エッセイ -日々雑感-

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芦生演習林 - ブナ原生林の危機

2016年09月29日 | 雑感

2016年9月29日

 

9月26日の朝日新聞夕刊に京大の芦生演習林がシカ食害でピンチになっているとの記事が第一面に載っていた。

 

                                          

芦生演習林とは京大が実地演習・研究のために京都府北部の地元から1921年に99年契約で借りたものだ。

広さは甲子園球場1000個分の4186ヘクタール、標高355-959メートル。日本海側からと太平洋側からの気候が混じりあうところにある原生林で、特にブナの林で知られている。

 そのブナやトチノキの若木を鹿が食い尽くすものだから次世代がそだたない。

新聞には、芦生原生林は今では鹿を防ぐ柵のなかだけでしか見られないと書かれてあった。

 

ある研究者が以前言っていたことだ。ブナ林はある程度以上の緯度か高度が必要で、芦生がブナ林生息の南限だ。気候温暖化が進むとブナの種が落ちても発芽しないから、これからの芦生のブナは苦しい、と。

 芦生はどうなって行くのだろう、芦生だけではない、すべての里山が荒れている。

 

芦生に初めて行ったのは中学生のときだから60年以上前だ。以来、高校山岳部の友人と大学を卒業するまで年一回は行った。

きれいな由良川源流の横でテントを張り、焚き火を囲んで酒を飲み、歌をうたい、山間をぬって上を見上げると満点の星空。

尺を越えるウグイが群れをなして泳いでいた。むろん彼らは賢くて、我々の釣り技術は役にたたなかった。しかし、ヤマメ、オイカワ、ハヤなどが簡単に釣れた。

 当時は入山時に演習林事務に許可をもらいに行くだけでよかった。

新聞によれば、今では大学の許可を受けたガイドの案内などで毎年7千人ほど、そして無許可で入る人も数千人いるらしく、これらのハイカー対策も問題となっているとのことだ。

 あの頃はハイカーにはまったく会わなかった。むろん他の高校の山岳部なども入っていたのだろうか、遭遇することはなかった。

 我々は幸せにも芦生がより自然な原生林だった時を知っている。

昨日ブログに書いたが、時はもどらない、昔にはもどれない。

 

追記:鹿は京都市内でも珍しくない。私がいつもジョギングをする宝ヶ池であるとき見た光景は“奈良公園だ!”と思うようなものだった。

われわれの高校山岳部の山小屋での植樹も鹿の被害を受けて惨憺たるものだ。


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