華やかな日々ありしかと問いかける耳に残りしピアスの穴に
(山本栄子)
食欲の失せし老夫をさびしみつ数なき食器を音たて洗ふ
(山下柚里子)
牡蠣むきに母のしめゐし帆前掛は紺色さめてひもやはらかし
(阿部凞子)
野戦病院のほとりに干される包帯のしろきをおもふ八月のそら
(金沢早苗)
青春は地獄と言はれ老年もこれまた地獄と交すことのは
(大和類子)
てのひらを丸めてつくる円筒を覗けば八月の風は金色
(藤本喜久恵)
ふと湧ける歌のきれはしすぐ消えて夏の終はりの風のなかなる
(高田流子)
白昼のしろさに人も人かげもかげとのみ見ゆるけふ 秋立ちぬ
(菊池孝彦)
盆に入り東京しずかに風吹いて梅の実も食う桃の実も食う
(谷村はるか)
夜の道ひとり歩めばもの言わぬ人面のごとマンホールあり
(長谷川富市)
***********************************
短歌人10月号、同人1欄より。
(山本栄子)
食欲の失せし老夫をさびしみつ数なき食器を音たて洗ふ
(山下柚里子)
牡蠣むきに母のしめゐし帆前掛は紺色さめてひもやはらかし
(阿部凞子)
野戦病院のほとりに干される包帯のしろきをおもふ八月のそら
(金沢早苗)
青春は地獄と言はれ老年もこれまた地獄と交すことのは
(大和類子)
てのひらを丸めてつくる円筒を覗けば八月の風は金色
(藤本喜久恵)
ふと湧ける歌のきれはしすぐ消えて夏の終はりの風のなかなる
(高田流子)
白昼のしろさに人も人かげもかげとのみ見ゆるけふ 秋立ちぬ
(菊池孝彦)
盆に入り東京しずかに風吹いて梅の実も食う桃の実も食う
(谷村はるか)
夜の道ひとり歩めばもの言わぬ人面のごとマンホールあり
(長谷川富市)
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短歌人10月号、同人1欄より。