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先週、作治さんからこんな本をお借りした。いや、借りたというより、「この本、読んでみな」と言われて渡されたという方が正確かな。 この著作は吉野源三郎が昭和12年(1937)に発表したもので、中学生のコペル君が普段の生活のなかで起きる、いろいろな出来事や経験から自分なりの考えを語る。 本はいくつかの章に分かれていて、コペル君から話を聞いた叔父さんが、コペル君のために書いたノートが、それぞれのあとに続く。そのなかで叔父さんは、ものの見方や社会構造などを、中学生にも判りやすく語っている。 この本がすごいのは、発行が昭和12年ということだ。 前年の昭和11年には日本がロンドン海軍軍縮会議から脱退している。二・二六事件も、関東軍防疫部編成(731部隊)も、富岡に横浜海軍航空隊を開隊したのも、この年だ。 『君たちはどう生きるか』が発行された年には、盧溝橋事件、南京爆撃、日独伊防共協定成立、上海占領と続く。 そして翌昭和13年に国家総動員法が施行。 このような時代の最中に、社会科学的認識を持って人生を考えるよう、少年たちに伝えているのだ。 主人公のコペル君が体験し感じたことに対して、叔父さんは現実世界の生産関係などにつなげて語っていく。読み進んでいくと、この本は『資本論』の入門書のような気もしてくる。 叔父さんはノートの中で、こんなことを書いている。 (豆腐屋の)若い衆たちは、自分の労力のほかに、なに一つ生計を立ててゆく「もとで」を持っていない。一日中からだを働かせて、それで命をつないでいるのだ。労力一つをたよりに生きている人たちにとっては、働けなくなるということは、餓死に迫られることではないか。 英雄とか偉人とかいわれている人々の中で、本当に尊敬できるのは、人類の進歩に役立った人だけだ。 と、こんなことを昭和12年に書いているのだ。吉野源三郎という人がどんな人物だったのか知らなかったので、ちょっと調べてみたら、やはりこのような方であった。 いい本をお借りできたと思う……なんて思っていたら、12月2日の朝日新聞・天声人語に、なんと、こんなことが書かれていたのだ。 ![]() ![]() |
中央図書館で探したら、全部、貸出中でした。