820note

820製作所/波田野淳紘のノート。

『urashima』客演紹介②

2007-08-14 | 芝居の前に。
『口笛でキスをしよう』で主役のいばら姫を演じたのが河野圭香さんだ。
信頼する何人かの先輩が観劇後、「よく彼女を見つけてきたな」と口々に言った。彼らは続けて「連絡先教えろや」と言ったのだった。

先々月に彼女が客演した舞台を覗きにいったら、そこの劇団の方に「ご兄弟のかた?」と聞かれた。
「そうです」と答えたが僕たちはまったく似ていない。似ているというのが失礼だ。けいかさんの目鼻立ちは人形のようにくっきりとしているのだ。だから顔じゃない。
似ているものがあるとすれば、二人ともファンタジーの世界を呼吸しているのだと思う。
あるところで見つけた彼女への的確な評を借りれば河野圭香さんは「稲中」からスッポリ抜け出してきたような女性だ。しかし迂闊に前野や井沢のノリで接していると危ない。その後の古谷実が傾斜していったように、内奥にはおびただしい毒を秘めている。油断しているとあなたは死ぬ。

思い出して欲しいのは、毒が夢を生むことだ。
酩酊を誘い、遠くへいくために人は毒を必要とする。
彼女の身にまとう雰囲気はそのように醸成されていく。

舞台では安定した台詞術と、パントマイムで鍛えた身体性、ファンタジーから落とされてきたような存在感とで、観る者に強烈な酔いを仕掛けにいく。
何せ出た芝居、出た芝居で、着実に次の仕事を勝ち獲って行く人である。悪いことは言わないからあなたも早めに観にくるといい。うかうかしているとスケジュールが埋まってしまうぞ。サマホリはもうすぐそこだ。戸を抜けて劇場へ。