したわけではなく、料理人を採用して県庁の直営で簡易食堂を始めたのである。

 食堂が庁舎内のどこにあったのかは不明。現在の建物は昭和3年に建てられているが、大正時代の県庁はこんなビルだった。
 
 食堂の写真が残っていないから内部の様子は分からないが、おそらく洋風のレストランのような雰囲気だったと思われる。
 そこで提供されていたランチはどんなものだったのだろうか。

 ま、それはともかく、大正8年から始まった神奈川県庁の食堂が今年、ついに幕を閉じたというわけだ。

 次回は横浜税関の食堂について書く予定。
 

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6 コメント

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Unknown (京一郎)
2017-03-18 16:32:02
そういえば、20年ほど前、大さん橋通りと海岸通りの角の第二港湾合同庁舎ビル(?)の上階に食堂があって、そこで港の景色を見ながらラーメンを食べたことがあります。
ラーメンは大したことなかったけど、もう一度港の絶景を見たいと思って行ったら、食堂はなくなっていました。残念です。
返信する
一汁一菜 (冬桃)
2017-03-19 15:30:47
料理研究家の土井善晴さんが推奨なさって、いま話題になってますね。汁は何となくわかるとしても、菜はなんだったのか、気になります。トンカツなんかもあったのでしょうかねえ。
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第2港湾合同庁舎 (管理人)
2017-03-20 06:11:00
>京一郎さん
あの食堂は良かったですねぇ。
景色が抜群でした。
いつだったか久しぶりに行ったらなくなっていたのでビックリしました。
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メニュー (管理人)
2017-03-20 06:12:46
>冬桃さん
新聞記事には料理名が出ていませんでしたが、
開港記念会館の食堂メニューが記事になっていました。
和食・洋食があったようです。
これについては次回の記事で。
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えーっ !! (小径のヌシ(^-^))
2017-03-20 11:14:57
県庁の大食堂なくなっちゃったんですか !?
眺めもイイし それなりの需要もあったと思うんですけど
最近は食堂の無い(無くなった)区役所も多くなってきましたし
なんだかつまらないですね (^-^;)
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そうなんです (管理人)
2017-03-20 20:11:48
>小径のヌシさん
公共の建物からどんどん食堂が消えて行っています。
残念ですよね。
県庁、第2港湾、税関の上にあった時代が懐かしいです。
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