私の日記帳

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◆◇読了した本の備忘録◇◆

『冷い夏、熱い夏』 吉村 昭 新潮文庫

2016-08-17 | 読書日記
「私」の最愛の弟が、
がんの中でも特に悪性の肺がんを発病してから一年後に亡くなるまでの、
凄絶としか言いようのない小説。
自分の身内で今までがんで亡くなった人をみていないので、
がんとは、これほどまでに苦しんだ末に死ななければならないのかと、
読んでいて本当に恐ろしくなりました。
吉村昭氏の描写恐るべし。

この小説は昭和59年刊行で、
当時はがんの本人への告知は慎重であったので、
「私」は、弟が亡くなるまで弟ががんであることを隠しています。
そのことに対する「私」や家族の苦しみも計り知れません。

後年、氏自身もがんで夏に亡くなりました。
私はこの本を古本屋さんで買ったのですが、
本の間に、吉村昭さんの遺作「死顔」に関する新聞記事の切り抜きがはさんでありました。
この本の前の持ち主も、吉村昭さんの小説のファンであったのだと思うと、
本の内容とは別に、なんだか嬉しいような気がしました。